2011 Fiscal Year Research-status Report
セルロースのナノ構造を生かした革新的エネルギーデバイス用カーボンペーパーの作製
Project/Area Number |
23560800
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Research Institution | University of Yamanashi |
Principal Investigator |
宮嶋 尚哉 山梨大学, 医学工学総合研究部, 助教 (20345698)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
棚池 修 独立行政法人産業技術総合研究所, エネルギー技術研究部門, 研究員 (20415706)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | ナタデココゲル / カーボンペーパー / 電気化学キャパシタ |
Research Abstract |
本研究は,電気化学キャパシタ用の電極作製において,疑似容量を与える活物質の一つである金属酸化物との複合化と,内部抵抗を軽減するためのバインダレス成形化を同時に達成するようなカーボン電極部材を創出することを目的とする。また,そのプロセス開発を確立することを最終目標としている。本年度は,ナタデココゲルの構造特性を生かした金属塩担持カーボンペーパー電極の作製を試み,モリブデンおよびバナジウム化合物を活物質としたカーボンペーパーの電気化学特性について検討した。さらに,炭素前駆体の改質処理として有用なヨウ素不融化も試み,その効果についても検討した。 ナタデココゲルは数十nmの極細繊維径のミクロフィブリル構造を有しており,その網目空間に水分を取り込んだヒドロゲルである。さらに微生物由来のセルロースであるため,分子内に多量の酸素原子を含んでいる。そこで,このヒドロゲルを上記の金属アンモニウム塩水溶液に含浸して水分散媒置換を行い,ろ過・乾燥によってプレペーパーを作製した後,引き続き不活性雰囲気下で炭素化させることによって,複雑な工程を経ることなく容易に所望の金属酸化物担持カーボンペーパーが合成可能となることを見出した。金属酸化物の担持量は金属塩水溶液の仕込み濃度で制御でき,ナタデココ本来のミクロ孔を損ねることなく金属酸化物を担持できることが分かった。これらをサイクリックボルタモグラムによる電気化学測定により電極特性を評価したところ,担持した金属酸化物由来のレドックスピークが確認できたことから,担持酸化物が疑似容量の発現に有効に働いていることが明らかとなった。ハロゲンによる電極特性の改善については,炭素化前に予めヨウ素ガスで作用させておくと,より緻密でかつミクロ孔容量が増加したカーボンペーパーが作製できるといった興味深いデータも得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
実用化にはさらなるキャパシタ容量の増加と,電解質中での金属酸化物の安定性など克服課題は多々あるが,従来法よりも簡便に活物質が担持でき,さらにバインダレスなカーボン電極作製のための調製条件の確立に一定の目途がついたことは大きな研究成果といえる。ゲルを用いた活物質担持方法の内容は新規性が大きいことから,現在特許出願の準備を進めている(4月中に出願予定)。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き,炭素構造評価を専門とする山梨大の研究室とエネルギーデバイスを専門とする産総研との研究室に属する研究者同士で共同研究体制をとり,課題研究に取り組む。 次年度は,疑似容量に大きく影響する金属化合物粒子のカーボンペーパー上への担持状態や粒径の制御,化合物の結晶構造制御を試み,より高性能のキャパシタ電極とするための作製条件の精密化を図る。具体的には,これまでのMo及びVイオン種の他に,Ni,Mn等の電極活物質として有用な金属種についても同様の検討を行い,これら活物質の結晶構造や形態及びその最適担持量を調査し,キャパシタ容量の増大化を目指す。合わせて得られるカーボン材料の微細組織の詳細を明らかし,ペーパーの力学特性に関するデータも採取する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度も予定の研究費の範囲で,新たな高額設備を導入することなく既存の装置を活用しながら材料開発を行う。 主たる研究設備として,凍結乾燥器(ペーパー化処理),恒温乾燥器(ヨウ素前処理),加熱炉(炭素化処理~1000 oC),吸着測定装置(表面/細孔特性の評価)が既に揃っており,基本的な材料調製及び特性評価はスムーズに行える環境にある。但し,試料合成及び電極特性評価には,高純度ガス(G1クラス)や金属類をはじめとした高価な原料が必要となる他,細孔評価用の液体窒素,加熱処理用の石英機器類等が必要不可欠なことから,消耗品費として研究経費の大半をこれらに充てる。 産総研では,引き続き透過型電子顕微鏡,電気化学測定装置の実験を担当するが,運営費交付金ではまかなえない専用の運転資金があることが研究の加速上必要なため,少額の消耗品費を配分する予定である。その他,炭素体の構造評価に有用な解析装置は山梨大学機器分析センター内に揃っており,研究費の1部はこれらの使用料とする。 また最新の動向調査のため,国内外での情報収集と成果発表を予定しており,そのための旅費及び研究打ち合わせとして,主たる研究者2名の旅費を計上する。
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