2012 Fiscal Year Research-status Report
Petal Effectを示すハフニア薄膜の集水性の研究と集水膜への応用
Project/Area Number |
23560805
|
Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
西出 利一 日本大学, 工学部, 教授 (30297783)
|
Keywords | 集水性 / スクリーン印刷 / ストライプパターン / 撥水性 / 親水性 |
Research Abstract |
本年度はガラス基板上に撥水―親水ストライプパターン膜を、スクリーン印刷法で作製し、その集水性を調べ、良好な結果を得た。 スクリーン印刷では一般的に高粘度のインクを用いており、本研究の低粘度金属酸化物ゾルでは印刷が困難であるから、改良が必要である。そこで、本研究では、孔のある下地膜を採用し、さらに高粘度ゾルを新たに開発して、スクリーン印刷を可能とした。そのため、2種類の下地膜を開発した。すなわち、①2000nm長のナノファイバー状アルミナゾルをスプレー法でガラス基板に塗布後200℃で加熱して下地膜を作製した(下地膜①)。②1400nm長のナノファイバー状アルミナゾルを同様に塗布し、500℃で加熱して下地膜を作製した(下地膜②)。両者とも膜厚は約2μmで、表面には孔が存在していた。撥水パターン用ゾルとしてグリコール酸または酢酸を含む高粘度のハフニアゾルを作製した。親水パターン用としては、水溶液プロセスで高粘度のチタニアゾルを作製した。 これらのゾルを上記下地膜①上に、1mm幅のストライプパターンマスクを用いてスクリーン印刷して、それぞれ撥水パターン膜(ハフニア(グリコール酸))および親水パターン膜(チタニア)を作製した。適切なスクリーン印刷条件を見いだして、約1.18mm幅のパターンを得ることができた。下地膜②をニトリロトリス(メチレンホスホン酸)(NMP)を用いて水熱処理し、超親水性アルミナ下地膜を作製した。その上に、酢酸を含むハフニアゾルを上と同じマスクを用いてスクリーン印刷して撥水―親水パターン膜を作製した。このパターン膜の線幅は約1.0mmであり、マスクの線幅を再現した。 上記撥水―親水パターン膜の集水性を、集水測定モデル機(本助成で作製)を用いて測定した。ガラス(比較試料)と比べて、撥水―親水パターン膜は約1.2倍の水を集水し、良好な集水性を示すことが分かった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の研究はほぼ当初予定どおり遂行し、当初計画の成果を達成したと考えられる。 すでに、我々はPetal Effectを示すハフニア薄膜は集水性を与えることを明らかにしてある。本研究は、集水性をより向上させるため、撥水―親水ストライプパターン膜を、スクリーン印刷法により新たに作製した。スクリーン印刷では、一般的に高粘度のインクを用いる。しかし、本研究で用いる金属酸化物ゾルは低粘度であり、スクリーン印刷は困難である。そこで、スクリーン印刷が可能となるように、新たに孔のある下地膜を開発し、ゾルも高粘度化して対応した。 これまで、金属酸化物ゾルはスクリーン印刷困難であったが、この研究により新たにスクリーン印刷法が金属酸化物薄膜作製法として採用できることを明らかにした。スクリーン印刷法は安価であり工業生産性が高いので、本研究以外にも他への応用が期待される。 撥水―親水パターン膜の集水性を、集水測定モデル機を用いて測定した。集水測定モデル機は本助成で作製したものである。また、集水性の評価方法は、昨年度確立されている。その結果、このパターン膜の集水性は比較のガラス基板のそれより約1.2倍であることが明らかとなった。これはPetal Effectを示すハフニア薄膜の集水性とほぼ同等であり、同様の集水性を示すことが分かった。
|
Strategy for Future Research Activity |
これまでの本研究の成果により、Petal Effectを示すハフニア薄膜および撥水―親水ストライプパターン膜は集水性を示すことが明らかになり、これらの膜は集水性膜として有用であることが分かった。すなわち、集水性に関する基本的設計はほぼ終了したと考えられる。そこで、今後は以下の2つの方針で研究を継続する。 ①適切なパターンの設計 パターン膜の集水性を観察していると、撥水パターンに付着した水はすみやかに親水パターンへ移行するようだ。親水パターン上では水滴が一定の大きさまで成長し、滴下することにより集水されている。従って、親水パターンをより狭くすると集水性がより向上することが期待される。また、パターンを撥水面上の親水ドットパターンにすると、ドットの大きさにより水滴がよりすみやかに滴下するとも期待される。今後、これらのパターンをスクリーン印刷法により作製して検討する。 ②良好な撥水性膜の検討 集水性の観察は上のとおりであるが、撥水パターン上に付着した水をよりすみやかに親水パターンへ移行させることができれば、集水性の効率がより向上することが期待される。このような撥水膜がどのようなものであるか、現時点ではよく分からない。幸いにして、本研究室では多くの種類の撥水膜の作製に成功している。そこで、これらの撥水膜をスクリーン印刷法によりパターン化して、集水性を検討する。それにより、より高効率の集水膜の創製が期待される。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究費は、撥水―親水パターン膜作製のための材料費、試薬費や基板費として使用する。スクリーン印刷用マスクも数種類作製するので、それにも当てる。また、試料の表面状態やパターン形態をFE-SEMなどにより解析する必要があるので、それにも使用予定である。さらに、成果を発表するための学会出張旅費にも使用する。
|
Research Products
(1 results)