2011 Fiscal Year Research-status Report
酸化チタン/粘土複合体を用いた多機能環境浄化材料の開発
Project/Area Number |
23560837
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
亀島 欣一 岡山大学, 環境管理センター, 准教授 (50251616)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
三宅 通博 岡山大学, 環境学研究科, 教授 (30143960)
西本 俊介 岡山大学, 環境学研究科, 助教 (90435826)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 可視光応答型光触媒 / 窒素ドープ / 酸化物ゾル / 粘土 / 有機物分解 |
Research Abstract |
可視光応答型光触媒ゾルの作製に,当初は遷移金属のドーピングによる界面電荷移動を利用した可視光応答型の酸化チタンゾルを予定していた.しかし,ゾルの合成条件が詰められなかったため,合成が可能であった窒素ドープ酸化チタンゾルについて検討を進めた.窒素源に尿素と塩化アンモニウムを用いてゾルの調製を試みたところ,尿素を用いた場合に窒素ドープに由来する可視-紫外吸収を示す試料が得られた.次に,窒素添加量を制御するため,N/Ti比が0~5の範囲となるようにゾルの仕込み組成を変化させて,N-doped TiO2/モンモリロナイト複合体を作製した.結晶相の変化を見ると窒素ドープに伴いアナターゼの結晶性が低下した.しかし,窒素添加量の増加と結晶性の低下の程度に相関は見られなかった.一方,窒素添加量の増加に伴い,複合体中のTi量は減少した.これは,窒素ドープに伴いチタニアゾルの表面電荷が少し負よりに変化したためと考えられる.得られた複合体の有機物の分解性能を,ビスフェノールAを対象に調査した.N/Ti比が1.0の条件で調製した複合体を,乾燥後に200~350℃の範囲で熱処理した.50 ppmのビスフェノールA溶液100 mLに0.5 gの試料を分散させ,高圧水銀灯を< 420 nmカットフィルターで可視光化した照射下で4 h反応させた後,ビスフェノールAの分解量をUV-visで解析した.乾燥試料の分解量は18%であったが,熱処理温度が150℃,200℃,および250℃と増加するに従い,22%,42%,および50%に増加した.しかし,350℃で熱処理した試料では11%に急減した.市販されている窒素ドープ酸化チタン(住友化学製)で対照実験を行ったところ,分解量は45%であった.従って,市販の可視光応答型酸化チタンよりも高い有機物分解性能を持つ複合体が得られたことが明らかになった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定である遷移金属のドーピングによる界面電荷移動を利用した可視光応答型の酸化チタンゾルでの検討は十分とは言えないが,窒素ドープ酸化チタンゾルを用いたモンモリロナイトとの複合体の作製に成功している.また,得られた複合体では,市販の可視光応答型の窒素ドープ酸化チタンよりも高い有機物分解性能を示しており,初年度の研究目標を十分にクリアしたと考えられる.以上の観点から「2:おおむね順調」であると判断した.
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Strategy for Future Research Activity |
平成23年度に実施予定であった遷移金属のドーピングによる界面電荷移動を利用した可視光応答型の酸化チタンゾルについての検討を再度行い,窒素ドープよりも高い有機物分解性能を目指す.また,平成23年度に得られた結果をすすめて,さらに有機物の分解性能を液相系についてはビスフェノールAに加えてフェノールについて検討する.さらに,気相系について,有機物にアセトアルデヒドとトリメチルアミンを用いて,気相分解用ガラスセルを利用した気相バッチ法で紫外線照射下と可視光照射下の有機物分解性能を調査する.得られた分解性能と分解挙動をもとに基礎的な解析データと照合して,最適な合成条件を検討する.また,作製法にフィードバックをかけプロセスの最適化を図る.最適条件で作製した試料を用い,エアスプレーで外壁材としてのセラミックスタイル表面に噴霧し,電気炉で熱処理して焼き付ける.(200~250℃)この試験体を用いて,液相系,および気相系の予備実験を行い,試験体での基礎データとする.さらに,現有するスピンコーターを用いた塗布膜も用意し,膜化プロセスの違いが及ぼす性能の変化についても詳細に調査する.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
合成に係る大型の機器は平成23年度に導入済みであるので,主に一般試薬と消耗される器具類の購入が中心になる.合成条件のフィードバックによっては,熟成用の恒温装置や水熱反応容器の購入を検討する.一方,塗布膜や塗布体の作製のために,コンプレッサーやノズル等の新規購入を予定している.また,分析機器のために分離用カラム,溶離液,高圧ガスボンベ等を購入する.これらの物品費として700千円を計上している.さらに,平成23年度における成果を広く公表するために,国内学協会における発表に加えて,海外での国際会議での公表を予定している.情報収集を含めた国内会議への参加を3~4回,海外での発表を1回予定しており,そのための旅費として300千円を計上した.また,分析等の依頼費用として100千円をその他の費目で計上している.
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