2011 Fiscal Year Research-status Report
機能集積ハイドロゲル素子作製のためのナノ・マイクロ加工プロセス
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23560856
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
島本 直伸 北海道大学, 電子科学研究所, 特任准教授 (50386629)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | ハイドロゲル / 微細加工 / ナノ・マイクロ / 複合材料 |
Research Abstract |
本研究の目的は、ウエット&フレキシブル材料としてデバイス等への応用が期待されているハイドロゲル材料に対し、新規の微細加工方法を開発することによりこれまで実現不可能であったハイドロゲルを利用したナノ・マイクロシステムを構築することである。当該年度では、まずハイドロゲル上で電気や光学的な機能のインターフェースとなる金属の接合プロセスについて研究を行った。その結果として、真空蒸着で作製した金(Au)薄膜を安定にポリアクリル酸等のハイドロゲルへ転写接合を行う方法の確立に成功した。この方法は、有機物質とAuとの結合の従来技術であるAu-チオール基による結合による原理とは全く異なっており、Au以外に、白金、アルミニウム、鉄などの金属でも接合できることから、広く有機高分子の重合体と金属の接合法として重要と考え、特許出願を行った。(特願2011-198897) また、フォトリソグラフィによりSiやガラス上に作製したAu薄膜マイクロパターンもハイドロゲル上に転写接合ができることを確認できた。これによりハイドロゲルを利用したマイクロデバイス作製のための基本プロセス技術を構築された。このように作製された金属とハイドロゲルの接合性は極め良好で、薄膜ではアクチュエーションの原理であるハイドロゲルの膨潤・収縮の体積変化にも剥離せずに追従して動くことが分かった。このことからAuマイクロパターンをハイドロゲル上に作製することで、膨潤・収縮過程による変形をリアルタイムに計測する原理を考案し、実証することができた。これは、ハイドロゲルがナノスケール、サブミリ秒スケールといった精密素子を構築する材料としての可能性を示すと同時に、ハイドロゲルではこれまで未知であった詳細な体積変形現象を詳細に観察できる基礎科学的な重要性も示している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究の初年度において、ハイドロゲル上へ微細パターンを形成するプロセスの原型を完成させたことでは、本研究は順調に進捗しているといえる。既存のリソグラフィや蒸着法による微細パターンの形成技術を利用しつつ、ナノ・マイクロ微細加工の困難な材料系であるハイドロゲル上に容易にパターン形成できることを示せたので、今後のさまざまな応用的な研究の展開の可能性が広げることができた。また、利用するハイドロゲルに関しても、比較的重合や取扱いが容易なポリアクリル酸等で実行できることから、研究を実行し易い材料系の選定が可能であった。ハイドロゲル上に作製したマイクロパターンを利用したハイドロゲルの膨潤・収縮計測法などは、精密な変形センサー素子などへ応用を達成するための最初の段階を達成できたと言える。ハイドロゲルの膨潤・収縮による体積変形はこの材料のアクチュエーションの原理として最も注目されている特性であり、この変形過程を詳細に調べ知見が得られる新たな基礎研究の方法としても提示できた。しかしながら、ハイドロゲルと金属間の接着の原理や接合状態等の基礎化学的な検討ができていないことが現状である。これについては、今後とも高分子化学の研究者などとの研究交流を通して検討し、理解し、実験検証を行ってゆく必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度までにハイドロゲルへのマイクロメートルスケールの微細パターンの作製法を確立した。次年度からは主にナノメートルスケールでの微細パターンの転写接合を試みる。これは、マイクロからナノへ単純に微細化を進めるということではなく、光波長と同程度構造体での対光の相互作用やナノドット金属による表面電場特性などのナノメートルスケール固有の物理現象をゲル上に作製した微細パターンで実現することに目的を持っている。ナノスケールの構造体をハイドロゲル上構築できれば、ハイドロゲルの体積変化特性を利用しナノ構造体をさらにナノスケールで変形制御できることになる。これにより新規物性やナノスケールでの現象を連続的に変化させることができると予想できる。これらは、フレキシブルなナノ機能素子やナノデバイスの原理となる。まずは、可視光域である数100nmスケールの周期構造の構築と光学特性の測定から開始しようと構想している。その計測では、これまでレーザ回折を利用した変形計測だけでなく、微小領域な吸収スペクトルなどの特殊な方法が必要になってくると考えられるが、光学系の研究者とディスカッションをして検討することを計画している。また、学会・論文などで研究発表を行い、本研究の研究成果を広く公表し、共同研究や応用研究を展開して行く。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
今年度の研究において考案し実証したマイクロパターン接合ハイドロゲルの膨潤・収縮による体積変化過程の高精度計測に関して、計測に用いるレーザースポットの解析用に新規に画像解析ソフトウエアの購入を行う。本ソフトウエアの導入により計測精度と研究効率を向上させることにより研究をより進展させることができると考えている。さらに、次年度で進めるハイドロゲル上に接合したナノスケール構造体の評価にも欠かせないツールである。購入費の一部には、本年度の研究費の執行残を使用する予定である。次年度の微細構造作製では、主に、ハイドロゲル上へ転写接合を行う微細金属薄膜パターンの加工をナノメートルスケールで行うため、電子線描画装置等のより高精度の加工装置の利用が必要となる。そのため、微細加工のための施設・装置を利用するための費用が今年度より以上に必要になってくると想定される。費用・時間・実行効率を考慮して研究費を出資して行う予定である。利用が必須となる代表的な実験装置としては、ナノスケール転写パターンの原型作製のための電子線リソグラフィ装置が挙げられ、本装置利用のための装置利用費や出張費等が必要となる。
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Research Products
(4 results)
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[Presentation] Fabrication of metal thin film patterns on hydro-gels2011
Author(s)
Naonobu Shimamoto, Hideyuki Mitomo, Ryuzo Kawamura, Kuniaki Kawabata, Ryo-ichi Kishi, Ken-ichi Sano, Kunihiro Ijiro, Yoshihito Osada
Organizer
24th International Microprocesses and Nanotechnology Conference
Place of Presentation
ANA Hotel Kyoto, Kyoto, Japan
Year and Date
2011年10月26日
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