2011 Fiscal Year Research-status Report
電子デバイスプロセスを利用した水素分離用金属薄膜の作製
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23560906
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Research Institution | Gifu University |
Principal Investigator |
上宮 成之 岐阜大学, 工学部, 教授 (60221800)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
宮本 学 岐阜大学, 工学部, 助教 (60538180)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | パラジウム / 薄膜 / めっき / パターン形成 / フォトリソグラフィー |
Research Abstract |
水素分離用Pd系複合膜は,Pd使用量の削減や水素透過性能の向上を目的として,Pd層のさらなる緻密薄膜化が必要とされている。しかし,現在使用されている多孔質セラミックス支持体は表面粗度が大きいため,Pd層を薄膜化すると均一な層が出来ず欠陥・ピンポールが発生する。本研究では,従来法とはまったく異なる製膜法であるフォトリソグラフィーを利用する製膜法に注目した。具体的には,平滑な樹脂上にPd薄膜を作製,フォトリソグラフィーで細孔パターンを形成した支持体層を作製し,最後に樹脂を除去してPd複合膜を作製した。 いくつかの樹脂基板を試験したが,なかでもABS/ポリカーボネート樹脂基板には無電解めっきでPdが良好に付着した。この樹脂基板上にPd層を形成し,Pd層上にネガ型およびポジ型のレジストをスピン塗布した。その後,露光・現像処理を行い、支持体層(電解Auめっき・電解 Niめっきによる)を作製した。さらにレジストの剥離,樹脂の除去を実施した。 まずネガ型レジストを用いレジストパターンを作製したが,支持体層作製のためにAu電解めっきを行ったが,電流は全く流れなかった。その原因として,フォトマスク(簡易的にOHPシートを使用)のマスク部分にも一部の光が透過したため,一部のレジストが溶解せず固化したと考えた。そこでネガ型に変えてポジ型レジストについても検討した。スピン塗布で回転数の増加に伴い膜厚が減少し、2500 rpmの時に17 μm程度の膜厚が得られた。露光・現像工程では露光条件を変化させた結果,50 s以上の条件ではレジストを十分に除去することができた。また,支持体作製工程のAuめっき(50 nm)では、めっき前後で明らかに色の変化が確認でき,Auが析出していた。Niめっきではレジストパターン部分以外のPd上にレジストよりも大きい膜厚の多孔質Ni層(約50 μm)を得ることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
以下に示す研究項目の達成状況から判断した。 製膜後パラジウム薄膜から剥離が容易な基材としては,表面粗度が小さく,無電解めっき(化学反応)の触媒となるパラジウム超微粒子が高密度で付着可能なことが要件である。市販のABS樹脂,ポリカーボネートなどのプラスチック素材を対象に,熱処理による変形の有無,有機溶剤への可溶性などを調べ,最適な基材としてABS/ポリカーボネート樹脂を選定できた。 光露光技術における最適なレジスト材の選択するにあたり,ポジ型およびネガ型の両方のレジストを使用して比較検討した結果,簡易的なOHPシートを用いたマスクであったためにマスク部分での光透過が問題となり,ポジ型が良好な結果が得られた。また,レジスト層の厚みが多孔質Ni支持層の厚みとなるため,支持層として十分な強度が得られるであろう50 μm程度の厚みを目標にレジスト層を作製した。その結果,レジストは17 μm程度であったが,最終的には50 μm程度の多孔質Ni支持層を形成できた。 フォトレジスト法によるPd上への多孔質Ni支持層の作製では,パターン形成にはフォトマスクが必要である。ここでは,予算の関係からOHPシートを用い高解像度プリンターによる印刷でフォトマスクを作製した。フォトレジストで支持層の細孔構造のパターニングが可能となり,支持層となる多孔質Ni層(50 μm)をめっき法で形成できることを実証できた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成23年度に得られた結果を基にして,今後,以下の事項の研究を実施する。 Pdと多孔質Ni支持層は高温下では容易に合金化し,ボイド等が発生することが懸念されるため,Pd層とNi層の間にAuなどをめっきすることで,熱拡散抑制層を作製している。それらの金属間の相互拡散の有無は,水素分離膜としての使用温度より若干高温で熱処理し,金属の拡散の有無をエネルギー分散型X線分析法などの元素分析結果から判定する。 また水素が多孔質Ni支持体層を抵抗なく拡散できるようにするために,機械的強度を保ちつつも細孔開口率を大きくすることを試みる。水素透過係数(膜厚で補正した単位膜厚あたりの水素透過速度)を文献値と比較し,多孔質Ni支持層の抵抗が小さくなるような構造(開口率、細孔径、層の膜厚)を設計する。細孔構造はSEM観察,さらにはポロシメーターにより細孔径分布や細孔容積の測定等で評価する。さらにはPd膜厚を1 μm程度にまで薄くし,その上に多孔質Ni支持層を作製する。Pd膜厚が小さくなり,それに応じて拡散速度が向上するため,多孔質Ni支持層の構造をさらに高度に制御することを試みる。 また,実用化に際しては数年以上の耐久性が必要である。そこでめっき薄膜の機械的強度を万能試験器で測定し,既有のめっき薄膜で得られたデータと比較・参照しながら,耐久性向上のための基礎データとする。なお,本研究では,実験室規模での分離膜作製であることから,一週間程度の連続運転に対する耐久性を得ることを目標とする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本研究において,めっき法による金属層の形成および水素透過試験は岐阜大学で実施するが,フォトグラフィーによるパラジウム薄膜上へのパターン形成は名古屋大学先端技術共同研究施設にて実施する。そのため次年度においても,名古屋大学までの交通費を計上した。併せて研究情報調査および化学工学会をはじめとする関連学会での成果報告のための旅費を計上した。 消耗品では,リソグラフィー用に試薬およびめっき用試薬が占める割合が大きいが,既有の水素透過試験装置およびめっき装置を使用するので,消耗品の一部を試験ガス,配管部品、めっき用薬品,パイレックスガラス器具および石英ガラス器具等の購入に充てる。
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