2011 Fiscal Year Research-status Report
炭素アロイ電極による酸素還元反応機構の解明と電極性能の改良を目指した研究
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23560934
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Research Institution | Kyoto Institute of Technology |
Principal Investigator |
小林 久芳 京都工芸繊維大学, 工芸科学研究科, 教授 (40128690)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山邊 時雄 長崎総合科学大学, 付置研究所, 教授 (80025965)
湯村 尚史 京都工芸繊維大学, 工芸科学研究科, 助教 (80452374)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 含窒素炭素電極 / 酸素還元反応 / 密度汎関数法計算 |
Research Abstract |
含窒素炭素材料が燃料電池酸素極として機能するという実験報告を受けて、酸素還元反応(ORR)に有効な表面構造の同定と、反応中のエネルギー変化の詳細を、量子化学計算を用いてシミュレーションした。カーボンアロイのモデルとして、小さな芳香族縮合環化合物を用いた計算からORRの活性点の条件として次の2点が得られた。(1)酸素吸着にはスピン密度が重要な役割を果たす。無置換のグラフェンは酸素吸着に不活性である。置換N原子により奇電子系となり、酸素分子はスピン密度の大きいサイトに強く吸着する。スピン密度は、N原子上に局在せず、また分子全体に広がることもなく、系のSingly Occupied Molecular Orbitalの分布に対応した領域に非局在化する。また、接近して2個のN原子が存在する系があまり活性にならない理由は、スピンがカップルして不対電子が無くなることで説明される。(2)モデル周辺部のC-H結合を有する炭素原子では、反応種の接近により炭素原子上の軌道混成をsp2+pからsp3へと変化させることにより、反応種とより強い結合を形成できるため有利なサイトになりうる。このことは、曲率を有するN置換したコアニュレン分子をモデルとした系において、周辺部以外の炭素原子上でも、酸素分子が比較的強く吸着することからも支持される。 含窒素炭素電極が、真に金属イオンフリーで機能しているのか、それとも微量の金属イオンが活性点になっているのかは、依然として解決されていない問題である。このために、ポルフィリン構造を含むモデルや金属原子を吸着させたモデルを用いてORRの違いを調べたが、現在までには金属原子が有効に機能するという結果は得られなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
すでに行った小さな分子モデルから周期境界条件を課したより大きなモデルへ移行するために、新規のハードウェア(計算機)およびソフトウェアを導入する必要があったが、それらの選択に時間がかかった。
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Strategy for Future Research Activity |
周期境界条件を課したモデルを用いて、より精密な計算を行う。その一方で、グラフェン等の炭素材料は、貴金属電極触媒の単体として広く用いられている。最近、欠陥構造を有するグラフェンが金属粒子の凝集を防ぐために有効であることが報告されたが、その詳細なメカニズムは明らかとなっていない。金属原子を含む場合の研究の発展系として、凝集防止機構についても調べる。 分担者において繰越額が生じた理由は、研究打ち合わせを学会会期中に行ったためである。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度は、今年度に購入したソフトウェアのフロントエンドPCの更新を予定している他は、ソフトウェアのバージョンアップ費用、旅費などである。 また、繰越額が生じた分担者においては、旅費を消耗品に変更するなどして、執行を行う予定である。
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Research Products
(7 results)