2011 Fiscal Year Research-status Report
リチウムイオン二次電池炭素負極材料用炭素小球体の作製
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23560809
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Research Institution | Gunma National College of Technology |
Principal Investigator |
太田 道也 群馬工業高等専門学校, その他部局等, 教授 (40168951)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 樹脂小球体 / 炭素小球体 / リチウムイオン二次電池炭素負極材 / 細孔 / ガス吸着 / サイクリックボルタモグラム |
Research Abstract |
1)研究成果の具体的内容 平成23年度の目的は、(i)表面にトンネル型の孔を持つ、直径が1μm前後の樹脂小球体を調製する条件と(ii)樹脂小球体の炭素化処理が可能となるように不溶不融化条件を確立することである。具体的な取り組みとその結果は以下の通りである。(i)熱硬化性樹脂の重合度を低くすることで添加剤のポリエチレングリコール(PEG)との相溶性が良くなり、樹脂小球体の球径が小さくなると期待した。その結果、合成時の攪拌速度が150rpmであると分子量分布は低分子量側に偏り、樹脂小球体の球径は1-2μmにまで小さくなることがわかった。また、その際に表面にトンネル型の孔を持つことも確認できた。(ii)不溶不融化処理にあたっては、空気酸化や濃硫酸浴中での硬化方法で最適条件を調べた。その結果、濃硫酸浴中で3分間程度浸すことで炭素化処理においても形状ならびに表面の孔の変形を伴わないことがわかった。2)意義と重要性等 樹脂小球体に関する報告例は一般に熱可塑性樹脂に多く見られるが、それらを炭素化することはできない。一方、熱硬化性樹脂ではフラン樹脂やフェノール樹脂などの数例しか報告されておらず、粒子径は10μm程度で、表面は滑らかで炭素化することは可能であるが、炭素収率は40%に満たない。また、細孔は賦活処理によって調製する方法が一般的である。今回の熱硬化性樹脂はピレンを原料とした50%近い炭素収率を示す熱硬化性樹脂であること、低重合度の樹脂を使用することで表面にトンネル型の孔が存在することや室温で濃硫酸浴中に3分という非常に短い時間で硬化が達成できることなどは新しい炭素小球体の作製方法となることがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実績の概要にも述べたように、ピレンを原料とする熱硬化性樹脂の重合度を低くすることで、添加剤として使用したPEGとの相溶性が増加して樹脂小球体の球径は1-2μmと小さくなり、かつ表面にはトンネル型の孔が見られる樹脂小球体の作製条件が絞れたという点では当初の目標に達しつつある。しかし、この条件でも球径が5-10μmの樹脂小球体が混在していてその分離法が十分でないことと、回収率が30%に満たないことが完全な目標の達成に至らないと判断せざるを得ないところである。一方、平成23年度の研究を遂行している際に、計画当初からの製造方法以外に別の方法もあることが判明した。すなわち、α-メチルナフタレンを原料とする熱硬化性樹脂は、1000℃での炭素化処理でほとんどが熱分解によって重量減少して炭素収率は5%前後に満たないが、この樹脂を混合して樹脂小球体を作製すると表面のトンネル型構造はピレン系ほど顕著ではないが内部構造は多孔質となる直径が数μmの樹脂小球体が得られることに気づいた。一般にリチウムイオン二次電池炭素負極材では、難黒鉛化性炭素を使用した方が黒鉛の372 mAh/gという理論放電容量よりもかなり高い値500~700 mAh/gを示すことが報告されている。したがって、表面のトンネル型構造と多孔質性に富む炭素小球体のいずれの場合で放電容量が高くなるかを調べることで、より大きな放電容量の炭素負極材が得られる可能性が出てきた。こうしたことから、研究目的の遂行に対してまあまあ進行しているという判断をしている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成23年度にはほぼ目的とする樹脂小球体の作製条件を絞れたが、球径の大きなものも混在することから樹脂の重合度をもう少し低くできれば球径を揃えることができると期待される。また、樹脂小球体の細孔分布については炭素収率の低い樹脂を混合することで賦活処理をすることなく多孔質炭素小球体が得られると期待される。こうした成果に加えて、当初の平成24年度における以下の研究計画を遂行することを予定している。1)樹脂小球体の加熱炭素化処理を行い、表面のトンネル型構造を維持して炭素小球体を得る条件を確立する。一般に、加熱処理温度を高くすると炭素収率が低くなるためにミクロ孔などの細孔は閉じてしまう傾向にある。そこで、昇温速度と加熱処理温度について適した条件を求める。2)炭素小球体の表面のトンネル型孔の内部組織への連続性や細孔分布などの測定を行うことで電池反応における活物質の吸蔵の可能性について調べる。また、加熱処理に伴う結晶構造の変化についても測定して、炭素負極材としての放電容量を見積り検討する。また、目的とする炭素小球体が計画通りに作製できれば、コインセル用負極電極を成形できるかどうか調べる。また集電極との接触抵抗についても見積り、電池用負極材として適しているかどうか判断する。4)計画通りに実験が進まないとすると、表面の孔が炭素化処理において閉じてしまったり、内部の細孔が閉じることが想定される。また、助電材やマトリックスのテトラフルオロエチレンなどとのぬれ性が悪いことが想定される。こうした場合には、500℃以下の低温での骨格構造の発達と炭素小球体の比重に近いマトリックスなどを用いて対応する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成23年度に当初予定していた樹脂小球体は簡便な方法で作製できる条件を見出すことができ、年度当初の予算をすべて使用するまでもなく実験が順調に進み、結果として593,211円の繰越金を残した。平成24年度では樹脂小球体の加熱処理によって、樹脂小球体の粒径を揃えるという問題は残されているが、炭素小球体を作製することがまずは優先すべき課題で、その際に表面のトンネル型の孔や内部の細孔が維持されていなければならない。そのためには、昇温速度や加熱処理温度を制御して炭素化処理を行う必要がある。ここで作製する炭素小球体は電極として使用することから、専用の樹脂小球体作製用ガラス製反応容器や加熱処理用の管状炉用炉心管ならびに熱電対、高純度アルゴンや窒素ガスなどの消耗品が不可欠である。特に本研究では炉心管に石英ガラス製を使用することで加熱処理時に炉心管からの酸素の侵入を防止する必要がある。また、樹脂小球体作製に必要な有機溶剤や樹脂原料試薬、熱分析専用白金パンなども購入しなければならない。そこで、平成23年度の繰越金と今年度予算の合計1,293,211円から800千円相当の消耗品購入予算が必要である。また、炭素小球体の細孔分布やトンネル型の孔の内部組織との連続性を調べるためには現有設備の走査型電子顕微鏡(SEM)では不可能であることから、外部機関に出向いてFIB-SEMや透過型電子顕微鏡などで観察する必要があり、さらにそれらの成果を学会等で発表または学術雑誌等に投稿するために493,211円相当の費用、計1,293,211円の費用が不可欠である。
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Research Products
(9 results)
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[Presentation] Preparation of carbon microspheres for electric double layer capacitor2012
Author(s)
Michiya Ota, Daiki Sakurai, Maki Sato, Takahiro Shimizu, Yoshihiro Takizawa, Takeo Ote, Osamu Tanaike, Masaya Kodama
Organizer
American Chemical Society, Spring 2012 National Meeting
Place of Presentation
San Diego, California, USA
Year and Date
March 27, 2012
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