2012 Fiscal Year Research-status Report
巨大ひずみ加工中に生ずるナノ析出物の加工誘起溶解反応機構の解明
Project/Area Number |
23560833
|
Research Institution | University of Hyogo |
Principal Investigator |
足立 大樹 兵庫県立大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (00335192)
|
Keywords | 巨大ひずみ加工 / 析出物溶解 / 小角散乱 |
Research Abstract |
本研究は巨大ひずみ加工中の析出物の溶解が何に起因して生じるのかを明らかにすることを目的としている。H24年度はη'相を析出させたアルミニウム合金に巨大ひずみ加工を施すことにより生じる溶解挙動をX線小角散乱測定により詳細に調べ、その原因を考察した。 母相中にη'相を析出させるため、Al-Zn-Mg合金に時効を施した。時効条件を変化させることによって、η'相の半径を変化させた。これらの試料に対し、HPT法を用いて巨大ひずみ加工を行った。加えたひずみ量を変化させた試料に対し、X線小角散乱測定を行うことにより、析出物の溶解挙動を調べた。また、透過電子顕微鏡観察により析出物の形態や、結晶粒微細化挙動を調べた。透過電子顕微鏡観察の結果、巨大ひずみ加工を行った試料では析出物がほとんど確認出来なかった。これは、析出物が溶解していることに加え、転位が多量に導入されているため析出物が非常に見づらいことが原因として考えられる。小角散乱測定の結果、ある臨界半径までの大きさの析出物は、ひずみ量の増加に対して非常に早く溶解するのに対し、臨界半径以上の析出物の溶解はひずみ量が増加してもあまり溶解しないことが分かった。また、その臨界半径は転位運動が切断機構からオロワン機構に変化する半径と一致していた。よって、転位運動による析出物の切断が、巨大ひずみ加工中の析出物の溶解のもっとも大きな原因であることが分かった。次年度以降は、他の析出物についても同様のことが言えるかどうかを検証する。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は巨大ひずみ加工中の析出物の溶解が何に起因して生じるのかを明らかにすることを目的としている。本年度に行ったX線小角散乱の結果から、アルミニウム合金中に析出するη’析出物の場合においては、転位による析出物の切断が析出物溶解の最も大きな原因であろうということが分かった。よって、本研究は順調に進展していると言える。
|
Strategy for Future Research Activity |
本研究は巨大ひずみ加工中の析出物の溶解が何に起因して生じるのかを明らかにすることを目的としており、本年度に行ったX線小角散乱の結果から、転位による析出物の切断が、析出物溶解の最も大きな原因であろうということが分かった。しかしながら、上記結論はアルミニウム合金中に析出するη’析出物におけるものであり、他の析出物も同様のメカニズムで溶解しているとは必ずしも言えない。よって、次年度以降、他の析出物についても同様のことが言えるかどうかを検証して行く。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
アルミニウム合金中に完全整合析出物が析出するAl-Sc合金と、非整合析出物が析出するAl-Si-Ge合金を入手する。X線小角散乱測定、透過電子顕微鏡観察など、分析用試料を作製するための消耗品の購入を行う。
|
Research Products
(2 results)