2011 Fiscal Year Research-status Report
表面酸素欠陥のオーダー化による単結晶酸化チタン光触媒活性の高効率化
Project/Area Number |
23560807
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Research Institution | Kanagawa Institute of Technology |
Principal Investigator |
伊熊 泰郎 神奈川工科大学, 工学部, 教授 (10159593)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 酸化チタン / 表面構造 / 光触媒 |
Research Abstract |
ルチル型酸化チタン単結晶として(001)面、(101)面(=(011)面)、(100)面、(114)面などを用意し、表面を洗浄した。これに有機酸(サラダ油、リノール酸、あるいはオレイン酸)を約3 mg塗布し、波長が366 nmあるいは312 nmの紫外線(UV)を照射した。1時間ごとに酸化チタンと有機酸の合計質量を測定した。(001)面上の有機酸は酸化されて質量が減少したが、他の面上では減少量が少なく、(001)面>(101)面>(100)面>(114)面の順に活性が低下することが明らかとなった。このようなTiO2の光触媒活性の面方位依存性を明確に示した報告は過去にない。 リノール酸を用いて2種類のUVを照射し、質量変化を比較したところ、波長366 nmのUVより波長312 nmのUVの方が約30%分解率が高かった。これは、波長が短い方が高いエネルギーを持っているからと解釈できる。 複数の(001)面を用意し、それぞれ異なった方向に多重溝を導入した。光学顕微鏡で明らかに多重溝が導入されていた。低角X線やラマン分光では多重溝の導入による変化は見られなかったが、通常のX線回折では明らかに変化が見られた。これらの試料でリノール酸の分解速度を調べたところ、予想に反して、多重溝を導入した全ての(001)面でほとんど光触媒活性を示さなかった。これについては現在検討中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は、「従来の単結晶酸化チタン表面より高活性な光触媒表面を得ること」である。(100)面と比べて(001)面は4倍以上も光触媒活性が高いので、従来の単結晶酸化チタンが(100)面であれば、その目的は達成したことになるが、(001)面を基準に考えると、波長の異なるUVを照射することで約30%活性を高められただけで、改良の余地がある。さらに同一方位面で、多重溝のない表面と比較すると、多重溝のある表面は1/4の活性しかない。つまり、活性が低下していて、目的は達成されていない。しかし、多重溝を導入するだけで光触媒活性が大幅に変化したことは、今後その逆が起こる可能性を示唆している。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の研究計画どおり、多重溝を導入する元の結晶として、(001)面以外の面を考える必要がある。そのためには、別の試薬を購入し、結晶構造と多重溝の関係を理解しておく必要性がある。さらに、多重溝の評価法として、X線回折以外の方法も導入する。すなわち、表面の情報が得られるラマン分光(使用法に工夫が必要である)や電子状態がわかるXPSを用いることなどを考える。これ以外の光触媒活性の評価では計画とおり進める予定である。 なお、平成23年度の予算のうち約34万円を使わなかった。その理由は、多重溝を付与した(001)面の光触媒活性を見て、次の試料として何を用いるべきか熟慮したかったからである。必ずしも、(001)面に多重溝を導入することが酸素欠陥をふやすことにならないようである。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度の交付予定額(800千円)と平成23年度での未使用額(346千円)を合わせて1,146千円を次の様に使用する。すなわち、物品費として646千円、旅費として400千円、その他として100千円を使用する。この内、物品費には試料が含まれる。
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Research Products
(12 results)