2012 Fiscal Year Research-status Report
グラフェン類の表面改質とナノハイブリッド化による高感度分子センシング材料の合成
Project/Area Number |
23560820
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Research Institution | Niigata Institute of Technology |
Principal Investigator |
藤木 一浩 新潟工科大学, 工学部, 教授 (60251865)
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Keywords | カーボンナノチューブ / グラフェン / ナノ材料 / 表面グラフト / ゾル-ゲル反応 / 無機/有機複合材料 / 分子センシング |
Research Abstract |
本研究は、環境中に存在する内分泌撹乱化学物質(いわゆる環境ホルモン)や揮発性有機化学物質を、安価に且つ迅速に検出する手法の開発を目的として、新しい機能性材料として注目を集めているグラフェンやカーボンナノチューブ等の炭素ナノ材料を用いて、 発泡スチロール(ポリスチレン)及びPETボトル(ポリエチレンテレフタレート)の廃プラスチック材料との存在下で、ゾル-ゲル反応を行うことにより、これらのナノ材料やポリマーがマトリックスゲル中に均一に分散した柔軟性を有する導電性無機/有機複合膜を合成するとともに、内分泌撹乱化学物質等に対して特異的選択的に応答・検出する機能を付与した分子認識センサーの合成を試みる。 これまでに、ビニルフェロセンを用いて各種コポリマーを合成し、コポリマー中のフェロセン部位と炭素ナノ材料の表面縮合芳香族環との配位子交換反応により、対応するコポリマーが表面グラフトしたポリスチレン及びPET中に均一に分散する炭素ナノ材料を得られること、及びこのようなポリマーグラフト化炭素ナノ材料との共存下でゾル-ゲル反応を行うと、ポリマーとナノ材料の2つの成分がマトリックスゲル中に均一に分散した無機/有機複合ゲルを合成できることを明らかにした。 平成24年度は、無機/有機複合ゲルを薄膜化する合成条件について検討した。すなわち、金属アルコキシド成分の種類、添加量、ゾル-ゲル反応プロセスに添加する廃プラスチック由来のポリマー及びポリマーグラフト化炭素ナノ材料の添加量、添加比率等について詳細に検討し、ゲルを膜厚0.5mm程度のフィルム状にできる合成条件を見出した。また、合成した無機/有機ナノ複合膜を用いて揮発性有機化学物質の吸着特性を測定したところ、添加するポリスチレンあるいはPETと、ナノ材料表面のグラフト鎖の両方に共通する良溶媒に対して、吸着量が著しく増大することが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成24年度は、得られる無機/有機ナノ複合ゲルをフィルム状にキャストして薄膜化するまでの反応条件について検討するとともに、得られる複合膜について、廃プラスチック由来のポリマー及び各種炭素ナノ材料のマトリックスゲル中への分散状態や、マトリックスゲルとポリマー及び炭素ナノ材料との相互作用の度合いを評価して、引っ張り強度などの機械的特性との関係を究明すること、さらに、添加するポリスチレン及びPETと、炭素ナノ材料表面のグラフト鎖との組み合わせを変えて無機/有機ナノ複合膜を合成し、内分泌撹乱化学物質及び揮発性有機化学物質等の吸着特性を測定することまでが目標であった。しかしながら、ゲルをフィルム状にキャストして薄膜化する反応条件と、揮発性有機化学物質に対する吸着特性を向上させる条件とを両立させることが難しく、無機/有機ナノ複合膜の機械的特性の評価、及び内分泌撹乱化学物質の吸着特性の測定までには至っていない。 よって、今後は、炭素ナノ材料の添加量・ポリマーに対する添加比率、ナノ材料表面のグラフト鎖の分子量・グラフト量が、分子吸着特性に及ぼす影響について詳細に検討して、揮発性有機化学物質だけではなく、内分泌撹乱化学物質等の目的とする分子を特異的選択的に吸着する性質、すなわち分子センシング機能の測定・評価に注力する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題の最終年度となる平成25年度は、添加するポリスチレン及びPETと、炭素ナノ材料表面のグラフト鎖との組み合わせを変えて無機/有機ナノ複合膜を合成し、炭素ナノ材料の添加量・ポリマーに対する添加比率、ナノ材料表面のグラフト鎖の分子量・グラフト量が、内分泌撹乱化学物質や揮発性有機化学物質等の分子吸着特性に及ぼす影響を明らかにすることに早急に取り組む。 次に、ナノ複合膜の電気抵抗値の挙動を測定し、分子吸着量と電気抵抗値との関係を明らかにして、簡便で且つ精度・応答性良く、内分泌撹乱化学物質をはじめとする種々の液体分子や気体分子の吸着量を検知するセンサーとしての測定条件・方法の確立に注力する予定である。 最後に、残りの期間を要して、廃プラスチック由来のポリマー及び各種炭素ナノ材料のマトリックスゲル中への分散状態や、マトリックスゲルとポリマー及び炭素ナノ材料との相互作用の度合いを評価して、これらの性質とナノ複合膜の引っ張り強度などの機械的特性との関係を可能な限り究明することを目指したい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度の研究進捗状況は、上述のとおり当初の研究計画よりもやや遅れが生じている。このため、実験機器、試薬類やガラス器具類の購入に充当する予定であった物品費に余裕が生まれ、この分を次年度使用額に繰り越しとした。 平成25年度は、添加する廃プラスチック由来のポリスチレン及びPETと、炭素ナノ材料表面のグラフト鎖との組み合わせを変えて無機/有機ナノ複合膜を合成し、内分泌撹乱化学物質や揮発性有機化学物質等の分子吸着特性に及ぼす影響を明らかにすることが最優先の課題なので、炭素ナノ材料表面へのポリマーのグラフト化反応や有機溶剤、内分泌撹乱化学物質、及び揮発性有機化学物質等の精製の際に必要となる冷却トラップ装置関連の購入を優先して、当該年度の請求額と合わせ、設備備品費を以下のとおり計上する。残りを、試薬類、ガラス器具類の購入のための消耗品費と調査・研究及び成果発表のための旅費に充当する予定である。 ・設備備品費:冷却トラップ装置・東京理化 UT-2000(1×@500) 500 (金額単位:千円) ダイヤフラム型真空ポンプ・東京理化 DTU-20(1×@230) 230 ・消耗品費:試薬類及びガラス器具類 100 ・旅費:高分子討論会 4日間 80
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Research Products
(3 results)