2012 Fiscal Year Research-status Report
Ti基化合物分散型ブロンズを適用した高性能Nb3Sn超伝導線材の開発
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23560854
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Research Institution | National Institute for Materials Science |
Principal Investigator |
菊池 章弘 独立行政法人物質・材料研究機構, その他部局等, 主幹研究員 (50343877)
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Keywords | Nb3Sn / ブロンズ / 高Sn濃度 / Ti添加 / 多芯線材 / 冷間加工性 |
Research Abstract |
本年度は、昨年度に開発した新しい高Sn濃度ブロンズを用いて、多芯線材の試作を行った。18.5mass%ものSn濃度は、Nb3Sn線材用のブロンズ原料として世界最高である。まず第一段階として、実験室レベルの228芯線材の作製を試みた。量産されているブロンズ法Nb3Sn線材の製造工程と同様に、熱間押出、冷間伸線、中間焼鈍を経て作製したが、特に問題もなく無断線で加工することができた。228芯線材では、線材外径が0.7mmのとき、フィラメント径は約16ミクロンとなるが、ブロンズマトリックスのCuSnTi化合物は1ミクロン未満まで微細に分散していた。この結果を踏まえて、第二段階として、ITER(国際熱核融合実験炉)で使用される線材と同じ断面構造で設計し、初期ブロンズビレットの外径が約55mmの中規模の線材試作を実施した。この線材の芯数は11,077芯となり、線材外径が0.8mmのとき、フィラメント径は2-3ミクロンとなる。伸線加工が進むに従って、断線が発生した。断線部の組織観察を実施したところ、フィラメントのまわりに数ミクロン角のブロック状のNb3Snが生成しており、これがNbフィラメントを異常変形させて、断線が起きていることが判明した。これらブロック状のNb3Snは、熱間押出後に既に生成していた。そこで、再度、押出温度を低く設定して試作を行ったところ、ブロック状のNb3Snは生成せず、断線を抑制して外径0.8mmの11,077芯線材を作製することに成功した。ITER向けの線材は、従来ブロンズ(16mass%Sn)を原料としても作製することが難しいとされている。本年度の研究で、難しい断面構造の線材試作を実証することができ、本研究で開発している新しい高Sn濃度ブロンズが、実用上、非常に有望であることが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
交付申請書に記載した計画通りに進展している。 ITER(国際熱核融合実験炉)向けの線材は、従来ブロンズ(16mass%Sn)を原料としても作製することが難しいとされている。本年度の研究で、難しい断面構造の線材試作を実証することができ、本研究で開発している新しい高Sn濃度ブロンズが、実用上、非常に有望であることが示された。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の研究計画に変更はなく、今後の研究の推進方策は以下になる。 試作した線材で最大限に性能を高められる熱処理条件を調査し、微視的組織と超伝導特性の関係を明らかにして、特性改善の裏付けとなる材料科学的知見を獲得する。 (1)高磁場下での臨界電流密度の評価:28Tハイブリッドマグネットや18T超伝導マグネットを使用して、液体ヘリウム中(4.2K)での臨界電流密度(Jc)の磁場依存性を評価する。 (2)微視的組織の評価:試作線材断面の詳細な組織観察を、SEM、TEM、EPMAを活用して実施する。 (3)総括:平成23年度から最終年度で得られた知見を総括し、体系的にまとめ上げる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
400ton静水圧押出加工費、熱間鍛錬加工費等の外注加工費として主に使用する。50万円を超える備品の購入予定はない。
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