2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23560890
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Research Institution | Iwate University |
Principal Investigator |
小綿 利憲 岩手大学, 工学部, 副技術室長 (70374866)
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Keywords | 球状黒鉛鋳鉄 / 高強度化 / 黒鉛粒数 / レアアースレス / アルカリ土類金属 |
Research Abstract |
自動車のエンジンや自動車用重要保安部品に使用される鋳鉄材料は、高強度が要求されるため、高強度化処理剤としてレアアース(RE)が一般に使用されている。REの生産量は中国に集中しており輸出国としても首位である。しかし、中国は2010年後半よりREの輸出許可枠を大幅に削減、そのためREの価格は上昇し、入手も困難になってきている。現在、REの輸出は正常化に向かっているが、まだREの安定供給問題は解決に至っていない。なお、球状黒鉛鋳鉄の高強度化には黒鉛粒数の増加が不可欠でありREの添加が有効である。 そこで本研究では、球状黒鉛鋳鉄の製造におけるRE代替・削減策の一環として、球状黒鉛鋳鉄の黒鉛粒数に及ぼす微量REとアルカリ土類金属を利用した処理剤の開発について検討した。そのことによって自動車エンジンや重要保安部品に使用される鋳鉄材料の、重い・脆いというイメージを一新する「高強度鋳鉄材料」が製造できる技術を確立する事を目的とした。 平成23年度は、薄肉球状黒鉛鋳鉄の機械的性質と黒鉛粒数に及ぼすCeとLaの影響について研究を行い、Ce、Laを単体でRE源とした試料の方がCe、Laを混ぜてRE源としたものより黒鉛粒数が多くなることを確認した。その黒鉛粒数増加機構は、黒鉛晶出の下地として作用するRE硫化物の粒径がCe,Laを単体で添加した試料で小さく数多く晶出したため黒鉛粒数が増加出来たと考察した。 平成24年度は、球状黒鉛鋳鉄の黒鉛粒数に及ぼす微量REとアルカリ土類金属併用添加について検討した。微量添加であるRE0.02%までは黒鉛粒数が大幅に増加するが、0.02%を超えると黒鉛粒数の増加率は減少すること、更に微量RE添加(RE0.02%)にアルカリ土類金属を複合添加することで黒鉛粒数が増加することが確認出来た。 その結果、市販の処理剤に比較しRE添加量を1/2まで低減出来ることが解った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
球状黒鉛鋳鉄の材質特性に及ぼす微量レアアース(RE)の影響について調査することと、最終的にはレアアースレスを目指している。 平成23年度は、REの中でも特に需要が急増しているネオジウム(Nd)、プラセオジウム(Pr)、サマリウム(Sm)を抜かれたRE合金や100%セリウム(Ce)や100%ランタン(La)をRE源としたRE合金が鋳鉄の特性に与える影響について研究を行った。その結果、セリウム(Ce)や100%ランタン(La)を単体でRE源とした試料で黒鉛粒数が多くなることを確認した。 平成24年度は、レアアース低減を目的として球状黒鉛鋳鉄の黒鉛粒数に及ぼす微量REとアルカリ土類金属併用添加について検討した。微量RE添加(RE0.02%)にアルカリ土類金属を複合添加することで黒鉛粒数が増加することが確認出来た。その結果、市販の処理剤に比較しRE添加量を1/2まで低減出来ることが解った。 これらの結果を基に、レアアースレスを目指して今後の研究を進めれば良いことが解った。
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Strategy for Future Research Activity |
球状黒鉛鋳鉄の機械的性質と黒鉛粒数に及ぼす微量REの影響について検討した結果、極めて有用で高価なRE(ネオジウム(Nd)、プラセオジウム(Pr)、サマリウム(Sm))の除かれた、比較的安価なLa,Ceを主成分としたREの効果が確認出来た。従って、このLa,Ceを主成分とした処理剤を基本にさらにRE代替としてアルカリ土類金属等の併用添加について調査を行っていく。 最終的にはレアアースレス化を目指すが、完全なレアアースレスが不可能としても、比較的安価であろうLa,Ceを微量添加しこれにアルカリ土類金属等の併用添加した処理剤を使用することで、低コストで高強度な自動車用重要保安部品である球状黒鉛鋳鉄の製造方法を検討し進めていく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度繰越額11,267円発生したが、最終年度である平成25年度以降の研究を継続遂行する上においても試料作製が不可欠であり、試験片作製のための溶解原材料、溶解に必要な器具さらに試験片の観察、解析を行うための消耗品が必要となり、合算して有意義に使用したい。しかし、在庫を持つ消耗品も有るために、消耗品費は昨年度の半分程度の予算での研究が可能である。 また、特に溶解実験等は1人では難しいために実験協力者が必要となるが、溶解実験等の時間も半分程度で良くそれに伴う謝金が必要である。 他大学や試験研究機関等の専門家とも相談できる体制にあり、処理剤メーカーとの共同開発も可能である。このような調査や打ち合わせ等さらには最終年度であるために、成果の発表を積極的に行うことや、学会誌に投稿を積極的に行う等旅費及び投稿料が必要である。
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Research Products
(4 results)