2013 Fiscal Year Research-status Report
Ti基化合物分散型ブロンズを適用した高性能Nb3Sn超伝導線材の開発
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23560854
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Research Institution | National Institute for Materials Science |
Principal Investigator |
菊池 章弘 独立行政法人物質・材料研究機構, その他部局等, 主席研究員 (50343877)
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Keywords | Nb3Sn / ブロンズ / 高Sn濃度 / Ti添加 / 多芯線材 / 冷間加工性 |
Research Abstract |
本年度は、昨年度に試作した新しい高Sn濃度ブロンズ多芯線材を熱処理して、線材断面の微視的組織の変化について調査した。試作した新ブロンズ線材は、線材外径が0.8 mm、Nbフィラメントの数は11,077本、Nbフィラメントの直径は2-3µmである。これは、現在、フランスのカダラッシュで建設中のITER(国際熱核融合実験炉)で使用されるNb3Sn線材(ITER線材)と同様な断面構造である。ITER線材のブロンズのSn濃度は15.5 mass%Snで、その組織はわずかなCuSnTi化合物粒子を含むα相(fcc)が主たる相となっている。一方、本研究の新しいブロンズは、Sn濃度は18.5mass%と格段に高く、α相をマトリックスとして多数のCuSnTi化合物微粒子が分散した組織を呈している。新ブロンズ線材とITER線材を真空中で熱処理して組織を比較した。熱処理温度は625℃、650℃、675℃の3種類とし、熱処理時間は10 h、20 h、40 h、80 h、120 h、160 h、200 h、240 hの8種類とした。熱処理によりブロンズ中のSnとNbフィラメントが反応するが、熱処理の進行とともにNbフィラメントの周囲にNb3Sn相が生成する一方で、ブロンズマトリックスのSn濃度は徐々に低下していき、熱処理の完了時のマトリックスのSn濃度は1 mass%未満となる。ITER線材と新ブロンズ線材のマトリックスのSn濃度を比較すると、新ブロンズ線材は著しく早くSn濃度が低下することが明らかになった。ITER線材のマトリックスのSn濃度が1 mass%未満になるには、例えば、625℃では200 h以上の長時間の熱処理が必要だが、新ブロンズ線材では80 hで0.7 mass%まで低下した。新ブロンズ線材では、拡散反応が劇的に促進している興味深い知見を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成25年度は、28 Tハイブリッドマグネットを使用して、試作した多芯線材の4.2 Kにおける上部臨界磁場等の測定を行う予定であったが、液体ヘリウムの供給難と電力事情により、28 Tハイブリッドマグネットの運転が行われなかったため、計画を変更し、線材断面の組織観察を優先して行った。上部臨界磁場等の測定等が残されたが、それらは期間延長が認められた平成26年度に実施する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
試作した多芯線材の熱処理条件をさらに調査し、微視的組織と超伝導特性の関係を明らかにする。 (1)高磁場下での超伝導特性の評価:28 Tハイブリッドマグネットを使用した液体ヘリウム中(4.2 K)での上部臨界磁場(Bc2)及び臨界電流密度(Jc)を評価する。 (2)微視的組織の評価:試作線材断面の組織観察を、SEMやEPMAにより実施する。 (3)総括:平成23年度から最終年度(平成26年度)で得られた知見を総括し、体系的にまとめ上げる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度は、28 Tハイブリッドマグネットを使用して、試作した多芯線材の4.2 Kにおける上部臨界磁場等の測定を行う予定であったが、液体ヘリウムの供給難と電力事情により、28 Tハイブリッドマグネットの運転が行われなかったため、計画を変更し、線材断面の組織観察を優先して行ったため、未使用額が生じた。 28 Tハイブリッドマグネットを使用した特性評価にかかる経費、並びに組織観察や熱処理等に関わる消耗品費として使用する計画である。
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Research Products
(1 results)