2012 Fiscal Year Research-status Report
高精度拡散係数測定による金属融体の拡散メカニズムおよび動的挙動の解明
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23560790
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
鈴木 進補 早稲田大学, 高等研究所, 准教授 (10437345)
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Keywords | 拡散 / 融体 / 金属 / シアーセル |
Research Abstract |
本研究は、高精度拡散測定を行い高温融体の拡散メカニズムを明らかにすることを目的とする。本年度は、安定密度配置とシアーセルを用いて不純物拡散係数の高精度測定を行い,液体金属中における不純物拡散の易動度に与える影響因子を調べた。 実験方法は,厚さ3mmの薄いSn5at%合金層(Ag,Bi,In,Pb,Sb)から57mmの純Sn層へ溶質元素を拡散とした。合金層と純Sn層の中間セルのみ位置をずらした状態で,固体試料をシアーセルに挿入した。また密度が重力方向に単調増加するような安定密度配置を用いた。加熱・約1hの均質化を行った後に,中間セルを回転させ拡散対を形成し,拡散実験を行った.拡散温度で一定時間保持後,試料を20個に分離し,冷却・凝固を行った。拡散温度は573~973Kで変化させて, 4本の拡散対を用いて同時に同条件で液体Sn中の不純物拡散実験を行った。得られた試料のICP-OES分析により濃度分布を作成し,拡散の理論式をフィッテングして拡散係数を算出した。 実験で使用した合金が希薄溶液であるため,熱力学的因子φ=1で溶質に無関係で一定であると仮定して,同一温度で取得した拡散係数とGold-Schmidt半径を用いて算出した原子半径比rs/riの比較を行った。その結果,原子半径比rs/riに対して拡散係数は正の相関を示したが,線形性は示さなかった。そのため,不純物拡散において溶媒と溶質間の相互作用を表す熱力学的因子φが影響していると考え,熱力学計算ソフトThermo-Calcより算出した熱力学的因子φを用いて拡散係数とrs*f/riの比較を行った。その結果,5種類の不純物拡散係数は原点を通るフィッテング直線と高い一致を示した。この結果から,液体金属中の不純物拡散係数は,溶媒と溶質の原子半径比に比例する易動度Mと熱力学的因子φの積に比例することが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
H24年度に目標としていた,他の物理的性質と拡散係数との相関関係を定量的に明らかにすることができた。これは,溶媒との親和性など不純物元素種が拡散係数に与える影響など拡散メカニズム解明に有益な知見を与える結果である。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度となる本年度は,シアーセルを用いて液体金属の拡散実験を行うことにより,Darken理論の適用可能性を検証し,液体金属中の相互拡散係数を既知のデータから求めるための基礎式を求めることを目的とする。 二種の合金Sn (NSn+0.1)-Pb (NPb-0.1)とSn (NSn-0.1) -Pb (NPb+0.1)との拡散対を作製し,シアーセルに装填する.ここでNSn,NPbはそれぞれSn,Pbのモル分率とする.所定の時間,加熱保持を行い,冷却する.室温にてGHFからセルを取り出し,輸送機にて地上に回収する.合金試料内のSnおよびPb濃度分布を測定し,濃度プロファイルを求め,誤差関数のフィッティングにより平均二乗変位を算出し,各条件での相互拡散係数Dを算出する。 得られたDとDarkenの理論により算出したDと比較し,液体金属にも適用可能であるかどうかを検証する。計算にはDarkenの理論式D=NSnDSn+NPbDPb,及び過去の微小重力実験で得られた自己拡散係数D(Sn*)とD(Pb*),及び文献値のSn-Pb合金中の活量係数γ(Sn)とγPbのから求めた固有拡散係数D(Sn)とD(Pb)を用いる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究費用は主に,グラファイトで作製され,消耗品であるシアーセル,及びその周辺の耐熱材料,高純度試料,分析機器使用料及び学会発表に関わる費用に使用する。
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