2013 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
23560780
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
藤田 勝也 関西大学, 環境都市工学部, 教授 (80202290)
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Keywords | 建築史 / 日本史 / 公家住宅 / 様式復古 / 寝殿造 |
Research Abstract |
最終年度は、寛政以降の平安復古様式が早くに指摘されていた九條家について、その実態を再度詳細に検証し次の諸点を解明した。(1)寝殿は近世17世紀初頭から存在、(2)上屋敷での万治4年再建の寝殿一郭の復古様式は配置構成に限定的、(3)上屋敷の延宝3年新造の寝殿には鷹司家からの影響がある、(4)宝永6年以降、様式復古が明確化、(5)天明大火後は焼失前の継承・改編で復古が一層先鋭化、(6)その背景に二條家との密接な関連が推察される。 研究期間全体を通じて近世公家住宅関係史料、具体的には木子文庫(東京都立中央図書館)の指図、裏松家史料(東京大学史料編纂所蔵)、中井家文書(京都府立総合資料館)の指図や、国立国会図書館、内閣文庫所蔵の史料の博捜と整理、分析を鋭意行った。その結果、近衛家屋敷の寝殿一郭について以下を解明した。(1)復古の実現は17世紀後半、(2)18世紀初頭、仮内侍所設営を契機に復古整備が推進、(3)天明大火後の復古は裏松固禅が関与したが、焼失後の再建で復古がとくに深化したわけではない。また鷹司家については、(1)復古の明確化は17世紀後半で、(2)18世紀屋敷移転後の復古的な寝殿の平面に固禅の関与があった、そして天明大火後の寝殿は、(3)復古を強く意識した建物で、(4)固禅の考証をもとに、鎌倉時代猪隈殿を基礎にしつつ近衛殿やその他の史料も活用、(5)その背景には当主輔平や木子播磨の存在があり、造営は寛政内裏復古と同時期に進められた。一方、摂家住宅の現存建物として二條家の遺構である二尊院(京都市右京区)の茶室、近世九條家の遺構である小松谷正林寺(京都市東山区)本堂、京都府立鴨沂高校内の茶室などを実地調査した。 今後、五摂家の一條家についての詳細な分析、現存遺構のより一層広範な実地調査が必要であり、それらを踏まえた近世公家屋敷における復古の全容解明が喫緊の課題と考えている。
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Research Products
(1 results)