2011 Fiscal Year Research-status Report
強磁場コロイドプロセスによる配向ヘマタイトの創製と異方特性評価
Project/Area Number |
23560812
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Research Institution | National Institute for Materials Science |
Principal Investigator |
打越 哲郎 独立行政法人物質・材料研究機構, その他部局等, 研究員 (90354216)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鈴木 達 独立行政法人物質・材料研究機構, その他部局等, 研究員 (50267407)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | ヘマタイト / ゲーサイト / 強磁場 / 配向 / コロイドプロセス / 異方性 |
Research Abstract |
ヘマタイトはコランダム構造を有し、その物性には結晶構造の異方性に起因した異方性の出現が報告されている。結晶をある方位に優先配向させたヘマタイトでは、レアアースなどを添加せずに諸特性の改善が期待できる。しかし、従前のヘマタイトの異方性研究は、不純物の多い単結晶や小さな薄膜試料を用いて行なわれており、実用化に必要なサイズの配向バルク体での特性研究は殆どない。そこで、ゲーサイトを出発原料とする強磁場コロイドプロセスにより、優先配向方位の異なる配向ヘマタイトバルク体を作製し、その異方特性を評価して、配向ヘマタイトの実用材への応用の可能性を探索することを目的とする。H23年度は、高配向な緻密成形体を得るためのゲーサイトスラリーの最適調製条件を検討し、磁場中電気泳動堆積および鋳込み成形によってゲーサイト配向前駆体膜作製を行った。結晶性が高くアスペクト比の小さな市販のゲーサイト粒子を出発原料とし、溶媒+分散剤+バインダーの組合せを種々検討した結果、超純水+氷酢酸+PVAで良好なスラリーが得られた。このスラリーを0~12Tの強磁場中で鋳込み成形または電気泳動堆積により固化成形した。その配向状態をXRDで調べた結果、2~6.5Tの磁場印加でc軸が磁場に垂直に配向したゲーサイト成形体が得られ、配向度はほぼ同様であった。6.5T以上の磁場では粒子と磁場の相互作用が強すぎ、平らな成形体が得られなかった。このゲーサイト配向成形体を熱処理することで、ゲーサイトのa,b軸がヘマタイトのc軸に引き継がれた高配向ヘマタイトバルク体を作製できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「ゲーサイト→ヘマタイト」トポタクチック反応の利用で、相変態後も配向が失われない高配向ヘマタイトの作製につながっている。鋳込み成形法の場合では、分散媒に水、分散剤にアニオン性高分子電解質を用いることで、低粘度の安定したスラリーが得られ、高配向な成形体が作製できた。しかし、電気泳動堆積法では、水系スラリーの電気分解による気泡の混入が心配され、当初は非水系スラリーを検討したが、非水系分散媒では安定したスラリーが得られず、配向度も上がらなかった。しかし、超純水+氷酢酸の組合せ(pHは3.5付近に調整)とすることにより、水系ではあるが印加電圧が10V程度であれば気泡の発生が全く見られず、かつ安定したスラリーが得られることがわかり、電気泳動堆積法による配向自立膜の作製も容易にできるようになった。薄い堆積体では、ゲーサイトの長軸に平行な方向で乾燥時に短冊状の割れが多く発生したが、PVAを適量添加することでこれ防ぐことができた。このスラリーの最適条件により、鋳込み成形法だけでなく、電気泳動堆積法でもゲーサイト配向体が確実に作製できるようになった点は大きい。これにより、次年度以降の特性試験に必要なサイズ、形状のヘマタイトバルク配向体が大量に作製できることとなる。
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Strategy for Future Research Activity |
鋳込み成形法または電気泳動堆積法を用いて作製したゲーサイト固化成形体を熱処理して、ヘマタイトバルク配向体を作製する。配向方位の制御された自立膜の作製には、磁場と電場のなす角を容易に制御できる電気泳動堆積法を用いる。作製された配向ヘマタイトの磁気特性および力学特性を評価し、配向性との関係を検討するとともに、異方特性の発現する機構について考察する。磁気特性については、試料を数mm角に切り出し、試料振動型磁力計(VSM)による磁化曲線(M-H曲線)測定により評価する。測定は異なる結晶配向方位について行なう。また、力学特性のうち、材料のマクロ的な強度および靱性については3点もしくは4点曲げ試験により行なう。また、結晶配向面における摩擦摩耗試験をボールオンディスク・ピンオンディスク型摩擦摩耗試験によりドライまたは潤滑条件下において測定する。摩耗試験においては、方向性も重要なファクターで有るため、同一結晶面内の直交する2方向で測定する。また、結晶面による硬さ評価をナノインデンテーション試験により行なう。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
主として、試薬、理化学用品等の研究消耗品の購入に充当する。また、国内および国際会議の参加費および旅費の支出にも使用する。試験片の加工、機械特性の評価および機器分析の一部を外部に依頼することも予定している。
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Research Products
(4 results)