2011 Fiscal Year Research-status Report
マイクロリアクター内のソノケミストリーとソノルミネッセンスの研究
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23560917
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Research Institution | The University of Electro-Communications |
Principal Investigator |
畑中 信一 電気通信大学, 情報理工学(系)研究科, 助教 (40334578)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
辻内 亨 独立行政法人産業技術総合研究所, 計測フロンティア研究部門, 主任研究員 (70357515)
安井 久一 独立行政法人産業技術総合研究所, 先進製造プロセス研究部門, 主任研究員 (30277842)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | マイクロリアクター / ソノケミストリー / ソノルミネッセンス / 新規反応場 / 省エネルギー / シングルバブル・キャビテーション / 気泡ダイナミクス / OHラジカル定量 |
Research Abstract |
ソノケミストリーとして知られる、液体への強力超音波照射による種々の化学効果を、マイクロリアクター内で生じさせることを目的とし、その反応場をスケールダウンしたときの影響について検討した。平成23年度は、主に、ソノケミストリーの反応源である気泡(キャビテーション気泡と呼ばれる超音波と同期して呼吸振動する微小な気泡で、崩壊時には瞬間的に数千度・数百気圧以上に達する気泡)について、通常は数千から数万個存在する気泡数を極限まで減らし、たった一個の気泡(シングルバブル)において、その化学効果を実験的に調べた。具体的には、水溶液中のシングルバブル・キャビテーションによって生じるOHラジカル量の定量、気泡内の高温高圧場の指標となるソノルミネッセンス(音響発光)の測光、および、対応する気泡ダイナミクスの観察を行い、それらの関係について考察した。 実験容器は通常サイズのものであるが、飽和溶存ガス度の20%に脱ガスした水溶液中に超音波の定在波音場を形成し、その音圧の腹にミクロンサイズの気泡を1個だけ捕捉した。その気泡によって生じるOHラジカル量を、テレフタル酸定量法、ヨウ化カリウム定量法、スピントラップによる電子スピン共鳴法によって測定した。その結果、超音波周波数25 kHz、音圧振幅1.4 atmでは、1周期あたり60万個のOHラジカルが生じ、OHラジカル量は音圧振幅に比例し、周波数に対しては反比例的であった。また、気泡が不安定に動き回ることで、OHラジカル量が増加することが分かり、その気泡は合体・分裂を繰り返していることが高速度ビデオカメラで観察された。 シングルバブルによる実験結果は、気泡の数値シミュレーション結果と直接対応させることができる。また、最小単位の気泡数でOHラジカルを定量できる実験技術を得て、マイクロリアクター内での化学反応量を評価する手法を確立した点で、意義が大きい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
シングルバブル・キャビテーションによるOHラジカル生成量は、通常のソノケミストリーにおけるマルチバブル・キャビテーションによるものに比べて非常に少なく、さらに、シングルバブル・キャビテーションを得ること自体、大変テクニカルな実験技術を必要とするため、定量データを得るための実験手法を確立するまでに多くの時間を要した。そのため、当初予定していたマイクロ流路中の超音波化学反応量の定量等の実験まで到達できなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
今後、ガラスプレート上に溝を切って作製したマイクロ流路内の水溶液に超音波を照射して、そのときに生成されるOHラジカル量を定量する。OHラジカルの定量法としては、平成23年度の研究から得た知見により、テレフタル酸定量法(テレフタル酸水溶液を用い、テレフタル酸が蛍光を持つヒドロキシテレフタル酸に変わることを利用した定量法)が最も測定感度が高かったことから、これを採用する。ただし、界面活性剤を同時に用いたときには、ヒドロキシテレフタル酸の蛍光スペクトルが変化し、テレフタル酸定量法が使用できないことも判明したため、このときには、スピントラップ剤を用いた電子スピン共鳴によるOHラジカル測定を行う(界面活性剤存在下でもOHラジカルが定量できることは平成23年度に確認済みである)。なお、ソノケミストリーにおいて、界面活性剤の添加により、反応源であるキャビテーション気泡のダイナミクスが変化し、反応効率が変化することが知られている。 一方、マイクロ流路内にキャビテーションが生じる程の強力な超音波を導入するのは容易ではなく、かなりの検討を要する。このことは、本研究課題の代表者・畑中信一と分担者・安井久一氏が共に分担者として参画し、連携研究者・小塚晃透氏が代表者を務めた基盤(C)課題番号:21560254・研究課題名:「超音波によるマイクロ流路中の微小物体の非接触操作技術の開発」における研究によって得られた知見である。強力超音波のマイクロ流路内への導入のために、超音波振動子の種類・配置や周波数の検討、インピーダンス・マッチングの検討、多数振動子による超音波の同時照射と重畳の検討等を行い、対応していく予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度の研究費は、各種のマイクロ流路ガラスプレートや超音波振動子および試薬等の消耗品と、成果発表にかかる旅費や学会参加費、論文投稿料等に使用する予定である。
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Research Products
(9 results)