2011 Fiscal Year Research-status Report
FCC+BCC複相鋼における異相界面を利用した高速変形特性の制御
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23560839
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Research Institution | Kagawa University |
Principal Investigator |
上路 林太郎 香川大学, 工学部, 准教授 (80380145)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
水口 隆 香川大学, 工学部, 助教 (00462515)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 強度 / 高速変形 / 異相境界 / 結晶塑性 / オーステナイト / 鉄鋼材料 / フェライト / 加工熱処理 |
Research Abstract |
二相ステンレス鋼は高強度に加えて優れた耐食性と耐熱性を有しており種々の構造用材として用いられる。一方で構造用材の安全性を考える場合、衝撃荷重下における高速変形を含む力学特性の広範なひずみ速度依存性の把握は必要不可欠である。本研究では、これまでに報告例の少ない二相ステンレス鋼の高速変形挙動の調査を目的とした。1473Kで2時間保持後に水冷した二相ステンレス鋼JIS-SUS329J4L(0.02mass%C-0.4%Si-0.8%Mn-6.7%Ni-24.5%Cr-3.2%Mo-0.16%N)熱延板(板厚 2mm)を用いた。検力ブロック式材料試験機を用いて0.001/sから1000/sの各種ひずみ速度における室温引張試験を行った。また、引張変形前後の組織変化をEBSD等により調査した。EBSD(Electron Back Scattering Diffraction)測定により得られた熱処理材の相分布はαとγの面積率がそれぞれ68.4%、31.6%、各相の平均結晶粒径がそれぞれ21.5μm、9.3μmであった。熱処理材のα粒とγ粒はともに等軸形状を有していた。引張試験の結果、ひずみ速度の増大に伴い、強度が上昇し伸びが低下する傾向が見られた。0.001/sから1000/sまでのひずみ速度の増加に伴う0.2%耐力の上昇量である静動差は330MPaであり、他の単相系鉄鋼材料と比較して大きいことが明らかとなった。さらに引張試験により破断した試験片のEBSD測定を実施した結果、異相界面に大きな局所結晶方位差の存在が確認できた。この結果は、異相界面の存在により変形中に大きな長距離応力場が形成されたことを示唆しており、こうした特徴ある強化メカニズムが大きな静動差を示す理由の一つであると考えられる。また、同様の結果はハッドフィールド鋼と比較することによりマンガン系二相鋼においても確認された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
Mn-Al-Siを有する鋼のFCCとBCC各構成相の熱処理条件(組成と温度)を変化させて、粒径と体積率を統計的に調整すること、および二相ステンレス鋼に関して検力ブロック式材料試験機を用いて、各種ひずみ速度での引張試験を行い、応力ひずみ曲線を測定することが本年度の目的であった。15%Mn-3%Al-3Si鋼に対して、800℃から1100℃までの各種温度、各種時間熱処理した結果、体積率を40%から70%、粒径を5μmから100μm程度まで変化させることが明らかとなった。また、二相ステンレス鋼に関しては、研究実績で述べたように種々のひずみ速度において系統的なデータをえることができ、EBSD測定結果による変形組織の不均一の定量化も実施した。さらに一部の高Mn二相鋼に関しても二相ステンレス鋼と同様の大きな静動差を得ることができることを、計画を前倒しして確認できた。
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画を変更せず、前年度交付申請書に記載した内容を実施する。すなわち、MnーAl-Si系二相鋼の高速変形試験と、二相鋼(二相ステンレス鋼およびMnーAl-Si系二相鋼)の変形組織のEBSDや表面起伏(すべり線)観察などによるキャラクタリゼーションを中心に行う。昨年度の研究において、本課題研究が最も目標とする大きな静動差が、すでに一部のMn-Al-Si系二相鋼においても認められているため、今後はNiやMnといった元素の違いによらない静動差発現メカニズムを異相界面近傍の組織観察を重点的に実施する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究計画を変更せず、研究計画は、消耗品を中心とする物品費と国内学会発表のための旅費に充てる。
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Research Products
(6 results)