2011 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23560928
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
一國 伸之 千葉大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (40261937)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | ニッケルナノクラスター / 触媒調製化学 / NiOナノクラスター / XAFS / 透過型電子顕微鏡 / チオフェノールカップリング反応 |
Research Abstract |
本研究は,アルコキシド還元法を用いて,ニッケルナノクラスター(Ni-NC)を調製し,そのNi-NCのサイズ制御に関する知見を得るものである。実施1年目となる本年は,(1) Ni-NCの微細化を主目的として,サイズ制御を行い,(2) 触媒反応への応用を狙った。(1) NaHとt-BuONaを組み合わせ,テトラヒドロフラン(THF)中でニッケルアセテートを還元することで,平均粒径2.2 nmのNi-NCを作り出すことに成功した。粒径は透過型電子顕微鏡(TEM)像により求めることができた。得られたNi-NCをシリカに担持し,室温で空気に触れさせることで容易に酸化し,担持NiOナノクラスター(担持NiO-NC)へと転換されることがX線吸収スペクトル(XAFS)より判明した。また,この際に,ニッケル前駆体の種類により担持NiO-NCのNiOサイズを変えられることがXAFSの解析により明らかとなった。(2) (1)で得られた担持NiO-NCおよび通常の調製法により得られた担持NiO触媒を用いて,チオフェノールの酸化的カップリング反応を行ったところ,バルクのNiO,シリカ担体,ならびに通常の調製法による担持NiO触媒では触媒活性が見られなかった。このときの担持NiO触媒のNiOは平均粒径20 nm程度であった。一方,担持NiO-NCでは触媒活性を示し,かつその粒径が小さいものの方が高活性であるという顕著なサイズ依存性を見出した。最も粒径の小さい触媒を用いた場合,転換頻度は1分間に6.7回であった。アルコキシド還元法を応用し,Ni-NCの微細化に成功するとともに,シリカ担体上への担持ならびにニッケル酸化物ナノクラスターへの転換を達成した。XAFSによるNiO-NCのサイズ評価を行い,触媒活性との対応を明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の研究は,ニッケルナノクラスターの調製と担体への固定化への着手,透過型電子顕微鏡(TEM)およびX線吸収スペクトル(XAFS)解析によるキャラクタリゼーション,ならびにチオフェノール触媒反応への応用が当初の目的であった。この中で,ニッケルナノクラスターの調製については,既に達成されていた3 nmの粒径から2.2 nmへとサイズを減少させることに成功し,また担体上への担持についても実施できた。また,キャラクタリゼーションについては,TEMを用いることでその形状観察ならびに平均粒径を求めることができ,XAFSによりニッケル化学種の同定ならびにサイズ規定が可能になった。特に,TEM測定からは求めることが難しかったニッケル酸化物ナノクラスターについては,XAFSによるサイズ評価を可能とした。担体上に担持したニッケル酸化物ナノクラスターを触媒とすることで,チオフェノールの酸化的カップリング反応を行い,ナノクラスター触媒の優位性を見出した。一方で,ニッケルナノクラスターのサイズ微細化については,ある程度の目標が達成できたと判断できるが,まだ微細化の余地があると考えられるため,引き続き研究の遂行が必要である。また,担持されたナノクラスターのサイズについては規定することができたが,その形状とあわせシャープな粒径分布を得ることが次のステップにつながるものと考える。全体として,ほぼ順調に進展していると評価して良い。
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Strategy for Future Research Activity |
本申請課題の最終の目的はナノ組織化された原子構造による反応場の創成であり,そのためには,ナノクラスターのさらなる微細化と安定保持による触媒反応への応用が求められる。中心金属をニッケルとしたナノクラスターについては,サイズの微細化と粒径分布の先鋭化ならびに担体上への固定化をはかる。また,ニッケル以外の鉄,コバルトの金属ナノクラスター設計にとりくむ。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
物品費が当初予定よりやや増えたが,人件費・謝金を使用せずに研究遂行が可能であったため,直接経費の内46,055円の次年度使用額が生じた。これを物品費分として含め,当初予定通りの使用計画とする。
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