2012 Fiscal Year Research-status Report
FCC+BCC複相鋼における異相界面を利用した高速変形特性の制御
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23560839
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
上路 林太郎 大阪大学, 接合科学研究所, 准教授 (80380145)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
水口 隆 香川大学, 工学部, 助教 (00462515)
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Keywords | 強度 / 高速変形 / 異相境界 / 結晶塑性 / オーステナイト / 鉄鋼材料 / フェライト / 加工熱処理 |
Research Abstract |
本研究では、これまでに報告例の少ないフェライト+オーステナイト二相鋼の高速変形挙動の調査を目的としている。昨年度に引き続いて用いた二相ステンレス鋼とHadfield鋼に対して、検力ブロック式材料試験機を用いて、同一の試験機系を用いて、0.001/sから1000/sまでの各種ひずみ速度での引張試験を行い、応力ひずみ曲線を測定した。調査したひずみ速度範囲において、各試料の0.2%耐力はひずみ速度の対数の1次関数的に増大した。低速で各種温度での変形も調査した。各種条件で変形させた試料に対してEBSDを用い、多結晶体の個々の結晶粒の方位を測定した。ひずみの増大とともにフェライト部およびオーステナイト部の局所方位差が単調に増大することが確認できた。0.001/s試験材における方位差の増大速度はオーステナイトの方が大きく、真ひずみ0.27を与えて破断した試料内のオーステナイト、フェライトにはそれぞれ0.45deg.、0.2deg.の測定値を得た。同様の関係は高速変形材でも確認された。すなわち、少なくともSUS329J4Lの場合、局所方位差の発達には、ひずみ速度の変化は大きな影響を及ぼさないことが明らかとなった。異相境界近傍で予想される種々のすべり系の活動を定量的に評価するため、異相境界から1μm以内にある領域のみの測定データを抽出して局所結晶方位差(隣接測定点間の方位差)を評価した。その結果、測定領域全体から得られたデータと比較して、フェライト部とオーステナイト部の両相におい0.2deg.程度大きな値を示した。さらに高速変形に伴い、これらの局所方位差の差異は大きくなることが明らかとなった。オーステナイト部の変形挙動を明らかにするために実施した準安定高マンガン鋼の試験も行い、εマルテンサイト変態の生成も前駆過程として発達する局所方位差と密接な関係があることを見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
二相鋼を用いて、各種変形条件における異相境界近傍の優先的な塑性変形挙動の解明を行うことが本年度の目的であった。局所方位差の発達が結晶構造に依らずびずみの増大に伴ない単調に増大すること、および、EBSD測定データを異相境界近傍部のみを抽出して解析を行った結果、異相境界近傍部では粒内部よりも大きな局所方位差を有することが明らかになるなど、当初目的を定量的な評価により達成することが出来た。加えて、当初予定に無い準安定オーステナイト系の検討も実施し、動的マルテンサイト変態の生成の前駆過程においても局所方位差が有用なパラメーターであることを明らかするなどし、本研究の対象を準安定オーステナイト系にまで拡大できる目途を立てることが出来た。
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画を変更せず、前年度交付申請書に記載した内容を実施する。すなわち、これまで得られた二相鋼の変形組織のEBSDなどによるキャラクタリゼーション結果を踏まえ静動差発現メカニズムの解明を重点的に実施する。加えて、二相鋼における高速変形時の良好な延性を明らかにするために、オーステナイト鋼の高速時の延性と組織の関係を調査する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
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Research Products
(8 results)