2011 Fiscal Year Research-status Report
ニッケルアルミナイドが結晶方位を記憶する現象の解明
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23560886
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Research Institution | National Institute for Materials Science |
Principal Investigator |
出村 雅彦 独立行政法人物質・材料研究機構, 水素利用材料ユニット, 主任研究員 (10354177)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
井 誠一郎 独立行政法人物質・材料研究機構, 構造材料ユニット, 主任研究員 (60435146)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | ニッケルアルミナイド / 集合組織 / 強圧延 / 再結晶・粒成長 / 金属間化合物 / 単結晶 / 複相 / 結晶方位解析 |
Research Abstract |
強冷間圧延したNi3Al単結晶では、再結晶・粒成長過程において、結晶方位が記憶される興味深い現象(集合組織記憶効果)が現れる。しかし、Ni3AlがNi固溶体に整合析出したNi3Al/Ni複相合金では、これが発現しない。本研究では、集合組織記憶効果が発現する組成範囲を決定し、集合組織記憶効果の発現に欠かせない組織因子を特定する。 本年度は、Ni固溶体(Ni-8at%Al)単相の単結晶を育成し、圧延、再結晶・粒成長熱処理を行って、集合組織が発現するかどうかを確認した。Goss方位に切り出した板を80%及び90%まで冷間圧延し、出発材とした。圧延材は、Ni3Al単相、Ni3Al/Ni複相の場合と同様、Goss方位を維持していた。600℃-1000℃の範囲で熱処理を施したところ、90%圧延材では再結晶が試料全体で起こっていたが、80%圧延材では600℃で再結晶はごく一部でしか起こっていなかった。また、Ni3Al単相、Ni3Al/Ni複相と比較すると、同じ熱処理条件で粒径が大きい。 SEM-EBSDを用いた結晶方位解析の結果、Ni固溶体では、結晶方位が元に戻る記憶効果は観察されなかった。また、Ni3Al単相、Ni3Al/Ni複相で見出された特異な方位関係、40度<111>回転関係も見出されなかった。このように、集合組織記憶効果には40度<111>という特殊な方位関係が必要なことを確認できた。同時に、Ni3Al/Ni複相がNi固溶体よりもNi3Alの影響を強く受けていることがはっきりとした。従って、Ni3Al/Ni複相での再結晶が、Ni3Alとどこで異なっているのかが、記憶効果発現の組織因子を特定する鍵となると考えられる。 次年度以降は、Ni3Al/Ni複相材の組織観察を詳細に行い、集合組織記憶効果が「起こらない」理由を探る。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
単結晶育成、圧延、結晶方位解析等、予定通り進行し、Ni固溶体単相の単結晶実験を行うことができた。その結果、予定通り、次年度に取り組むべき課題がはっきりした。ただし、Ni固溶体単相の結果は、予想していたものと異なる点を含んでいたので、次年度以降の課題は、その結果に即して、当初の想定にとらわれずに構想し直した。以上から、おおむね順調に通り進んでいると判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
Ni3Al/Ni複相について、単結晶育成し、圧延、再結晶実験を行い、再結晶組織を詳細に観察する。単結晶育成のために研究員を雇用する。再結晶組織の観察は、出村(代表者)がドイツ・マックスプランク鉄鋼研究所と、井(分担者)が九州大学と協力して進める。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
単結晶の強圧延に特殊な圧延機が必要と想定し役務費を計上していたが、育成した単結晶の質が高く、また、研究実施場所の機構内支援の技術が向上したおかげで、本年度の試料については、外部に依頼せずにすんだ。次年度は、単結晶育成の特殊技能を有する研究員が本年度で退職となるため、本年度使用せずに済んだ分を活用して、この研究員を雇用するために使用する予定である。
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