2013 Fiscal Year Annual Research Report
透過電子顕微鏡その場インデンテーションによる粒界強化機構の解析
Project/Area Number |
23560852
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Research Institution | National Institute for Materials Science |
Principal Investigator |
大村 孝仁 独立行政法人物質・材料研究機構, その他部局等, その他 (40343884)
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Keywords | ナノインデンテーション / 転位 / 粒界 / TEM / 力学特性 / 結晶粒微細化強化 |
Research Abstract |
前年度までに行ったFe-Siにおける転位挙動の解析をさらに発展させて、転位運動およびその組織の発達と力学応答の関係解明を行った。粒界における転位反応として重要な交差すべり挙動を明確化するため、らせん転位の挙動に注目する必要がある。さらに、BCCでは易動度の違いかららせん転位の挙動が支配的になるので、この点においてもらせん転位の解析は重要である。 BCC結晶中では、らせん転位の移動度が刃状転位よりも低いこととそれに起因して変形応力が高くなることを前年度の成果で示した。しかし、前年度の条件では、変形の進行に伴う転位密度変化が小さい条件での結果であり、実際のバルク材料では転位組織の発達による密度増加が発生する。外力によるひずみ速度一定条件の変形では、ひずみ速度に釣り合う条件因子として転位の移動速度の他に密度が重要である。試料条件を単純化するために、初期転位密度が低いIF鋼を用いたTEMその場変形観察を行った。TEM観察と同時に得られた応力-ひずみ曲線上には降伏点が明確に発現し、その後、流動応力は低下する傾向を示した。転位組織は、らせん転位が支配的で、降伏まではわずかに転位密度が上昇し、降伏後は密度の上昇速度が高くなった。力学応答と転位組織の発達の関係を整理すると、降伏前は転位密度が低いために塑性変形でひずみを担うことができず、弾性変形が支配的になって応力も上昇するが、降伏後は転位密度の上昇に伴って移動速度が低くても変形が進行する条件に移行し、流動応力の低下につながったと考えられる。転位密度と流動応力の定量的な関係は、Johnston Gilmanモデルで定式化される挙動に良く合うことがわかった。これらの挙動は、粒界における粒界-転位相互作用において、変形伝播のみならず、粒界転位源による転位密度変化を理解することも重要であることを示唆している。
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