2012 Fiscal Year Research-status Report
表面酸素欠陥のオーダー化による単結晶酸化チタン光触媒活性の高効率化
Project/Area Number |
23560807
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Research Institution | Kanagawa Institute of Technology |
Principal Investigator |
伊熊 泰郎 神奈川工科大学, 工学部, 教授 (10159593)
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Keywords | 酸化チタン / 表面構造 / 光触媒 / 多重溝 |
Research Abstract |
平成23年度の研究で、ルチル型酸化チタン単結晶(001)面が一番光触媒活性が高いことを見出したが、これに多重溝を付与すると、予想に反して光触媒活性が低下した。平成24年度はその原因を探る意味で次の2種類の実験を行った。 (1) (001)面の表面X線回折(SXRD)データ(CTR)を解析し、平滑な(001)面の構造を調べた。その結果、5 % HF水溶液で処理した(001)面には(011)ファセット面が表面から第4層まで入り込んだ窪みがあることを見出した。これにUV照射すると、表面上層部にある酸素が取り除かれ、窪みの奥の酸素欠損部に酸素が戻ることが示唆された。なお、5 % HF処理しない(001)面はSXRDによるCTR測定ができない面であった。 (2) 多重溝付与面における光触媒活性実験結果は次のようであった。1 mol/LのHCl水溶液で洗浄した(100)面(一番光触媒活性が低い面)を準備し、リノール酸のUV分解で光触媒活性を評価した結果、平滑面、垂直、45°多重溝付与面は全て光触媒活性を示さないが、平行多重溝付与面は少し光触媒活性を示した。400℃で加熱処理した(001)面の平滑面、平行、45°多重溝付与面は光触媒活性がなかったが、400℃加熱処理後の垂直多重溝付与面は加熱しない面の光触媒活性の約50 %が回復した。また、加熱なしで5 % HF処理した(001)面も光触媒活性がなかった。これらの結果は、①酸化チタンの光触媒活性は表面状態に強く依存すること、②多重溝の付与方向によって、光触媒活性が変化することを示している。 以上の結果を合わせると、SXRDで測定が出来ない(001)面の光触媒活性が高く、HF処理や加熱処理を行うと光触媒活性が低下する。しかし、ある特定の方位に多重溝を付与すると、活性が高くなることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究の目的は、「従来の単結晶酸化チタン表面より高活性な光触媒表面を得ること」である。加熱処理した(001)面と比べて加熱処理後オリフラに垂直な多重溝付与(001)面は何倍も光触媒活性が高いので、加熱処理後の単結晶酸化チタン(001)面を基準にすれば、その目的は達成したことになるが、未加熱の(001)面を基準に考えると、垂直多重溝付与面でも光触媒活性は低いので、改良の余地がある。また、(100)面では多重溝付与した面は平滑面より光触媒活性が上昇したが、未加熱の(001)面よりは光触媒活性が低い。そういう意味で本研究の目的は達成されていない。しかし、多重溝の付与方向で光触媒活性が変化したことは、本研究の方向の妥当性を示唆している。
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Strategy for Future Research Activity |
この2年間の研究から、ルチル型酸化チタン単結晶の表面方位のみならず、多重溝の付与方向や表面の処理条件が酸化チタン単結晶の光触媒活性に影響することは明らかなので、①多重溝の付与方法の検討、②加熱処理した(001)面の表面X線回折によるデータ(CTR)の解析、を計画している。①では、フォトリソグラフィ―の手法を参考にしてきれいな多重溝を付与し、その光触媒活性を評価すること、あるいは、加熱処理を施した面を再研磨し、その効果を光触媒活性で評価する計画である。 なお、平成24年度の予算のうち約155千円を使わなかった。その理由は、多重溝を付与した(001)面の光触媒活性を見て、次の試料として何を用いるべきか熟慮したかったからである。必ずしも、(001)面に多重溝を導入することが酸素欠陥を増やすことにならないようである。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度の交付予定額(700千円)と平成24年度での未使用額(155.8千円)を合わせて855.8千円を次の様に使用する。すなわち、物品費として355.8千円、旅費として400千円、その他として100千円を使用する。この内、物品費には試料が含まれる。
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Research Products
(17 results)