2012 Fiscal Year Research-status Report
粉末焼結超合金の高温強度に及ぼす旧粒子界面に残存する酸化皮膜の影響
Project/Area Number |
23560844
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
筧 幸次 首都大学東京, 理工学研究科, 准教授 (70185726)
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Keywords | 焼結合金 / 超耐熱合金 / HIP / PPB / 航空機エンジン |
Research Abstract |
近年,民間航空機エンジン用ディスク材料として,Rene95, RR1000等の粉末焼結超合金が適用されつつある.その理由としては,ニッケル基超合金のような高価な材料においては,ニアネット成形による材料の歩留まり低減がHIP等の加工費を差し引いてもなお効果的であること,さらに,粉末製造技術の向上により,溶解鍛造材等の製品を上回る機械特性が得られるようになってきていることが挙げられる.本研究では,航空機エンジン耐熱合金として,広く使用されている超合金718の結晶粒微細化を目的に,ガスアトマイズ合金粉末について,δ-subsolvus温度でHIP処理を施し,その特性について評価し,微視組織との関係について検討を行い以下の結果を得た. (1)HIP温度980℃は一般的なInconel 718のHIP温度1180℃に比べかなり低い温度であったが,焼結材は溶解鍛造材と同等の密度を得られた.(2)製作したP/M 718は析出相subsolvus温度980℃でHIP処理することで微細粒(1.9 μm)を得ることが出来た.As-HIPの平均粒径は溶解鍛造材(9.5 μm)と比較して約1/5となった.(3)HIP材の組織にはPPBが残存しており,PPB内部では周囲と比較して大きな結晶粒が観察された.(4)溶体化処理温度1045℃では粒界に析出していた析出相が固溶することで結晶粒が粗大化した.(5)溶解鍛造材に比べHIP材(SHT980)は細粒であるため30%高い耐力を示したが,PPBでの割れのため延性が若干低くなった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
PM材では,異物混入防止のための高度な品質管理が必要とされるが,粉末の製造過程で混入するPPB(Prior Particle Boundary)という粉末表面の酸化皮膜の残存層が材料の延性を著しく劣化させ,重要な課題となっている.subsolvus温度でHIP したInconel 718について,PPBが組織と特性に及ぼす影響を明らかにした.
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Strategy for Future Research Activity |
以下のPBの影響を低減させる方法について検討する. (1) 粉末粒子製造過程で低減させるプラズマ回転電極法(PREP: Plasma Rrotating Electrode Process):,供試合金は,高純度不活性ガス環境下で回転する電極が高温プラズマによって溶解され,液滴として電極表面から遠心力によって吹き飛ばされ,さらに電極の周辺に配置されているガス・ノズルから噴出するガスジェットの空気力学的引張力によって第2 次的な粉砕によって微粉化される.この方法では,ガスアトマイズ法に比べて酸素によるコンタミの回避が可能で高品位粉末が製造できる. (2) 粉末粒子製造後に,プラズマ還元雰囲気中で酸素を取り除くプラズマ液滴精錬:原料粉末が高温プラズマ高温域で溶滴となり,不純物蒸発と発生するH+によって還元される液滴精錬である.タングステン粉では,酸素量を5414 ppmから213 ppmへと約1/25にまで劇的に低減できる実績があるが,超合金に関する研究実績はない. (3) 焼結中に粉砕するResistance Heated Pressing (RHP) :圧粉体に通電し抵抗の大きい粒子界面酸化物等で発生するジュール熱により,プレスしながら焼結するプロセスである.PPBが発熱源となるため,PPBが破砕される可能性がある. (4) 焼結後に粉砕する恒温鍛造:HIP後,塑性変形によりPPBを粉砕する.ガスアトマイズ粉の場合,粉末製造過程でのPPB量の低減が困難であり,HIP後,鍛造が必要となる.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
24年度予算では,予定とおり執行したが端数残金が生じた.25年度予算と24年度端数残金を合わせて,PPBの影響を低減させる以下の方法について検討する. (1) 粉末粒子製造過程で低減させるプラズマ回転電極法(PREP: Plasma Rrotating Electrode Process) (2) 粉末粒子製造後に,プラズマ還元雰囲気中で酸素を取り除くプラズマ液滴精錬 (3) 焼結中に粉砕するResistance Heated Pressing (RHP) (4) 焼結後に粉砕する恒温鍛造
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