2012 Fiscal Year Research-status Report
亜鉛めっき鋼板の端面腐食機構解明とマルチフィジックス解析による高度防食技術の確立
Project/Area Number |
23560861
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
多田 英司 東京工業大学, 理工学研究科, 准教授 (40302260)
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Keywords | マイクロ電気化学 / 数値シミュレーション / 腐食生成物 / カソード反応 / イオン分布 / 電位分布 / 電流分布 / ガルバニ腐食 |
Research Abstract |
本研究の目的は,(1)亜鉛系表面処理鋼板の端面腐食過程を詳細に測定し,その機構を解明すること,(2)マルチフィジックスシミュレーションを端面腐食機構の解析に適用し,精緻な端面腐食モデルを構築すること,(3)亜鉛系表面処理鋼板の端面腐食を抑制する新規かつ高度な防食技術を確立することである. 本年度においては,端面腐食を模擬するガルバニ腐食系に適用し,亜鉛系腐食生成物の保護作用についてカソード還元反応挙動から調査した.特に,腐食生成物の堆積状況や組成が異なる状態でのカソード反応特性を評価した.得られた成果は大きく分けて二つある.その一つは亜鉛腐食堆積量の違いが端面腐食のカソード反応の大きさに影響していることである.端面腐食を模擬した腐食対を塩化ナトリウム溶液中で腐食試験し,鋼板上に腐食生成物の堆積状態が異なる部分を準備した.それらの表面でのカソード反応を分極挙動より評価した結果,比較的厚い亜鉛腐食生成物が均一に堆積している部分では,腐食生成物の堆積が少ない部分と比べると,溶存酸素還元の拡散限界電流が約1/4となっており,亜鉛腐食生成物の厚さに応じてカソード反応が抑制されることが示された.ただし,水分解反応の開始電位が亜鉛腐食生成物の堆積が多い部分においてより卑な電位にあり,腐食生成物のバリヤー効果に加え反応活性にも影響している可能性があることがわかった.もう一つの成果は腐食生成物の組成がカソード反応速度に影響していることを明らかにしたことである.塩化マグネシウム水溶液中で腐食対を浸漬し,組成と堆積状況の異なる亜鉛腐食生成物を鋼板上に作製した.すなわち,亜鉛腐食生成物と亜鉛とマグネシウムからなる腐食生成物を鋼板上に形成した.これらの表面においてカソード電流の大きさは,後者の方が約1/3となっており,マグネシウムを含む亜鉛の腐食生成物のカソード反応が抑制されることを明らかした.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の計画は,昨年度構築した装置性能の向上と端面腐食系の電気化学データの集積,マルチフィジックスシミュレーションの準備であった.始めに,昨年度作製した電気化学プローブシステムの性能向上に努めた.この結果,表面観察および電気化学信号の安定測定ができるようになり,システムがよりいっそう使いやすくなった.このシステムを用い,亜鉛めっき鋼板端面部の模擬試料である亜鉛/鋼板対の腐食過程で形成した腐食生成物の特性について測定した.特に,本年度予定していた濃度およびアニオン種が異なる溶液中において堆積した腐食生成物表面での分極特性を評価できた.また,電気化学特性データを利用して,静電場-イオン輸送-化学反応を連成した端面腐食過程のマルチフィジックス解析の予備試験を実施した.以上から当初の計画をほぼ実施できており,研究が順調に進展している.
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Strategy for Future Research Activity |
次年度が本研究の最終年度になっている.これまで構築したシステムを用いて,亜鉛めっき鋼板の端面腐食系で得られる電気化学データを種々様々な腐食条件で集積する.また,端面腐食機構のモデルを構築し,集積した電気化学データを用いて腐食モデルの妥当性をマルチフィジックス解析により検討し,実際の腐食状況と比較する.これらの研究により端面腐食機構を解明し,亜鉛めっき鋼板の端面腐食を可能な限り抑制できる亜鉛系めっき鋼板の開発に利用できる高度かつ新規な防食設計指針を提案する.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
これまで測定解析システムの購入および整備はほぼ完了している.また,本年度の研究費に残額が生じたのは消耗品等を無駄なく丁寧に利用し,効率的に実験を実施できたためである.次年度の研究経費は,実験消耗品の購入と最新の研究状況調査および成果発表に利用する.
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