2012 Fiscal Year Research-status Report
乾式複合メカノケミカル処理を利用した木質原料の高効率粉砕
Project/Area Number |
23560914
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Research Institution | Ichinoseki National College of Technology |
Principal Investigator |
二階堂 満 一関工業高等専門学校, 教授 (30218094)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
戸谷 一英 一関工業高等専門学校, 教授 (40369913)
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Keywords | メカノケミカル効果 / 木質バイオマス / バイオエタノール / コンバージミル |
Research Abstract |
本研究では、木質バイオマス資源を原料とし、コンバージミルを用いてメカノケミカル粉砕し、その後、セルラーゼ酵素を用いて糖化処理を行う。具体的には、主に①小型1Lコンバージミルを用い、前処理粉砕機を併用する複合メカノケミカル粉砕の検討、②酵素糖化技術の最適化、③様々な木質原料での複合メカノケミカル粉砕の検討、④連続粉砕処理システムの開発を実施する。 2年目の研究においては、各種の木質バイオマス原料(杉おがくず、竹、稲わら、ナラ等)を用い、小型1Lコンバージミルでの検討を行った。また、コンバージミル以外の粉砕機として転動ボールミルでの比較検討を行った。さらに、6L連続式コンバージミルでの試験粉砕実験も行った。その結果、以下のような結果を得た。①ソフトバイオマスである稲ワラは、未粉砕でもある程度糖化する。コンバージミル粉砕で糖化特性がさらに向上する。②ハードバイオマス(杉、竹、ナラ)は、未粉砕ではほとんど糖化しない。コンバージミル粉砕で糖化特性が飛躍的に向上する。③杉おがくずの1L小型コンバージミル粉砕においては、ハンマーミルとコンバージミルを組み合わせる多段前処理粉砕(複合メカノケミカル粉砕)が効果的であった。この場合、コンバージミル20min粉砕で糖化率80%以上を達成できた。④転動ボールミルの長時間粉砕においても、木質原料の結晶構造破壊が進行し、コンバージミル粉砕物と同等に酵素糖化特性が大きく向上した。転動ボールミルでの最適粉砕条件は、ボール充填量45%、回転数100rpmで48h粉砕であった。⑤6L連続式コンバージミルでの検討を行い、複合メカノケミカル粉砕が効果的であることを確認し、また、粉砕性能は、小型1Lコンバージミルと同等であり、試料滞留時間は約20分間が最適であった。⑥酵素糖化性向上には、粒子径減少よりも結晶化度低下が重要要因であることが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
バイオエタノール製造の酵素糖化法において、前処理技術として重要なことは、木材の微細化による表面積増大、結晶性の高いセルロースの非晶質化による反応性向上、酵素活性を阻害するリグニン成分の除去が上げられる。その中でも特に、セルロース結晶の非晶質化が重要とされている。また、粉砕技術は、操作が簡単で処理物の酵素糖化性も高いが、消費電力が大きく、また、多くはバッチ処理であるため処理効率が悪いという欠点を有していた。比較的多量処理ができる連続式振動ミルによる木質バイオマス粉砕も検討されているが、粉砕動力は採算レベルには至っていない。木質原料の酵素糖化法において、前処理として粉砕法を用いる場合、粉砕の効率向上と製造コスト削減が実用化に向けた最大の課題となっている。 これまでの研究では、杉おがくずを原料としたコンバージミル粉砕においては、ハンマーミルとコンバージミルを組み合わせた多段前処理粉砕(複合メカノケミカル粉砕)がより効率的な粉砕方法であることがわかった。一方、コンバージミル粉砕の他、転動式ボールミルにおいてもコンバージミル粉砕と同等の粉砕物を得られることがわかり、昨年度は転動ボールミルでの最適粉砕条件を確立した。さらに、木質原料として杉おがくず以外でも、稲ワラ、ナラ、竹、草などでも同様にメカノケミカル粉砕条件と酵素糖化特性の相関を検討した。その結果、これら各種木質バイオマス試料でもメカノケミカル粉砕が効果的であり、特に、ハードバイオマス試料(杉、竹、ナラ)でコンバージミル粉砕がより効果的であることが分かった。さらに、6L連続式コンバージミルにおいても、複合メカノケミカル粉砕が効果的であることがわかり、粉砕性も1L小型コンバージミルと同等であることを確認した。以上のように、ほぼ計画通りに実験・検討が進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでは、主に1Lバッチ式小型コンバージミルでの検討を行ってきた。今後は、これまでの小型コンバージミルでの結果を踏まえ、6L連続型コンバージミルを中心に検討を行い、メカノケミカル連続粉砕システムを確立する。各単位操作において、最適操作条件を見つけ出し、運転動力等を調査してプロセス全体での経済性を評価する。一方、コンバージミル以外での転動ボールミル粉砕等でもコンバージミル粉砕物と同等の粉砕物が得られることが分かっており、コンバージミル粉砕と他の粉砕機を比較検討しながら検討を行う。同時に、他の粉砕機(ハンマーミル、グランダーミルなど)との併用による多段前処理粉砕(複合メカノケミカル粉砕)について更なる検討を行う。また、木質原料のメカノケミカル粉砕によるナノレベルでの詳細な構造解析を固体NMRやIR測定で行い、木質原料の構造変化と酵素糖化特性の関係性について明らかにする。 最終的には、メカノケミカル連続粉砕装置を用い、個々の単位操作においてエネルギーコスト等の経済性を評価し、量産化を視野に入れながら、酵素糖化法による高効率バイオエタノール製造を目指す。原料処理量20kg/h、粉砕動力1MJ/kg、エタノール製造単価の試算では30円/L(粉砕工程)を目標とする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
2013年度(平成25年度)は、物品費600,000円、旅費150,000円である。 物品費(消耗品)(600,000円)としては、HPLCカラム(80,000円)、限外ろ過部品(ウルトラフィルターユニット(120,000円)を購入するが、液体クロマトグラフイー分析用で使用する。コンバージミル粉砕の媒体ボールとして、クロム鋼球(100,000円)を購入する。粒度分布測定用の溶媒としてメタノール(120,000円)を購入する。その他、ガラス器具(80,000円)、酵素試薬(50,000円)、バイオマス関連図書(50,000円)を購入する。 旅費(150,000円)は、研究代表者および研究分担者がそれぞれ国内出張(東京3回(日帰り)(二階堂2回、戸谷1回)、東京2回(1泊)(二階堂1回、戸谷1回)の費用である。
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