2012 Fiscal Year Research-status Report
安価な新規高結晶性カーボンナノファイバーの調製と評価
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23560806
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Research Institution | Tokyo City University |
Principal Investigator |
鏑木 裕 東京都市大学, 工学部, 教授 (90061572)
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Keywords | セルロースナノファイバー / 炭素化 / カーボンナノファイバー / 黒鉛化 / グラファイトナノファイバー |
Research Abstract |
今年度は以下の結果を得た: 1. セルロースパルプを機械的に高分解したセルロースナノフィブリル(CelNF)およびナタデココから得られるバイオセルロースナノファイバー(BioNF)を高分散する溶液としてはエタノールが最適であることを確認した。分散溶液を真空濾過して得たナノセルロースシートを炭素化、高温処理し、カーボンナノファイバーシート(BioNF-CNF およびCelNF-CNF)を調製し、室温電気抵抗率を測定した。3200℃処理により得られたBioNF-CNFでは市販のVGCF集合体の体積抵抗率とほぼ同等、CelNF-CNFでは多少劣るが、導電性シートやプラスチックなどの導電補助材料としての応用の可能性が高いことが分かった。 2. 高温処理したBioNF-CNF およびCelNF-CNFシートの磁気抵抗を77Kで測定した。その結果、BioNF-CNFの黒鉛化性がCelNF-CNFよりも良い事、シートを構成するCNFの炭素層面はシート面に平行に配向する割合が高いことが分かった。 3. 産業廃棄物であるホヤの殻から、セルロースの結晶性がさらに良いとされるアニマルセルロースを分離、抽出した。得られたアニマルセルロースを(1) 蒸留水分散、(2) アルコール分散し蒸留水で希釈、および(3)t-ブチルアルコール分散し、各溶液を真空凍結乾燥し、綿状ナノファイバー集合体を得た。 4.得られた綿状ナノファイバーを炭素化後、3100℃で処理して綿状のカーボンナノファイバー(CNF)集合体を得た。高温処理したBioNF-CNF およびCelNF-CNFシートではSEM観察において独立したCNFが存在しなかったが、アニマルセルロースを真空凍結乾燥した場合は高温処理後、独立したCNFが得られる事が分かった。しかし、t-ブチルアルコールで分散した場合はナノファイバーが湾曲し黒鉛化しないことが判明した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
採択時の交付申請書に平成24年度以降の研究実施計画として記載した項目および昨年度の研究実施報告書に記載した今後の推進方策における項目をほぼ実施できた。すなわち、 1. ナノセルロースの分散性についてはセルロースがOH基を含むためシクロヘキサン、ベンゼン、アセトンなどは効果が低く、エタノール分散が最適と判断できた。また、シート状カーボンナノファイバー集合体を高温処理し直流4端子法により電気抵抗率を測定した結果、市販のVGCFの体積抵抗率と遜色が無い値が得られる事が分かった。さらに磁気抵抗測定からシートの炭素層面の配向性と黒鉛化度を判断できた。 2. 結晶性の良いナノセルロースファイバーである純粋なアニマルセルロースをホヤの殻から分離・調製できた。ホヤの殻は産業廃棄物であり、天然資源の有効利用および自然環境保全の観点からも安価なセルロースナノファイバー原料として有望である。 3. セルロースナノフィブリルおよびバイオセルロースナノファイバーを高分散、濾過して得たシートを炭素化、高温処理して調製したカーボンナノファイバーシートにおいては独立したカーボン・グラファイトナノファイバーが得られなかったが、アニマルセルロースを真空凍結乾燥することで綿状のナノセルロースファイバー集合体を調製でき、炭素化、高温処理することで独立したグラファイトナノファイバーが得られる事が分かった。 4. これまで得られた成果を第39回炭素材料学会年会、国際会議Carbon2012および3rd German - Japanese Joint Symposiumにおいて発表し、さらに第107回黒鉛化合物研究会において招待講演を行った。また、論文としてまとめ、CARBON誌ならびに炭素誌に投稿し、掲載された。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度は、 1. 24年度にアニマルセルロースを真空凍結乾燥機(平成23年度本助成金で購入)を用いて綿状のセルロースナノファイバー集合体を得た。ナノファイバー集合体を炭素化・高温処理することにより独立したグラファイトナノファイバーが調製できた。このことから平成25年度は、これまで本研究で用いてきた市販のセルロースナノフィブリル(CelNF)および実験室調製のバイオセルロースナノファイバー(BioNF)についても真空凍結乾燥することで綿状のナノファイバー集合体を作成し、炭素化、高温処理の効果を検討したい。 2. また、アニマルセルロースについては比較のためにシート状の試料も調製し、炭素化、高温処理の効果を比較検討したい。 3. 以上のすべての試料について、これまでのCelNFやBioNFのシート状試料と同様に、熱処理温度を変えて(2000~3100℃)、カーボンナノファイバー・グラファイトナノファイバーを調製し、SEMおよびTEM観察、XRDおよびラマン分光測定、電気伝導率測定など系統的に一連の実験を行う予定である。 4. 系統的に行った以上の研究を全体的に検討・考察する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度の本助成金では93,061円の残金が生じた。ナノセルロース試料の炭素化のために用いている赤外線イメージ炉のオ―バ―ホールに使用する予定であったが、金額が足りず見送った。次年度に可能であれば実施したい。また、次年度は本研究課題の実施最終年度のため、今後の研究の推進方策で記した内容に加えて、これまでの研究成果をまとめて公表することも重要であるので、国内および国際学会や論文として発表するための出張費や論文掲載費としても使用したい。加えて、平成24年度から始めたホヤからナノセルロースを得るための薬品購入、および昨年度と同様に試料調製に必要なエタノールなどの有機溶媒、蒸留水、アルゴンガス、窒素ガス、容器、器具その他を購入するために使用する予定である。
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