2011 Fiscal Year Research-status Report
一方向配列カーボンナノチューブを適用した高張力ポリマー複合材料の創出
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23560823
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Research Institution | Japan Aerospace Exploration Agency |
Principal Investigator |
小笠原 俊夫 独立行政法人宇宙航空研究開発機構, 研究開発本部, 主幹研究員 (20344244)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | カーボンナノチューブ / 複合材料 / 力学特性 / 表面改質 / 真空紫外光 / プリプレグ |
Research Abstract |
研究初年度は、本研究における最重要課題である一方向配列MW-CNTシートの試作と、乾式によるMW-CNTの表面改質を行うことを目標として研究を実施した。研究は順調に進捗し、当初2年目以降の目標であった配列CNTシートに対する樹脂の含浸と複合材料の試作方法検討および配列MW-CNT複合材料のマクロ力学特性の評価まで進めることができた。初年度の研究が大きく進捗したのは、高品質の配向CNTシートを、静岡大学の井上翼准教授に提供して頂いたことが大きい。静岡大学から提供された配列CNTシートと、本研究で独自に試作した未硬化エポキシ樹脂フィルムを用いて、ホットメルト法により高品質のCNT/エポキシプリプレグを世界で始めて試作することに成功した。配列CNT/エポキシプリプレグから複合材料フィルムを試作し、室温での引張り試験よって力学特性を評価した。その結果、CNTを約30体積%分散することにより、エポキシ樹脂と比較して、引張り強度は約4倍(240MPa)、弾性率は約36倍(90GPa)となることを示した。特に、弾性率の値は世界最高レベルである。あわせて、真空紫外光(VUV)照射による表面改質の検討を実施した。VUV照射後のCNTシートを用いたCNT/エポキシ複合材料を試作し、引張り試験により力学特性を評価した。その結果、VUV照射によって若干の強度低下が認められ、CNTの表面が予想外の損傷を受けている可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究では配列CNTを適用した高張力CNT/樹脂複合材料の創成を目的し、CNT体積分率5%の樹脂系複合材料としては世界最高レベルである引張り強度200 MPa、引張り弾性率15 GPaの達成を数値目標としている。当初の目的であったCNTシートやCNT/エポキシ複合材料の試作プロセスについてはほぼ目処が立ったものと考える。また、CNT体積分率5%における引張り強度および弾性率としては、それぞれ110MPa、20GPaという値が得られており、強度については未達であるものの弾性率としては目標を大きく上回る結果が達成された。一方、真空紫外光によるCNT表面への改質については、現在のところあまり良い結果が得られておらず、今後、更に表面改質条件について検討を進める必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度も継続して配列CNTシートを適用したエポキシ複合材料の試作と評価を行う。材料仕様や積層構成の異なる複合材料に関するデータの蓄積を進めるとともに、強度および弾性率の更なる向上を目指して試作プロセスの改善にも取り組む。また、材料開発の方向性に関する知見を得ることを目的として、複合材料の微視的な損傷・破壊メカニズムについても解明を進める。熱硬化型のエポキシ樹脂に加えて、熱可塑性樹脂を適用した複合材料の試作プロセスについても検討を行う。真空紫外光によるCNT表面改質については、照射条件について検討を行い、本年度末までに技術としての適用可能性判断を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
複合材料を試作・評価するための原材料費、消耗品などの購入に使用する。・原材料費 30万円・複合材試作用消耗品 30万円・表面改質処理用消耗品 30万円・ナノ界面評価用消耗品 20万円・論文投稿関係費用 10万円
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Research Products
(8 results)