2012 Fiscal Year Research-status Report
タンデム双ロール法による革新的軽量クラッド材料の開発
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23560892
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Research Institution | Gunma University |
Principal Investigator |
渡利 久規 群馬大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (90210971)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山崎 敬則 小山工業高等専門学校, 機械工学科, 助教 (80342476)
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Keywords | マグネシウム / 塑性加工 / 急冷凝固 / 軽量材料 / 温間成形 |
Research Abstract |
本研究では,3段の横型タンデム双ロールキャスターを開発し,1段目で母材となるAZ91D合金薄板材を双ロール法により作製し,2段目で表材となるAA1050合金薄板を下方メルトドラッグ法により作製した.さらに,3段目のロールでは,材質の異なる2つの合金を積層させることでクラッド材の作製を実現した.以下のことを明らかにしている. (1)溶湯の液面を一定にする数理モデルを用いて,注湯システムのさらなる改良を行った.高精度なフィードフォワードシステムを開発し,遅れのない制御系を構築することができた. (2)AA1050の下方メルトドラッグでの表材作製においては,ノズルの先端で形成された凝固層をロール側に押し付ける方法によって板表面温度を下げる方法を見出した.これにより,困難であった下方メルトドラックによるAA1050合金薄板の製造を可能にした.さらにノズル部分に耐熱クロスを貼り付けることによって溶湯もれが防止でき,表材の作製を行うことが可能であることを明らかにした. (3)接合部の混合層厚さおよび各元素の分布を調査するため, EPMAによる接合部の反射電子像観察,面分析,元素マッピングを行なった.その結果,AA1050とAZ91Dの接合部における混合層の厚さは約15μmであった.各層の硬さ平均は,Al層でHV26,Al 及びMgの混合層でHV227,Mg層でHV86であることを明らかにした. (4)本実験で得られたクラッド材の板厚は5.4mmであり,Al層は1.1mm,Mg層は4.3mmであった.今後,最適プロセス確立するためには,個々のパラメータおよび各ロールにおいて生じる現象を明らかにすることが重要であり,各種パラメータおよび各ロールにおいて生じる現象を解明し,軽量・高強度のAl/Mgクラッド材の製造方法の確立をめざすものである.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究の目標としていたタンデム双ロールキャスターによって得られたクラッド材の材料特性の評価をほぼ行なうことができた. 24年度は目標としていた適切な鋳造条件の調査(鋳造温度,ロール周速,上下ロールクリアランス,ロール接触長さ)を行い,150mm幅のロール表面における冷却条件を安定させる機構を開発した. AA1050の下方メルトドラッグでの表材作製においては,ノズルの先端に凝固層をロール側に押し付けるシステムを開発し,板表面温度を下げることが可能であることが判明したので,最終目標であるAl-Mg-Alの三層クラッドの製造実験を進めていくことが可能である. 横型双ロールクラッド材の凝固解析においては,各鋳造条件下における凝固点を予測するために凝固解析を行なった.これによって各鋳造条件における板厚予測,リダクションを予測し,解析から得られた板材の板厚と実験値として求められた凝固板厚を比較することが可能となり,熱伝達などの解析条件や境界条件の妥当性を検討することができた. また,得られた二層クラッド材料に対して,各実験条件での材料の機械的性質(硬さ等)を調査し,予定していたクラッド材料の界面の接合状態の線分析による評価も実施した. 上術した理由により,当初の研究計画に対してはほぼ90%以上の達成度であると判断し,研究は概ね順調に進展していると考えている.今後は,最適プロセス確立するために,個々のパラメータおよび各ロールにおいて生じる現象を明らかにすることで軽量・高強度のAl/Mgクラッド材の製造方法を確立することができると考えて,今後も研究を進めていく.
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Strategy for Future Research Activity |
マグネシウム合金とアルミニウム合金の溶湯から,三列にタンデムに配列した双ロール法を用いてAl-Mg-Al の三層クラッド鋳造板材を直接的に製造しその後,クラッド材を温間圧延できる塑性加工用の軽量クラッド材を製造することが本研究の最終目的である.これを達成するためには,最適なプロセス確立する必要性があり,現在,個々のパラメータおよび各ロールにおいて生じる現象を完全に解明しているとは言い難い.このため,以下のような研究推進方策をとる.また,製造したAl-Mg-Alの三層クラッド材料の特性評価を行う必要性があるため,以下のように研究を進めていく. (1)各ロール通過後の板材の温度を明らかにするために,各条件において各ロール通過後の板材の温度を実験的に求める.これとは別に,横型双ロールクラッド材の凝固解析を行い,凝固解析と実験による比較を行なうことで各ロールの物理的な役割を解明し,最適条件を確立する. (2)軽量クラッドキャスト材の温間圧延実験および塑性加工性の評価を行なう.具体的には,以下の項目について調査する. (a) 圧延パス,リダクションと得られた板材の圧延加工に伴うクラッド界面の分析,(b) 圧延温度,リダクションによるクラッド材の各層の結晶方位の解析,圧延加工に伴う界面近傍での各種元素の濃度分布,化合物相の形成(SEM-EDX),圧延加工に伴う集合組織の発達状況,(c)クラッド展伸材の温間引張り試験,および熱処理条件と温間加工性の因果関係,(d) 温間加工性と圧延パス,リダクションとの因果関係(温間深絞り実験を行い,目標限界絞り比2.2が可能であるかどうかの調査.)(e) サーボプレスによる最適な成形加工条件の解明(スライドやサーボダイクッションのモーションが成形に与える影響)
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度においては,計画的に研究費を使用していた状況の中で一部の消耗品の金額が予定より安価に購入できたことによる結果として端数となる34695円の繰越しが生じている状況であるが,平成25年度においても上記の状況を鑑み,引き続き次のような計画的な使用プランを立てている. (1)各ロール通過後の板材の温度を明らかにするために,各条件において各ロール通過後の板材の温度を実験的に求める.このため横型双ロールクラッド材の製造実験に係る消耗品が必要となる.これら,ロール実験における消耗品の購入計画は以下のようである.マグネシウム合金材料およびアルミニウム材料の購入に20万円,断熱材(10万円),ノズル改良のための鋼材(8万円),マグネシウム用の鋼製るつぼ(12万円),温度計測における熱電対(134695円),である. (2)国際会議,AMPT2013(台湾)において研究発表のための研究成果発表用旅費として20万円を予定している. (3)各ロール通過後の板材の温度を明らかにするため,各条件において各ロール通過後の板材の温度を実験的に求める必要がある.さらには,横型双ロールクラッド材の凝固解析を進める必要性がある.最終的には,凝固解析と実験による両者の比較を行なうことで各ロールの物理的な役割を解明し,最適条件を確立する必要性があるが,これら一連の実験および解析作業において,実験および解析に関わる補助作業者の謝金(10万円)を予定している.
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Research Products
(9 results)