2011 Fiscal Year Research-status Report
フィールドバス計装システムにおける自動調節弁の早期故障検出法の開発
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23560921
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
柘植 義文 九州大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (00179988)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 化学工学 / 自動調節弁 / 故障診断 / フィールドバス |
Research Abstract |
(1) 実プラントで使用されているフィールドバス対応計装機器を用いて,水循環実験装置を作製した.今年度は少なくとも循環流量の流量制御を行うために,オリフィスと差圧伝送器,および自動調節弁を組み込んだ.また,固着現象を繰り返し再現できるように,調節弁内のステムをグランドパッキンとは別のシール材で覆い,そのシール材の締め付け状態を変更することによって所定の摩擦力を加えられるような工夫を凝らした.DCSに相当する部分はフィールドバス対応計装機器に附属のソフトをパソコンにインストールして,計装機器との間で双方向のデータ送信を行えるようにした.ただし,次節で述べるような様々な条件での実験を行うために,Visual Basicによる自作プログラムを準備した.(2) 前述の実験装置を用いて固着現象の再現実験を行った.実験条件としては,流量設定値を正弦波状,矩形状,ランプ状,階段状に与える場合と,流量設定値は一定で外乱を与える場合について,固着なし,固着弱,固着強の3段階について,実験を行った.なお,流量制御系のパラメータ(比例ゲイン,積分時間,微分時間)については,制御応答が敏感になる組合せと応答が緩やかになる組合せの2通りについて行った.(3) 固着現象を早期に検出するための指標を提案した.この指標はステムにかかる摩擦が全くない理想的な条件下での弁開度に対応するダイヤフラム内の空気圧と実際の空気圧の差で定義される.前述の様々な条件下で提案した指標の値を確認したところ,固着の程度を定量的に評価できることが示唆できた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
(1) 当初の計画通りの実験装置を作製すると共に,様々な条件での実験を行うためにのVisual Basicによるプログラムも準備することが出来た.(2) 前述の実験装置を用いて固着現象の再現実験を問題なく実施することが出来た.なお,当初の実験条件としては,周期的に変動するように流量の設定値を与え予定であったが,変動させ方については,若干変更して,解析が行いやすいように,流量設定値を正弦波状,矩形状,ランプ状,階段状に与える場合に変更した.また,実プロセスでは,設定値が一定で様々な外乱の影響を受けて流量が変動する場合が多いので,そのような実験も行えるように装置を改良した(これは,外乱発生用の手動バルブを増設することで対応した).固着の程度については,当初は固着なしから完全な固着までを7段階程度に分ける予定であったが,あまり細かく分けても有意な差が出ないために,今回は固着なし,固着弱,固着強の3段階にとどめた.(3) 当初は,前述の実験結果より固着時の挙動の違いを確認できれば良いと思っていたが,一歩進んで,固着の早期検出のための指標の提案まで行うことが出来た.
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Strategy for Future Research Activity |
【平成24年度の研究計画】(1) 平成23年度の固着現象再現実験の結果を踏まえて,ステムとグランドパッキンとの間の静止摩擦と動摩擦の影響を解析し,固着の進展を表現できる詳細な挙動モデルを作成する.また,挙動モデルを活用した固着進展予測システムのプロトタイプを試作して,シミュレーションによる検証も行う.(2) 平成24年度はバッファタンクの液面制御を行えるように改良する.具体的な実験装置の改良としては,液位測定用の差圧伝送器のみを追加すれば良く,自動調節弁は流量制御系で使用したものを共用できる.なお,流量制御系は非常に応答が早くて調節弁の開閉速度も速い.これに対して,液面制御系の応答は遅くて調節弁の開閉速度も速くない.このような調節弁の開閉速度の違いによる影響も反映した挙動モデルに改良するために.液面制御系における固着現象の再現実験を行う.実験条件は液面制御を対象にした場合と同条件(平成23年度研究計画の(2)の条件)で実施する.【平成25年度の研究計画】(1) 液面制御系を対象にしてシミュレーションによる検証を行う,(2) 平成21年にフィールドバス対応のDCSを導入した化学プラントでの操業データ3年分(平成22年~24年)を研究用に提供して頂く予定である.この実操業データに本研究での挙動モデルを適用する.また,平成25年度の早い段階で定期点検も行う予定であり,実際の調節弁の状態も確認することができる.これらのことより,本研究での手法の有用性を検証する.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
(1) 物品費:50万円・現在は流量制御だけを対象にした実験装置であるが,これを液面制御も行えるように改良する.そのための物品の購入を行う.・その他,実験で使用する消耗品等の購入に当てる.(2) 旅費:70万円・研究成果の一部を国内外の学会で積極的に発表する.
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