2012 Fiscal Year Research-status Report
コア・シェル型クラスターの作製方法と表面・界面効果による機能発現に関する研究
Project/Area Number |
23560785
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Research Institution | Nagoya Institute of Technology |
Principal Investigator |
日原 岳彦 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (60324480)
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Keywords | ナノ粒子 / 超伝導 / 燃料電池 / 触媒 / クラスター / エキシトン / d0強磁性 |
Research Abstract |
平成24年度に実施した研究では、Sn/Siバイメタルクラスター集合膜の超伝導相のランダムネットワークを利用することで、その低次元性によって臨界磁場が増大することを発見した。GL理論が示す超伝導薄膜の臨界磁場の式をバイメタルクラスター膜に適用できるよう変形し、フィッティングを行った結果、理論式と実験結果はほぼ一致し、超伝導臨界磁場の増大が低次元性に起因することが明らかとなった。 また、ヘリコンスパッタリング法により、蒸着雰囲気を変化させて作製したCuOおよびNiO薄膜の構造解析、磁気的性質の評価、検討を行い、室温で強磁性が発現すること、膜厚の増加に伴い、飽和磁気モーメントが減少することを確認した。薄膜にすることで、膜の表面近傍で磁気モーメントを発現する一連の電子スピン群間の強磁性的な相互作用が強磁性の主因だと考えられる。 さらに、プラズマ・ガス凝縮法によりAuNi、NiZn、NiZnPt合金クラスターを作製し、組織観察、組成分析を行った。さらに、導電カーボンペーパー上にAuNi、NiZn、NiZnPt合金クラスターを堆積し、これをアノード側の電極触媒として適用した固体高分子形燃料電池の出力電力測定を行った。その結果、AuNiナノクラスター試料の中で、最も触媒性能が高い試料はNi組成が23at.%のときで最大電力密度が2.7(mW・cm-2)であること、NiZnナノクラスター試料では、最も触媒性能が高い試料はNi組成が45at.%のときで最大電力密度が2.8(mW・cm-2)であること、NiZnPtナノクラスターでは、最も触媒性能が高い試料はPt組成が11at.%のときで最大電力密度が16.7(mW・cm-2)であることが判明した。Pt添加により出力値は約6倍増加しており、金属間化合物Ni3Ptの形成が触媒性能の向上に寄与していることが推測された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度は、年度当初に策定した研究目的に従って研究を遂行し、以下のとおり計画に従い研究を実施した。その結果、学術論文4報、学会発表18件の実績を上げた。 (1)Sn/Siバイメタルクラスター集合膜では、超伝導Sn粒子のランダムネットワークが形成される。このネットワークの低次元性により、超伝導臨界磁場が増大することを発見した。さらに、GL理論に基づく超伝導薄膜の臨界磁場の理論式を、ランダムネットワーク系に適用した結果、理論式と実験結果はほぼ一致したことから、超伝導臨界磁場の増大がネットワークの低次元性に起因することを明らかにした。 (2)ヘリコンスパッタリング法により、蒸着雰囲気を変化させて作製したCuOおよびNiO薄膜の構造解析と磁気的性質の評価を行い、室温で強磁性が発現することを確認した。薄膜にすることにより、薄膜の表面近傍で磁気モーメントを発現する一連の電子スピン群間の強磁性的な相互作用が強磁性の主因である。 (3)プラズマ・ガス凝縮法によりAuNi、NiZn、NiZnPt合金クラスターを作製し、これをアノード側の電極触媒として用いた固体高分子形燃料電池の出力電力測定を行った。NiZnナノクラスターでは、最も触媒性能が高い試料は45at.%Niであり、このとき、最大電力密度2.8(mW・cm-2)を示した。さらに、Ptを微量添加したNiZnPtナノクラスターでは、Pt組成が11at.%で最大電力密度が16.7(mW・cm-2)を示した。Ptの微量添加により出力値は約6倍増加した。金属間化合物Ni3Ptの形成が触媒性能の向上に寄与していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度は以下のように、研究を推進する予定である。 (1)複合ナノ粒子の作製と物性:Ag/Siバイメタルナノクラスターを用いて、パーコレーション理論から導かれるフラクタル次元と、バイメタルナノクラスター集合膜の低次元性との関係を明らかにする。これまでの研究で、Ag/Siバイメタルナノクラスター集合膜ではSi組成が20at.%以上で抵抗が極低温で発散し、負の磁気抵抗が観測されており、二次元の弱局在性が物性を支配することが判明している。逆に10at.%以下のSi組成では弱局在が観測されておらず、Si組成に閾値が存在することが予想され、実験と理論的側面の検証を行う予定である。 (2)酸化物クラスター及び薄膜の室温強磁性に関する研究:本年度はHfクラスターの作製と、酸素添加による酸化物ナノ粒子を作製し、室温強磁性のメカニズムを追求する。Hfは室温強磁性で最初に報告された元素であるが、Pengらの最近の報告によると、室温で巨大な常磁性モーメントが観測されているが、強磁性は発現していない。本年度は、Hf酸化物が強磁性を発現する臨界状態にあることを想定し、何が欠陥誘起の磁気モーメント間の強磁性相関を決めているか明らかにしたいと考えている。 (3)コアシェルおよびバイメタル合金クラスターの新規触媒探索:NiZn合金クラスターの作製では、これまでNiおよびZnの2つのターゲットを用い、スパッタ蒸発した原子を混合することで作製していたが、この方法では、微粒子を形成した後で両者が混合するので、触媒機能の向上が金属間化合物によるものか、バイメタル粒子の形成によるものか明確になっていない。合金ターゲットを使用してナノ粒子を作製し実験を行うことで、この問題の決着をつける所存である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度の研究費使用計画について、物品費として500千円を計上している。物品費は、研究を遂行する上で必要な消耗品の購入に充てる予定である。その内訳は、真空部品(Cuガスケット)・基板材料(石英硝子板、サファイヤ基板)、試薬・分析セル類、ガス類(アルゴン、ヘリウム)、金属・酸化物ターゲット(Ni、Pdなど)、等である。旅費は450千円を計上している。研究調査、研究成果の発表でナノ学会、日本金属学会、日本物理学会などの学会に出席するための旅費である。なお、大学院博士後期課程の学生1名、博士前期課程の学生5名の旅費を含む。その他、研究成果を学術雑誌に投稿するための経費として、250千円を計上した。
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Research Products
(22 results)