2011 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23560850
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Research Institution | National Institute for Materials Science |
Principal Investigator |
阿部 太一 独立行政法人物質・材料研究機構, 理論計算科学ユニット, 主幹研究員 (50354155)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | カルファド法 / 計算状態図 / 複合窒化物 |
Research Abstract |
平成23年度の研究実績に関して以下2点に分けて概説する。1)第一原理手法を用いたB1-MX相、Z相の熱力学量の理論計算を広範な合金系に対して行った。対象とした合金系は、4,5,6,7族元素を中心とした遷移金属元素の複合窒化物である。その結果、これまで実験から予測されていたように、種々のZ相のなかでも、Ta系のZ相の生成エネルギーが特に負で大きい値を持つことが明らかとなった。この結果は、Ta系のZ相は他のZ相よりも安定であり、Fe基合金中の弱化因子としてのZ相ではなく、強化因子(安定化合物)としてZ相を積極的に利用できる可能性を強く示唆するものである。さらに、これらMX,Z相に加えて、Fe合金中にはその他にも種々の炭化物・窒化物が析出するが、特に熱力学データが不足している化合物について熱力学データの再検討を進め、生成エネルギーの理論計算が必要な系の選定を開始した。2)熱力学計算に関しては、FactSage用の熱力学データベースを購入したことで、現在広範に用いられている各熱力学データベースを整備することができた。これにより、平成24年度から行うカルファド法による熱力学計算に必要な環境を整えることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
一時期コンピューターの利用が制限されるなど(震災による影響)、上半期における理論計算の進捗は思わしくなかったが、おおむね目標としていたMX、Z相の生成エネルギーを求めることができた。また、データベースの購入で、24年度からのカルファド法への展開の道筋もつけることができた。したがって、現在のところ本研究課題はおおむね順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度で行った各化合物相の理論計算と実験データを用いてカルファド法による熱力学アセスメントを行い、実際にそれら化合物が問題となる温度域におけるZ相やMX相のギブスエネルギーを決定する(有限温度域への拡張を図る)。化合物の電子状態の詳細な解析は引き続きKocerと協力して行う。また、澤田、戸田両氏との連係を密にして、最新の実験データが得られている場合(安定化合物組成、析出量、マトリックス組成など)には、熱力学計算へフィードバックしながら検討を進める。さらに、MX、Z相に加えて、そのほかのFe基合金中に析出する化合物についても、その必要性・重用性の検討を加える。これまでに得られた成果を取りまとめ広く発表を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
昨年度に引き続き、必用なソフトウェアの購入(+必要なハードウェアの購入)に充当する。加えて、23年度に得られた成果を広く発表するため、会議参加費や旅費などに用いる。
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