2011 Fiscal Year Research-status Report
非平衡重畳プロセスを利用した欠陥誘発型の炭素系物質創製法に関する研究
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23560787
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Research Institution | Hyogo University of Teacher Education |
Principal Investigator |
庭瀬 敬右 兵庫教育大学, 学校教育研究科(研究院), 教授 (50198545)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 黒鉛 / アモルファスダイヤモンド / 中性子照射 / ラマン分光法 / 格子欠陥 / 衝撃圧縮 |
Research Abstract |
本研究の目的は、炭素系物質の様々な非平衡状態の重畳効果を用いた欠陥エンジニアリアリング研究を発展させることである。炭素系物質は、黒鉛やダイヤモンド、フラーレン、グラフェンなどの多様性を示すが、粒子線照射や衝撃圧縮、熱衝撃、ボールミリングなどの非平衡環境下での変化は、更なる多様性と発展性を秘めている。また、高エネルギー粒子線照射下の炭素系物質の物性変化を調べることは、次期エネルギー源である核融合炉材料の損傷過程の解明につながる重要な研究である。高エネルギー粒子線照射と衝撃圧縮のように異なる非平衡状態を重畳させることによって、新たな物質環境が醸成され、新材料創製の場となる可能性がある。 今回、1.4 x 10 24 n m-2の照射量まで中性子照射した高配向性熱分解黒鉛(HOPG)を用いて衝撃圧縮実験を行った。これは、アモルファスダイヤモンドへの変換を初めて見出した試料の約半分の中性子照射量である。この試料に対して46、51、54GPaの圧力で衝撃圧縮を行った。54GPaの衝撃圧縮後の回収試料は、透明なタイル状のものが観察された。ラマン分光法では、弱いダイヤモンドのピークがみられ、ナノダイヤモンドの生成を示唆した。一方、51GPaの圧力では、透明な破片は得られた、ダイヤピークは見られなかった。46GPaの試料では、透明化せず、黒鉛のG,Dピークがみられ、アモルファスダイヤへの変換は起こらなかった。これらの結果は、約中性子照射量の黒鉛でも、アモルファスダイヤモンド変換が、ほぼ同様の条件で起こることが明らかとなった。 また、黒鉛の照射損傷に関して、我々がこれまで行ってきたラマン分光法を用いた欠陥の定量解析手法について、レビュー論文を執筆し、今後の研究の礎とした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
衝撃圧縮によるアモルファスダイヤモンド生成に関して、中性子照射量と衝撃圧縮圧力の依存性に関しての研究に進展があった。黒鉛の照射欠陥のラマン分光法を用いた定量測定に関して、これまで行ってきた研究をレビュー論文としてまとめた。 また、新たな中性子照射試料を作成するために、黒鉛(HOPG)と共に黒鉛と同様の構造をもつ窒化ボロン(BN)に関して、実験用原子炉(JMTR)での中性子照射の準備を行った。また、中性子照射黒鉛の静水圧下での変化をしらべるためにフランスの連携研究者に中性子照射試料を送付している。
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Strategy for Future Research Activity |
平成23年度に得られた結果をもとに、中性子照射試料に対して中性子照射量および衝撃圧縮の条件を変化させて、アモルファスダイヤモンド生成に関して、より詳細な照射量および衝撃圧力依存性を調べる。また、中性子照射欠陥の性質を明らかにするために、原子間力顕微鏡での欠陥の観察を行う。特に、測定モードをコンタクト、タッピング、電流モードと多様な観察モードでの欠陥観察を行う。 衝撃圧縮のための初期試料を中性子照射黒鉛試料のみではなく、カーボンナノウォールやボールミリング試料などでの可能性を探る。それらの試料を初期試料として、衝撃圧縮を行い、アモルファスダイヤモンドの生成の可能性に関して調べる。このように異なる初期試料の結果を比較することによって、アモルファスダイヤモンド変換に関係する欠陥の役割か明らかになると期待される。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
黒鉛の照射欠陥を調べるための原子間力顕微鏡の消耗品である電流モードなどの短針、中性子照射やボールミリング、衝撃圧縮のための各種黒鉛試料、試料容器、写真プリントのためのトナーを購入する。また、研究成果の発表のための国際会議、国内での学会発表の参加費、旅費、宿泊費に使用する予定である。
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