2013 Fiscal Year Research-status Report
粒界構造制御による希土類磁石高保磁力化を目指したNd-O生成機構の第一原理計算
Project/Area Number |
23560826
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
陳 迎 東北大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (40372403)
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Keywords | 希土類磁石 / 高保磁力 / Nd-O / 粒界構造 / 生成機構 / 第一原理計算 |
Research Abstract |
本研究では、希土類磁石Nd/Nd-Fe-Bの界面に生成されたNd-Oを対象として、高保磁力化に必要な微視的組織形成を理解するための電子論的解析を目指す。H25年度には、disorder phaseに対して系統的な基底状態解析を行い、fcc-NdxOの形成機構を徹底的に調べた。主な結果か以下になる。(1)H24年度には、規則相の計算に基づいて、低酸素濃度域に観察されたfcc-NdOx相は、高酸素濃度域における安定な構造に酸素空孔を漸次に導入して、Fluorite-NdO2->cI80-Nd2O3 -> ZnS-NdOという構造シリーズに沿って形成される「酸素空孔形成モデリング」を提案した。H25年度には、電子構造計算とクラスター展開法(CEM)の組み合わせにより検証した。その結果、ZnS構造をbaseに酸素空孔を導入して形成された構造が広範な酸素濃度域に安定するのに対して、hP5をbaseした酸素空孔により形成された構造が安定されないことが分かった。(2) ZnS- NdOから形成された広い酸素濃度における各構造に対して格子常数を求め、5.21-5.58Aの幅で7%の変化があることが分かった。それは、Nd-rich層とNd-Fe-Bフィルムの界面に、fcc-baseのNd-Oの格子常数が5-7%の幅で変化していて、hP5 baseの構造が2%の幅しか変化しない実験結果とよく一致している。ZnS-NdO、NaCl-NdO 、cI80-Nd2O3、hP5-Nd2O3における1個酸素空孔の形成エネルギーを計算した。酸素の導入により電子状態、電荷分布の変化、原子間距離、格子変形を調べ、各構造の化学結合、弾性特性を考察して、Nd-O酸素固溶体がfcc-base構造から形成されることの電子論的な起源を解明した。(4) 実験報告された保磁力向上に有効なCu元素をNd-Oに導入して計算を行い、Nd2O3_cl80に2.5%Cu-dopedした系はエネルギー的に安定することが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は概ね順調に進行しているが、前年度の計算に基づいてfcc-NdxOの形成機構を徹底的に調べるために、規則相だけの解析が不十分であり、disorder phaseの解析が重要であることを考えて、電子構造計算とクラスター展開法(CEM)の組み合わせによりdisorder phaseの基底状態解析への展開を重点にした。その結果は予想以上に実験結果と一致していて、実験で観察された現象の起源を説明することができて注目を浴びた研究成果になった。この計算が使用予定の大型計算機を使用せずに本プロジェクト経費で購入したHigh Performance Workstationで実行したため、研究費の未使用額が生じた。一方、スーパーコンピュータで大規模部界面計算に必要なソフトの準備が予定より遅れたため、部分整合界面計算が途中になっていた。それらの理由でH25年度の計算内容を調整して、補助事業期間一年間延長の申請をして承認された。H26年度も研究を続けることになっている。
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Strategy for Future Research Activity |
H26年度には、計算予定をしているNd/Nd-O/Nd-Fe-B界面の大規模電子状態解析を行う。Nd/Nd-O界面モデルに対して酸化物界面と近接する相との間の界面原子の整合を調べ、界面エネルギーを求めることで、 Ne-Fe-Bとhcp構造であるNd-richの間にNdOx-fccを挟む 「高保磁力発現界面」の形成機構を明らかにする。さらに、Cu元素の添加で安定性のほかに磁性特性への効果に関する計算に進む。 本課題の最後の年ですので、得られた結果を取りまとめ、希土類磁石保磁力向上する粒界構造の制御について提案し、成果の発表を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
前年度の計算に基づいてfcc-NdxOの形成機構を徹底的に調べるために、規則相だけの解析が不十分であり、disorder phaseの解析が重要であることを考えて、電子構造計算とクラスター展開法(CEM)の組み合わせによりdisorder phaseの基底状態解析への展開を重点にした。その結果は予想以上に実験結果と一致していて、実験で観察された現象の起源を説明することができて注目を浴びた研究成果になった。この計算が使用予定の大型計算機を使用せずに本プロジェクト経費で購入したHigh Performance Workstationで実行したため、研究費の未使用額が生じた。 本課題の最後の年ですので、4年間での研究で得られた成果については、論文発表と共に、積極的に内外の学会での発表を行うため、論文投稿費と国際、国内旅費が必要となる。
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