2012 Fiscal Year Research-status Report
超臨界二酸化炭素流体を活用したコアシェル型金属ナノ微粒子のシェル構造制御
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23560924
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Research Institution | Hachinohe National College of Technology |
Principal Investigator |
村上 能規 八戸工業高等専門学校, その他部局等, 准教授 (70293256)
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Keywords | 超臨界二酸化炭素 / レーザアブレーション / 銀ナノ微粒子 / 炭素被覆 / 多環芳香族化合物 / 熱分解 / トルエン / ピレン |
Research Abstract |
これまでの研究により超臨界二酸化炭素中(50℃、10MPa)に銀板を配置、さらに、有機溶媒を超臨界二酸化炭素に溶解させた状態でレーザ光(532nm、250mJ/pulse)を上部から照射すると有機溶媒のレーザによる熱分解で表面が炭素被覆されることがこれまでに分かってきた。本年度は銀等の金属基板のない状態で超臨界二酸化炭素に有機溶媒を溶解させた状態でレーザを集光照射し、何が起こるか観察した。超臨界二酸化炭素中に溶解させた有機溶媒としては、エタノール、ペンタン、シクロヘキサン、トルエンを用い、レーザ集光照射30分~1時間後の有機溶媒をサンプリングすることで、超臨界二酸化炭素中の有機溶媒の変化を観察した。その結果、いずれの有機溶媒も紫外光照射により蛍光を発することが分かり、多環芳香族化合物が生成していることが確認できた。その蛍光強度は、エタノール<ペンタン<シクロヘキサン<トルエン であり、トルエンがレーザ集光照射により効率的に蛍光を発生させる多環芳香族化合物を生成することが分かった。これはトルエン自体が有する芳香環が核となって、レーザで誘起された熱分解により多環芳香族化合物が生成していることを意味する。フーリエ変換赤外分光法による赤外吸収スペクトルにおいても、トルエンのFTIRスペクトルとは大きく異なる特徴をもつスペクトル観測され、多環芳香族化合物の生成が確認できた。さらに、どのような多環芳香族化合物が生成しているのかについて検討するため、本学にあるガスクロマトグラフ質量分析計(GC-MS)により生成した多環芳香族化合物の同定を行った。その結果、ピレンと思われる生成物のピークが観測されたが、それ以外の生成物は見えなかった。このことは、トルエン等の有機溶媒が熱分解すると主にピレンが生成し、このピレンが金属ナノ微粒子に吸着、熱分解して、炭素被覆をしたメカニズムが考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
レーザアブレーションで生成するナノ微粒子量が想定されたよりも少なく、顕微鏡観察等によるナノ微粒子の直接的な測定が難しい。本学には高解像度の顕微鏡はなく、他大学や測定会社に依頼分析をするとなると、微量の測定であるがゆえに、測定に関する技術的な打ち合わせ(顕微鏡による観測のノウハウの伝授)が難しく、コアシェルナノ微粒子が生成しているという間接的な確証は数多くあっても直接的な証拠にまで至ることができない。
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Strategy for Future Research Activity |
レーザを集光してナノ微粒子をつくるレーザアブレーションによるナノ微粒子生成量が非常に少ないことがコアシェル構造観測の上で、問題となっている。ナノ微粒子の作成法としてはレーザアブレーション以外に、光還元法を使う方法が知られている。光還元法の方が1光子過程であるためにナノ微粒子の生成効率が高い上、レーザアブレーションのように集光する必要がなく、技術的にも容易である。本年度は、レーザアブレーションとともに、光還元法を超臨界二酸化炭素中のナノ微粒子生成に適用し、さらに、超臨界二酸化炭素中で有機溶媒を溶解させて、さらに、コアシェル型のナノ微粒子作成を試みたい。コアシェル構造形成の証拠として、研究環境的に直接的な顕微鏡観察が難しい現状を鑑みて、ナノ微粒子をつくるのではなく、基板にナノ微粒子を固定(あるいは基板にナノサイズの金属を析出させる)、そこに有機溶媒を熱分解させ、炭素被覆する手法に切り替える。そのことで、コアシェルの顕微鏡観察をより容易にする予定である。これまでも顕微鏡観察以外に、プラズモン吸収のシフトでコアシェル構造を確認したが、それよりもより直接的な方法として、金属表面でルミノール等が酸化され、化学発光する現象を応用し、コアシェル構造による金属表面の被覆とそれにより引き起こされる化学発光の消滅により、コアシェル構造の生成の確認を行える方法を新たに模索したい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
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Research Products
(2 results)