2012 Fiscal Year Research-status Report
酸化チタン/粘土複合体を用いた多機能環境浄化材料の開発
Project/Area Number |
23560837
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
亀島 欣一 岡山大学, 環境生命科学研究科, 准教授 (50251616)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
三宅 通博 岡山大学, 環境管理センター, 教授 (30143960)
西本 俊介 岡山大学, 環境生命科学研究科, 助教 (90435826)
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Keywords | 可視光応答型光触媒 / 窒素ドープ / 酸化物ゾル / 粘土鉱物 / 有機物分解 |
Research Abstract |
窒素ドープ酸化チタンゾルを用いた酸化チタンゾル/粘土複合体から成る可視光応答型光触媒の検討を進めた.あわせて,遷移金属ドープによる可視光応答型酸化チタンゾルの調製方法を検討した. 有害有機物の分解について,水系のビスフェノールA,水系の1,4-ジオキサン,および気相系のノルマルヘキサンの可視光照射による分解挙動を調査した.比較対象には市販の窒素ドープ酸化チタン(住友化学製)を用いた.ビスフェノールAの分解では,4時間後の分解量で本研究の複合体が50%であるのに対し市販のN-TiO2が45%であった.従って,含まれるTiO2量当たりの分解量は,市販品の3倍以上の性能を示した.一方,同じ水系でも1,4-ジオキサンの分解では,本研究の複合体と市販のN-TiO2は同じ値を示した.従って,TiO2量当たりの分解量は,市販品の2倍程度の性能であった.しかし,紫外光照射下で可視光型でない酸化チタンゾル/粘土複合体の1/5程度の性能でしかなかった.これに対して,気相系でのヘキサンの分解では,4時間後の分解量で本研究の複合体が50%であるのに対し市販のN-TiO2が20%であった.従って,TiO2量当たりの分解量は,市販品の5倍以上の性能であった.従って,本研究の複合体は種々の物質に対して市販のN-TiO2よりも高い性能を示すことが明らかになった. 次に,複合体,アナターゼ型のゾル,およびルチル型のゾルについて,熱処理温度と触媒活性を調査した.その結果,3つの試料とも250℃で分解性能が極大となった.既往の尿素を用いたN-TiO2はメラミン重合物の表面析出で性能が低下するため,400℃以上で熱処理される.本研究の手法では,重縮合時に尿素の加水分解が同時に生じ,窒素源となるイミド基やアミド基が前駆体ゾルに取り込まれるため,メラミン重合物が生じず,低温の熱処理で高い性能を示したと考えられる.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
前年度の懸案事項であった遷移金属型の可視光応答酸化チタンゾルの調製はすでに終えているが,粘土との複合化に関する検討が十分ではないこと.また,実証試験に向けたコーティング試料の作製条件が最適化できていないことを考慮して「やや遅れている」とした. しかし,気相系と水系の両方の評価方法はすでに確立している.また,高圧水銀灯以外にも高出力の白色LED型の光源を複数台作製して,実際の分解実験に利用可能であることから,次年度の評価実験は実証試験と並行して進めることが可能な状況となっている.このため,実際の計画への影響は軽微と考えている.また,ディップコーティングとスピンコーティングの2つの手法によるコーティング試料の調製も進めており,実証試験そのものも当初の予定通りに取り組めると考えている.
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Strategy for Future Research Activity |
遷移金属のドーピングによる界面電荷移動を利用した可視光応答型の酸化チタンゾルと粘土の複合体の作製方法を早急に確立し,さらに遷移金属種を検討することでより高い有機物分解性能を持つ触媒を開発する.分解対象の有機物について,平成24年度には未検討のフェノール,アセトアルデヒド,およびトリメチルアミンについて,有機物分解性能と分解挙動を調査する. 平成24年度の検討結果より,本研究で作製した触媒は工業製品の焼付行程の温度と同じ250℃で高い触媒活性を示すことが明らかになっている.そこで,実証試験に向けた触媒を塗布した試料の作製は,エアスプレー法,ディップコート法,およびスピンコート法でセラミックスタイル表面に噴霧し,電気炉で熱処理して得られる試験体を用いて検討し,最適なプロセスを見い出すことに主眼を置いて実施する. これらの2項目の検討を踏まえて得られた可視光応答型光触媒塗布試料を,実際の太陽光下で自然環境,すなわちビオトープなどの水辺環境,および家畜などの厩舎における周辺環境(気相)での実証を行い,本研究で開発した触媒の実用性についての検証を行う.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
試料合成のための大型機器は平成23年度に,触媒を塗布するための種々の器具は平成24年度に導入済みであるので,主に一般試薬と消耗される器具類の購入が中心になる.また,分析対象物がこれまでよりも増加することから,分析機器のために分離用カラム,溶離液,高圧ガスボンベ等を購入する.これらの物品費として300千円を計上している. さらに,これまで成果を広く公表するために,国内学協会における研究発表に加えて,海外での国際会議での公表(ISIEM2013,フランス)を予定している.国内会議への参加が1~2回,海外での発表が1回計画されており,そのための旅費として300千円を計上した. また,学内,あるいは学外の機器を利用した分析の依頼費用として100千円をその他の費目で計上している.
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Research Products
(3 results)