2012 Fiscal Year Research-status Report
リチウムイオン二次電池炭素負極材料用炭素小球体の作製
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23560809
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Research Institution | Gunma National College of Technology |
Principal Investigator |
太田 道也 群馬工業高等専門学校, その他部局等, 教授 (40168951)
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Keywords | 樹脂小球体 / 炭素小球体 / リチウムイオン二次電池炭素負極材 / 細孔 / 放電容量 / クーロン効率 |
Research Abstract |
1)研究成果の具体的内容:平成23年度の研究成果として、得られた樹脂小球体は粒子径が不均一であることが問題点となった。平成24年度の目的は、(i)樹脂小球体の粒子径が1-2μmとなる条件の再検討、(ii)1000℃~2500℃に加熱炭素化処理する条件の決定、(iii)炭素小球体の結晶性ならびに表面形状、細孔分布等の解析、(iv)電極としての試験的組立ての4点である。具体的な取組み結果は以下の通りである。 (i) 原料樹脂の重合度を前年度よりも低くして樹脂小球体を調製したところ、ほぼ全体が粒径1-2μmの目的とする樹脂小球体を得ることができた。(ii)炭素前駆体が形成される500℃までとそれ以上の2段階に分けて、昇温速度と最終加熱温度について検討した。その結果、昇温速度は4.2℃/min、500℃で1時間、最終加熱温度で1時間保持することが最適であることがわかった。(iii) 2000℃までは炭素小球体は難黒鉛化性炭素としての傾向を示すが、2000℃を超えると易黒鉛化性炭素としての傾向を示した。2500℃で加熱処理した炭素小球体の表面形状は滑らかで、トンネル孔が一部塞がり、ミクロ孔などは結晶性の向上とともに閉じていく傾向を示した。(iv)試験的にコイン型セルを作製したところ、昨年度の試料では炭素小球体は銅集電極から剥離して測定に不適であることがわかった。しかし、粒径が揃ったものでは電極との接着も良く測定に適していると推測できた。 2)意義と重要性:リチウムイオン二次電池では、エネルギー密度の向上とLi+の電極内部への拡散速度が課題にある。負極材の中には大きな放電容量を示すものもあるが充電には時間を要する。今回のトンネル型孔を有する炭素小球体は粒子径が1-2μmと小さくて、トンネル型孔がLi+/Li系の電気化学的挙動に有利に作用すると期待できる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実績の概要でも述べたように、平成23年度の成果として粒子径が1-2μmの樹脂小球体の割合が少ないことが見出されたが、混合物の存在は実際のリチウムイオン二次電池の電極特性を解析する段階で大きな妨げとなる。そこで、原料樹脂の重合度をさらに低くするという踏み込んだ実験を行うことで、ほぼ全体が粒子径1-2μmの樹脂小球体となる条件を掴むことができた。その条件下で得られた樹脂小球体の加熱炭素化処理にあたって、4.2℃/minの昇温速度の決定や炭素前駆体の形成される500℃までとそれ以上の高温での加熱処理工程を決定することで、表面形状やトンネル型孔を壊すことなく1500℃までの炭素化処理ができた。しかし、加熱処理温度が2500℃になると、結晶性の向上に伴って細孔が閉じてしまうという現象が観察された。結晶性や細孔分布は加熱処理温度に依存しており、1500℃と2000℃が一つの境目にあたることがわかった。 一方、リチウムイオン二次電池炭素負極材としての使用にあたって、予備的にコインセルを組み立てた。その結果、平成23年度に作製した炭素小球体では剥離が顕著であったのに対して、粒子径が1-2μmにそろった樹脂小球体から調製した炭素小球体は集電極から剥離することなくコインセルを組ことができた。 一般には、難黒鉛化性炭素負極電極は黒鉛負極電極に比べてかなり高い値500~700 mAh/gを示すことが報告されている。したがって、平成24年度に作製した樹脂小球体から炭素小球体を作製することで、難黒鉛化性炭素の結晶特性を持ちながら、表面のトンネル型構造と多孔質性によってLi+/Li系の電気化学的挙動が放電容量の向上をもたらすものと期待できるようになった。 こうしたことから、研究目的の遂行に対してまあまあ進行しているという判断をしている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成23年度と24年度にかけて、粒子径が1-2μmの樹脂小球体を作製する条件が確立した。これによって、加熱炭素化処理における結晶性の変化、細孔分布の変化等についてもかなり明らかになった。しかしながら、有機物に関する炭素化挙動の一般例にしたがって、1000℃を超えると細孔はミクロ孔から順次閉じていき、2000℃を超えると顕著になることがわかった。予備的に1000℃で加熱炭素化処理した炭素小球体を用いて二次電池の負極電極を作製したところ、集電極からの剥離もなく電極として適していると期待される。そこで、25年度にかかげる課題は、(1)炭素小球体を用いてコイン型セルを試作して電気化学測定を行うことと、(2)炭素小球体をリチウムイオン二次電池として使用した場合の電池としての性能を結晶構造や細孔構造の測定結果と併せて評価することである。具体的には次のように展開する計画である。 1)作製したコイン型セルを用いて充放電特性を測定し、エネルギー密度や作動電圧、放電容量、サイクル容量の変化大電流放電や高速充放電について調べる。 2)電池としての性能について、上述1)の結果と結晶構造、細孔構造などから評価する。 3)研究が当初の計画通りに進まない場合には、結晶性よりも細孔構造を優先的に考えて炭素小球体の賦活処理を行うことにより、リチウムイオンの拡散経路を確保する。また、1000℃以下の比較的結晶性の低い無定形炭素の段階で電池特性を調べる。あるいは1㎛よりも直径の小さい炭素小球体を用いて同様の電気化学測定を行い、リチウムイオン二次電池用高性能負極材として利用することを検討する。さらに、エネルギー密度を向上させるために、リチウムイオンの吸着特性を向上させることを検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度までに課題となっていた粒子径のばらつきがなくて1-2μmの樹脂小球体は、重合度を低くするという簡便な方法で作製できる条件を確立することができ、また、その炭素化処理条件においても濃硫酸浴に3分間程度浸漬した後で、500℃までとそれ以上の高温の最終処理温度で加熱処理することによって、樹脂小球体としての形状や細孔を維持したままで炭素化処理することができた。比較的、簡便な方法を見つけることができたので年度当初の予算をすべて使用するまでもなく実験が順調に進み、結果として508,009円の繰越金を残した。 平成25年度では実際にイオン二次電池用コイン型セルを組み、その電気化学的挙動を解析する必要がある。コイン型セルの組み立てにあたっては、専用の樹脂小球体作製用ガラス製反応容器や加熱処理用の管状炉用炉心管ならびに熱電対、高純度アルゴンや窒素ガス、コイン型セルの乾燥保管デシケーターなどの消耗品が不可欠である。賦活の必要性が生じた場合には、石英ガラス管を使用してガス賦活や薬品賦活を行う必要がある。 また、樹脂小球体の作製には収率の関係から有機溶剤や樹脂原料試薬、熱分析専用白金パンなどが不可欠である。そこで、平成24年度の繰越金と今年度予算の合計1,008,009円から700,000円相当の消耗品購入予算が必要である。また、コイン型セルの作製については現有設備では不十分であることから外部機関に出向いて作製する必要があり、さらにそれらの成果を学会等で発表または学術雑誌等に投稿するために308,009円相当の費用、計1,008,009円の費用が不可欠である。
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Research Products
(6 results)