2012 Fiscal Year Research-status Report
炭素アロイ電極による酸素還元反応機構の解明と電極性能の改良を目指した研究
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23560934
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Research Institution | Kyoto Institute of Technology |
Principal Investigator |
小林 久芳 京都工芸繊維大学, 工芸科学研究科, 教授 (40128690)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山邊 時雄 長崎総合科学大学, 付置研究所, 教授 (80025965)
湯村 尚史 京都工芸繊維大学, 工芸科学研究科, 助教 (80452374)
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Keywords | 燃料電池 / 密度汎関数法 / 炭素電極 / グラフェン / 酸素還元反応 |
Research Abstract |
2011年度は炭素アロイ電極のモデルとして、小さな芳香族縮合多環化合物の炭素原子を窒素原子で置換したモデルを採用した。このモデルでは、定性的な描像は得られたが、より精密な知見を得るために、再度、窒素置換のない種々のサイズのグラフェン分子(最大C96H24)について、そのスピン状態を含めて電子構造をDFT計算で調べた。比較的大きなグラフェンでは、3重項基底状態が得られた。これは、 グラフェン分子のHOMO-LUMOギャップが小さいことに起因する。この3重項状態ではエッジ部分にスピン密度が局在化するため、吸着する酸素分子との相互作用に有利にはたらく。一方、グラフェンサイズが減少すると3重項状態は不安定となり、酸素分子との相互作用も弱くなることが見出された。この場合、窒素置換が酸素分子との相互作用に重要な役割を演じることが分かった。これは、窒素原子の余分な電子がグラフェン部分に分配され、スピン密度が生じるためである。このように、グラフェンと酸素分子が相互作用するにはグラフェン上のスピンが不可欠であることが分かったが、このスピン密度が存在する条件としてグラフェンのサイズに依存した窒素置換が重要であることが分かった。 実用化のためには、グラフェンにPt等の貴金属を担持した電極が検討されている。その場合にPt微粒子がグラフェン上を移動して、凝集してしまうことが問題となっている。グラフェンの六角形のネットワーク上に、1~3原子の炭素欠陥を有するモデルを作成し、Ptクラスターとの相互作用を計算すると、Pt-C間の結合が強まることが示された。これは、欠陥部分に存在する不飽和な炭素原子が存在するためである。この方法は、グラフェンでのPt微粒子の凝集を防ぐために応用可能である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
小さな窒素置換した芳香族縮合多環化合物モデルによる酸素還元素反応の電極電位の解析については2011年度以降の進展はない。2012年度は、非置換グラフェンに立ち返って、その電子構造のサイズ依存性を調べた。また、金属を全く含まない炭素アロイ電極では、実用化は難しいとの見解も学会内で根強いので、貴金属非粒子をグラフェン上で固定化する方向での研究を行った。多少の軌道修正は行ったが、進捗はある。
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Strategy for Future Research Activity |
種々のPt代替電極が既に提案されている。炭素アロイ電極もその1つと考えられる。一方、燃料電池も水素を燃料とする固体高分子型から直接メタノール型へと研究が移行しつつある。直接メタノール型では、燃料極で反応するメタノールが酸素極まで拡散し、酸素極での酸素還元反応と交錯してしまう問題がある。最近、シアン化物イオンをPt電極に吸着させた化学修飾電極が、この問題解決に有効であることが報告された。そこで、この化学修飾電極について、シミュレーションを行う予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究成果の学会発表と報告書作成の費用に充てる予定である。
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Research Products
(4 results)