2011 Fiscal Year Research-status Report
乾式複合メカノケミカル処理を利用した木質原料の高効率粉砕
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23560914
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Research Institution | Ichinoseki National College of Technology |
Principal Investigator |
二階堂 満 一関工業高等専門学校, 教授 (30218094)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
戸谷 一英 一関工業高等専門学校, 教授 (40369913)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | メカノケミカル効果 / 木質バイオマス / バイオエタノール / コンバージミル |
Research Abstract |
原料とし杉大鋸屑を用い、まずは1Lコンバージミルでメカノケミカル粉砕処理を行う。基本的な粉砕条件検討や、他の前処理粉砕機(カッターミル、グラインダーミル、ハンマーミル)の併用による多段前処理粉砕(複合メカノケミカル粉砕)を検討した。 各種セルラーゼを用いて酵素反応を行い、生成したグルコース濃度をHPLC(高速液体クロマトグラフィー)で測定し、原料セルロースに対する糖化率を算出した。また、通常のセルラーゼ酵素へのβ-グルコシダーゼの添加についても検討した。以上のような検討を行い、以下の結論を得た。 (1)杉大鋸屑をコンバージミルでメカノケミカル処理することで、原料の微粒子化・非晶質化が進行し、酵素糖化特性が大幅に向上した。(2)木質質中セルロースの結晶化度が低いほど、糖化率が高くなる傾向にあった。(3)ボール径5mm程度の小径ボールを使用し、ボール充填率15%では、30分間の短時間コンバージミル粉砕で糖化率90%以上を達成できた。このときの粉体物性は、平均粒子径(D50)20μm以下、結晶化度(CrI)約10%となる。ただし、過度の粉砕は糖化率の低下を招き、最適な粉砕処理条件が存在すると言える。(4)前処理粉砕(ハンマーミル処理1分)とコンバージミル粉砕を組み合わせる多段前処理粉砕(複合メカノケミカル粉砕)が、より効率的な粉砕であることがわかり、ボール充填率20%、コンバージミル粉砕20分で糖化率90%以上を達成できた。(5)木質バイオマス原料のメカノケミカル粉砕によるナノレベルでの構造解析をXRD、IR測定で実施した。セルロースの結晶構造の変化はXRD測定の他、IR測定でも確認でき、セルロース構造の分子内・分子間の水素結合が切断されていることも明らかとなった。(6)通常のセルラーゼ酵素にβ-グルコシダーゼを添加することで、少ない酵素量でも高いグルコース濃度が得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
木質系バイオマスを原料にするバイオエタノール製造は、全世界的に取り組まれているテーマであり、効率向上と製造コスト削減が実用化に向けた最大の課題となている。我々が提案している粉砕処理は古くから酵素糖化のための前処理として効果が高いことが知られているが、消費電力が大きいという問題を有していた。従来、木質原料の粉砕には、転動ボールミル、振動ボールミル、ロッドミル等が利用されていた。しかし、これらの粉砕機は構造上装置の大型化ができ多量粉砕も可能であるが、低エネルギー付加型であり粉砕処理時間が長く、消費電力も大きくなる。粉砕法では、いかにして消費電力を下げるかが最大の課題である。本研究では、コンバージミルを中心とした、効率的な原料の前処理技術の開発と、酵素糖化技術の検討を行った。 その結果、昨年度は、杉大鋸屑木質バイオマス原料に対して、ハンマーミルとコンバージミルを組合せた多段前処理粉砕(複合メカノケミカル粉砕)がより効率的な方法であることを見出した。粉砕容器内容積が1Lと小型であるが、約20分間という極めて短時間の粉砕を可能としている。他のミルではこのような短時間処理は難しいものと考えられる。酵素糖化技術の検討においては、コンバージミル粉砕物を使用し、通常のセルラーゼ酵素にβグルコシダーゼを添加することで、糖化率が大幅に向上することも見出した。これにより高価なセルラーゼ酵素の削減も可能となることが期待される。以上ように有益な結果が出ており、本研究は概ね順調に進展しているものと判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
今までは、主に1Lバッチ式コンバージミルを用いて杉大鋸屑を原料として検討してきた。今後は、(1)様々な木質原料での複合メカノケミカル粉砕の検討、(2)酵素糖化条件の検討(3)量産化を視野に入れた連続粉砕処理システムの開発を行う予定である。 (1)様々な木質原料での複合メカノケミカル粉砕の検討では、原料として、岩手県内に豊富に存在するバイオマス資源(竹、ナラ(広葉樹)等)を用い、杉大鋸屑(針葉樹)の結果と比較しながら、他の前処理を併用する1Lコンバージミルでの複合メカノケミカル粉砕の最適条件を見出す。(2)酵素糖化条件検討では、各種木質バイオマス試料ごとに最適な酵素糖化条件を見出す。(3)連続粉砕処理システムの開発においては、これまでの1Lバッチ式コンバージミルでの結果を踏まえ、連続型コンバージミル(6L)を用い、メカノケミカル連続粉砕システムを確立する。各単位操作において、最適操作条件を見つけ出し、運転動力等を調査する。 最終的には、メカノケミカル連続粉砕装置を用い、個々の単位操作においてエネルギーコスト等の経済性を評価し、量産化を視野に入れながら、酵素糖化法による高効率バイオエタノール製造を目指す。原料処理量20kg/h、粉砕動力1MJ/kg、エタノール製造単価の試算では30円/L(粉砕工程)を目標とする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
2012年度(平成24年度)は、物品費450,000円、旅費150,000円である。 物品費(消耗品)(450,000円)としは、HPLCカラム(80,000円)、限外ろ過部品(ウルトラフィルターユニット(100,000円)を購入するが、酵素糖化用で使用する。コンバージミルの媒体ボールとして粉砕ボール(クロム鋼球)(30,000円)を購入する。粒度分布測定用の溶媒としてメタノール(60,000円)を購入する。その他、ガラス器具類(100,000)円、試薬(80,000円)を購入する。 旅費(150,000円)は、研究代表者および研究分担者がそれぞれ国内出張(東京2回(日帰り)(二階堂1回、戸谷1回)、東京2回(1泊)(二階堂1回、戸谷1回)、大阪1回(1泊)(二階堂))の費用である。
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Research Products
(5 results)