2012 Fiscal Year Research-status Report
有機官能基秩序配列を有したペプチド薄膜上での無機結晶析出の解析とその応用
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23560925
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
加藤 且也 独立行政法人産業技術総合研究所, 先進製造プロセス研究部門, 研究グループ長 (70356781)
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Keywords | バイオミネラリゼーション / ペプチド / リン酸カルシウム / 自己組織化 / ヒドロキシアパタイト / アモルファス / リジン / グルタミン酸 |
Research Abstract |
バイオミネラリゼーションは常温常圧下において特異な無機構造体を構築する高効率プロセスであり工学的応用が期待されている。そのメカニズムとして、結晶核形成の起点となる有機鎖官能基の種類や空間的配置が結晶形態に影響を及ぼすと考えられている。今回テンプレートに用いるペプチドは、アミノ酸側鎖由来の多種多様の官能基を自在にシークエンスに組み込むができ、タンパク質の一次、二次構造の形成によって官能基を空間的に厳密に配列制御できる。そこで平成23年度は、カルボキシル基およびアミノ基を界面に規則正しく配置したペプチド基板上に、交互滴下法によりリン酸カルシウムのミネラリゼーションを行い、官能基の間隔および官能基種と結晶形態の関係性を評価した。平成24年度は、前年度までに作成した上記のβ-シートペプチド単分子膜上での各種界面バイオミネラリゼーションを行い、その構造解析を詳細に行った。無機析出物の構造解析については、析出形態を確認するために電子顕微鏡(SEM)や原子間力顕微鏡(AFM)観察を行った。またCa/P組成比を調べるためにX線光電子分光(XPS)および誘導結合プラズマ(ICP)発光分析測定を実施した。さらに結晶相の決定の要因に析出物の成長速度も重要であると考えられるために、水晶振動子マイクロバランス (QCM) 測定により、析出物の成長速度を追跡した。その結果、QCM による成長速度は両基板ともほぼ同値であることがわかった。これにより今回の系において結晶成長速度は結晶形態の決定には関与しておらず、結晶相の違いは界面の影響であると示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度は、平成23年度までに作成した上記4種類のβ-シートペプチド単分子膜上での各種界面バイオミネラリゼーションを行うことを目標とした。特に、H24年度は、無機析出物の構造解析について、析出形態を確認するために電子顕微鏡(SEM)や原子間力顕微鏡(AFM)観察を行った。またCa/P組成比を調べるためにX線光電子分光(XPS)および誘導結合プラズマ(ICP)発光分析測定を実施した。さらに結晶相の決定の要因に析出物の成長速度も重要であると考えられるために、水晶振動子マイクロバランス (QCM) 測定により、析出物の成長速度を追跡した。以上、当初に掲げた目標をほぼ全て実施して、自己組織化ペプチドテンプレート上でのリン酸カルシウムミネラリゼーション機構を解明した。これらの理由により、研究の進捗については、おおむね順調に進行していると判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度は、平成24年度までに合成・解析された【β-シートペプチド単分子膜上に析出した無機化合物シートの応用研究 】 として以下の2点に取り組む。① 計画通りにリン酸カルシウムが析出したペプチド基板では、基板上へのタンパク質の選択的吸着実験を行う。リン酸カルシウムは、タンパク質やDNAなどの生体分子に対して、高い吸着特性を持つことが知られている。 そこで上述の手法で作成したナノスケール化されたリン酸カルシウムラインパターンを活用することで、高密度に集積したタンパク質ナノアレイを創製することが可能となる。 さらにこのアレイ上を細胞接着・増殖タンパク質でコーティングすることで、細胞の伸展や増殖をアレイ上でコントロールすることのできる新規細胞培養足場材料としての開発を行う。② 前年度のQCMの結果から、リン酸カルシウムの析出量の多いペプチド配列が決定された。この結果を基に、元素回収能力を既存の材料と対応させて評価する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
25年度は、ペプチド-無機物複合体の応用として、生体分子(タンパク質や細胞)の選択的吸着アレイ基板としての確立を行う。そこで、評価対象となるタンパク質(アルブミンや抗体)や動物細胞(骨芽細胞)を購入すると共に、タンパク質の定量試薬や蛍光導入剤、細胞核や細胞内骨格染色試薬を購入する。また試薬混合や反応に必要なピペットチップやチューブ(プラスティック消耗品)が必要となる。また本課題においては、様々な評価分析機器(AFM, FT-IR, MALDI-Mass等)を使用するため、全研究期間を通じて、各機器修理費を計上する。最後に、成果報告を目的とする学会参加のために、3回/年程度の旅費を計上する。さらに年1~2報程度の論文投稿を予定しているため、学会誌投稿料を必要とする。
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Research Products
(19 results)