2011 Fiscal Year Research-status Report
マイクロ構造体粉末プロセスのための焼結変形-組織形成ハイブリッド解析法の開発
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23560869
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Research Institution | Kagawa University |
Principal Investigator |
品川 一成 香川大学, 工学部, 教授 (30215983)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 材料加工・処理 / 機械材料・材料力学 / 数値解析 |
Research Abstract |
焼結部品が小型化すれば,寸法精度,焼結欠陥は個々の粉末粒子の変形と粒界移動に直接的な影響を受けるようになる.本研究ではこのようなマイクロ構造体における焼結変形と組織形成を予測するために,個別要素法とフェーズフィールド法との連成解析手法を確立することを目的としている.今年度は粉末成形体の焼結過程における収縮変形,粒成長,拡散等の素過程をシミュレートするための基礎的な手法の確立を目指し,粒子の剛体運動と焼結を結びつける焼結モデル,異方性粒子の発達や構成元素の拡散を計算するルーチン等,要素技術の導入を行った.また,収縮変形,組織変化のシミュレーション結果の妥当性検証のための焼成実験を始めた.1.焼結モデル:フェーズフィールド法において計算される界面(表面)のプロファイルより,粉末粒子のペアに作用する焼結力を算出する手法を構築し,個別要素法に導入した.この結果,粒成長による粉末粒子の形状変化を,個別要素法における収縮変形の計算に反映させることができるようになった.2.異方粒成長:フェーズフィールド法において界面エネルギーの異方性およびそれによる界面易動度の低下のモデルを導入した.この結果,異方性粒子の選択的粗大化を再現できるようになった.3.構成元素の拡散:有限要素法を用い,2粒子間に液相が生じた場合のユニットセルモデルを開発し,ぬれ角を与えた際の焼結力を計算可能にするとともに,液相柱の形状を計算できるようにした.この結果を利用して拡散過程の解析を行うサブルーチンを作成し,液相柱内部の物質移動が計算できるようになった.4.焼成実験:Ni粉末の薄膜について,焼成実験を開始した.形状,粒子径の異なる粉末粒子3種類を用い,粉末成形体の焼結前と加熱後の組織をFE-SEM/EBSD法により観察した.その結果,粉末粒子における結晶学的な構造変化のデータを収集できた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
焼結過程の解析の要素技術に関しては,焼結モデル,異方粒成長,構成元素の拡散について,それぞれ基本的な計算手法を開発できた.それぞれの成果については,次年度,学会発表を行う予定である.計算パラメータを大きく変えてシミュレーションを行ったわけではないので,計算結果の妥当性の検証は未だ十分でないが,基礎データの蓄積,モデルの修正は当初より2年計画であり,おおむね順調に伸展していると言える. 一方,東日本大震災の影響で助成金の全額交付が遅れたため,申請していた振動式自動研磨機の発注,納入が遅れた.そのため,実験データの収集に関しては当初の計画通りにはいかず,高精度な研磨を施した試料を用いたFE-SEM/EBSD法による観察が十分出来ていない.しかしながら,通常の研磨を行った試料を用いても,粉末,焼結体の結晶学的な構造変化をある程度示す画像を得ることができたので,次年度の実験成果につなげる足がかりとなった.この意味で,焼成実験に対してもおおむね順調に伸展していると言える.
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Strategy for Future Research Activity |
焼結の素過程を再現するために開発した各手法について,計算パラメータを変えたシミュレーションを続け,基礎理論との比較検討や適用範囲の確認を行う.また,焼成実験によるデータ収集を続け,計算と実験の比較を行うことで,計算結果の妥当性を検証する.必要に応じ,モデルの改良や要素技術の追加を行う.1.緻密化と粒成長:多結晶からなる粉末と,単結晶からなる粉末について,粒成長のシミュレーションを行う.粒界面積が拡大するようには粒界移動が起きないため,同程度の大きさの単結晶粒子同士の間にある粒界は,容易には移動しないと考えられている.一方,多結晶からなる粒子同士では,粒子内部で粒成長が起きるため,単結晶化が可能と見られる.これらの基本的な考えをシミュレーションで再現できることを確認すると共に,実験結果と矛盾がないことを検証する.2.拡散と緻密化:ユニットセルモデルにより2粒子間に生じた液相柱内での拡散と,溶解,析出を伴いながらの剛体運動を計算できるようにする.2粒子の大きさに差がある場合,大きな粒子から小さな粒子に向かって物質移動が生じる.粒子表面の形状は溶解析出により凹凸が出来るため,体積一定の条件の下,再び有限要素解析により液相柱の形状を更新し,次のステップの拡散の計算を行えるようにする.これにより粒子径の差や液相量,拡散速度を変えた場合の焼結力への影響を調査し,整理する.3.収縮変形(焼結モデル):薄膜における収縮,そりなどの変形挙動が定量的にも予測できるかどうか,検証する.まずは等サイズの粒子からなる単純配列について既存のモデルと比較し,ネック径や接近速度を評価する.次に,非対称な配列で粒度分布がある場合の焼結についてシミュレーションを行い,実験結果と比較検討する.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度使用額が生じた理由は以下のようである.年度末に冷間等方静水圧プレスの消耗品の劣化が予想されたが,メンテナンスには時間がかかり,卒業研究終了間際の実験の空白期間は避けたいため,発注を次年度当初に行うことにした.また,東日本大震災の影響で助成金の全額交付が遅れ,振動式自動研磨機の発注,納入も遅れた.そのため観察用試料作製のための消耗品の量も当初の計画より少なくなった. 次年度は,冷間等方静水圧プレスの消耗品の交換を早々に行う.また,粉末成形体の焼結実験およびFE-SEM/EBSD法による組織観察を本格的に行うため,粉末材料,焼成雰囲気調整のためのガスボンベ,および観察試料作製のための研磨盤や砥粒などの消耗品を購入する. さらに,講演会にて研究成果を発表するための旅費にも使用する.5月に開催される粉体粉末冶金協会平成24年度春季大会,"各種粉末の焼結機構と新しい焼結技術の展開"講演特集にて「フェーズフィールド法による焼結中の異常粒成長のシミュレーション」と題した研究発表を,9月に開催される日本機械学会2012年度年次大会,"粉末成形とその評価"セッションにて,「フェーズフィールド法/個別要素法連成による焼結過程のモデル化」と題した研究発表を,それぞれ行う予定である.
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