2012 Fiscal Year Research-status Report
冶金学的手法による熱電変換材料の組織制御と性能向上
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23560783
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Research Institution | Nagaoka University of Technology |
Principal Investigator |
武田 雅敏 長岡技術科学大学, 工学部, 准教授 (30293252)
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Keywords | 金属物性 / 半導体物性 / 物性実験 / 熱電変換材料 / 材料組織制御 |
Research Abstract |
冶金学的な手法により作製した特徴的な組織を有する材料に関して,その熱電特性に及ぼす組織の影響を明らかにすることが本研究の目的である.今年度は主に共晶組織をもつMg2Si-Si系材料の組織制御と特性評価を行った. 共晶組成(Mg:Si=47:53)に秤量したMgとSiを電気炉で溶解したのち,次の3種類の条件で冷却した.(1)2K/min,(2)炉内で自然冷却,(3)油中に投下して急冷.これにより,平均組織サイズが(1)17.2μm,(2)10.1μm,(3)2.4μmの共晶組織をもつ材料が得られた.これらの試料に対してゼーベック係数,電気伝導率,熱伝導率の測定を行うとともに,Mg2Si, Si それぞれの物性値を用いて複合則により特性予測の計算を行った.電気伝導率に関しては3つの試料間で大きな差は見られず,複合則による計算とも概ね一致した.ゼーベック係数はいずれも正の値であり,(1)(2)の試料については計算と比較的良く一致していたが,(3)の急冷材料に関しては計算の1/4程度となった.原因は特定できていないが,この材料ではMg2Si, Siいずれも他に比べて大きな歪みが導入されており,結晶格子の歪みがゼーベック係数を大きく変化させている可能性がある.熱伝導率は(1)(2)については計算と良く一致していたのに対し,(3)では約25%低減した.これは組織が微細化されたことでフォノン散乱が増加したためと考えられる.熱伝導率の低下は熱電材料にとって好ましく,熱電特性向上に有効と考えられる.また,共晶材料はいずれもMg2Siに比べて耐酸化性が著しく向上することが明らかになった.さらに,Agを添加することでP型としての性能が向上することを見出した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Mg2Si-Si系材料に関して,共晶組織のサイズ制御を行い,熱電特性(ゼーベック係数,電気伝導率,熱伝導率)と組織の関係を明らかにした.複合則に基づく計算予測との比較を行い,組織の微細化の影響を明らかにした.さらに,耐酸化性が向上することを見出した.
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Strategy for Future Research Activity |
Mg2Si-Si系に関しては,元素添加による組織,特性の変化を調査し,この材料の熱電特性に及ぼす組織の影響をより明確にする予定である.この他のシリサイド材料として,FeSi2相,CoSi相への第二相析出について研究を進める.CoSi相は以前より継続して母相と析出相との結晶学的な関係と熱電特性について明らかにする.FeSi2相に関してもSi相を析出せた材料について同様に研究を行う.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究費の主な使途は,試料作製に用いる原料,ルツボ材,電気炉発熱体,試料調整に用いる研磨剤などである.
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