2012 Fiscal Year Research-status Report
透過電子顕微鏡その場インデンテーションによる粒界強化機構の解析
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23560852
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Research Institution | National Institute for Materials Science |
Principal Investigator |
大村 孝仁 独立行政法人物質・材料研究機構, その他部局等, 研究員 (40343884)
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Keywords | ナノインデンテーション / 転位 / 粒界 / TEM / 力学特性 / 結晶粒微細化強化 |
Research Abstract |
前年度に引き続き、Fe-3mass%Si双結晶([110]回転軸51対称傾角粒界, 方位差角約23°)を用いた局所力学解析を行った。前年度実績において明らかにした粒界と転位の特異な相互作用をさらに理解するため、マトリクス内における転位運動と力学応答との関係について調べた。 bcc結晶中の転位の易動度については、刃状転位に対してらせん転位が相対的に低いことが指摘されているが、外力との関係については不明な点が多い。Fe-3mass%Si単結晶に対して、TEM in-situ変形観察を行ったところ、刃状転位が支配的に運動する変形挙動と、らせん転位が支配的に運度する挙動を明確に区別することができた。刃状転位が支配的なケースでは、試料幅約200nmを貫通する刃状転位が極めて高速度で運度する様子が観察された。一方、らせん転位が支配的なケースでは、運動速度が低い転位線が狭い間隔で分布し、粘性的に運動する様子が観察された。これら2つのケースに対応する変形応力を比較すると、刃状転位のケースがらせん転位のケースよりも低いことが定量的に示された。これらの結果は、これまで教科書的に理解されてきたbcc結晶における転位易動度と流動応力の関係を定量的に示した重要な証拠である。粒界における転位反応では、すべり面を移行する交差すべりが素過程の一つとして考えられる。交差すべりはらせん転位のみが可能であるため、刃状転位とらせん転位の易動度の差がらせん成分の長さに深く関係すると考えられ、これが交差すべりの頻度に影響すると推論されることから、転位の性格を考慮した粒界近傍の挙動を考慮することが重要であると考察した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
H23年度までに明確化した本研究手法の適用性をさらに展開するアプローチとして、粒内の転位運動や塑性変形開始挙動の解析が重要であり、転位の性格、粒界の働きを多面的に捉えて、転位-粒界相互作用を総合的に捉えることの重要性が示された。本研究におけるTEM in-situ変形観察の手法は、従来の転位組織の観察だけの手法に対して、力学応答が同時に計測できる点がアドバンテージであり、転位挙動と流動応力の関係を直接的に評価できる手法として有効であることが示された。今後は、粒界条件の異なる材料に対する展開が必要であり、解析手法に加えて、試料条件の最適化が課題である。
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Strategy for Future Research Activity |
H24年度までに確立した解析手法を種々の材料・試料に展開し、転位-粒界相互作用の解明を通じて、結晶粒微細化強化のメカニズム解明を目指す。具体的には、結晶方位、粒界偏析元素などの条件が異なる試料を用いて、これらの幾何学的界面条件や冶金学的界面因子が転位-粒界相互作用に及ぼす影響を明確化する。これによって、Hall-Petch係数などの物理的意味を明確にし、結晶粒微細化強化の素過程を明らかにする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
実験消耗品としては、ナノインデンテーション用およびTEM in-situ実験用のダイヤモンド圧子を計上する。消耗品としての単価は高額であるが、本研究における手法の心臓部であり、十分な予算が必要である。また、試料調整用の消耗品として、切断砥石や研磨紙、研磨砥粒、薬品類などを計上する。また、研究成果の公表手段として、国内外の会議参加費、旅費、論文投稿費などを計上する。
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