2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23560928
|
Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
一國 伸之 千葉大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (40261937)
|
Keywords | ニッケルナノクラスター / 触媒調製化学 / XAFS / 透過型電子顕微鏡 / 水性ガスシフト反応 |
Research Abstract |
本研究は,アルコレートを還元・保護剤として,ニッケルナノクラスター(Ni-NC)を調製し,Ni-NCの精密なサイズ制御に関する知見を得るものである。実施2年目となる本年は,アルミナ担体上へのNi-NCの構築を試みた。またNi-NCのサイズ制御のために,還元・保護剤となるアルコレート調製時の2級アルコールの種類を含めた調製条件の検討を行った。 NaHと2級アルコールを組合わせ,ニッケルアセテートを還元しNi-NCを調製した。この際に,2級アルコールとして,C3(2-プロパノール)からC10(2-デカノール)まで変化させた。C12(2-ドデカノール)を用いた場合はNiの還元が進まず,NCは得られなかった。このようにして調製したNi-NCをアルミナ担体に担持した。前年度の成果から,Ni-NCを室温で空気に触れさせてもNiOへと酸化されることがわかっているので,アルミナ担持後のNi-NC試料は余分な保護基等を洗浄後,水素13.3 kPaの圧力下,673 Kで還元処理を施した。 再還元後の担持Ni-NC触媒は,透過型電子顕微鏡(TEM)像から粒径を,X線吸収スペクトル(XAFS)から化学状態と粒径に関する情報を得た。その結果,平均粒径は2.4 nm(C8アルコール)から2.8 nm(C3アルコール,C10アルコール)となり,2級アルコールのアルキル鎖長による粒径制御に成功した。Ni-NCの粒径はアルキル鎖長に対しV字型の関係を示し,サイズ制御に対し,還元性能と保護機能の相反する要因の複合効果が現れることを見出した。 これらの担持Ni-NC触媒は水性ガスシフト反応に活性を示したが,Ni-NCの粒径に対し火山型の対応関係を示すことを見出した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の研究は,酸化物担体上へのナノクラスターの創成が当初の目的であった。 アルミナ担体上へのニッケルナノクラスター(Ni-NC)を創成するとともに,そのサイズについても制御を可能とした。当初は,メソ細孔担体を利用したナノクラスターの構造規定を計画していたが,メソ細孔担体を使わずに構造規定が行えるようになったことは,担体の細孔特性を問わずに固定することが可能であることを意味しており,その応用展開についても大いに進展がはかれるものと考えられる。 ニッケル以外に,鉄,コバルトなどの金属についてもナノクラスター設計を意図していたが,コバルトのナノクラスター設計に着手し,担体上への固定とあわせて進んでおり,ある程度の目標にが達成できたと判断できる。 一方で,担体上でのNi-NCのサイズ制御に成功してはいるが,one step clusterizationによる担体上へのNi-NCの構築を行うことで,新たな微細構造の創出などが期待され,次のステップにつながるものと考えられる。 これらをあわせ,全体として,ほぼ順調に進展していると評価して良い。
|
Strategy for Future Research Activity |
本申請課題の最終目的は,ナノ組織化された原子構造による反応場の創成であり,このためには,担体上でのナノクラスターのさらなる微細化ならびにそのサイズ制御を行い,多くの触媒反応へと適用する必要がある。特に,サイズ制御における粒径分布の先鋭化が求められると考えられる。また,ナノ構造を活かした特異な触媒反応の発現を探索することも要求され,気相触媒反応のみならず,液相系触媒反応への応用も展開する必要がある。 さらには,ニッケル以外にも,本年度に着手したコバルトについてもナノクラスターのサイズ制御ならびに触媒作用とのサイズの関連性について明らかにし,第3周期遷移金属ナノクラスターによる特異性を解明する。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
旅費が当初予定よりやや増えたが,物品費が当初予定より使用せずにすんだこと,ならびに人件費・謝金を使用せずに研究遂行が可能であったため,直接経費の内345,979円の次年度使用額が生じた。これを物品費および旅費へと活用し,全体としては当初予定通りの使用計画とする。
|