2011 Fiscal Year Research-status Report
局所高密度還元反応場を利用した金属ナノ触媒の創製に関する研究
Project/Area Number |
23560936
|
Research Institution | Japan Atomic Energy Agency |
Principal Investigator |
箱田 照幸 独立行政法人日本原子力研究開発機構, 量子ビーム応用研究部門, 研究主幹 (70354933)
|
Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
|
Keywords | 触媒・化学プロセス / ナノ材料 / 放射線・X線・粒子線 / 放射線還元 |
Research Abstract |
本研究では、水溶液中の貴金属粒子の作製方法の一つである放射線還元法において、微細化、或いは複成分化した貴金属粒子の生成効率を促進するとともに、酸化種である溶存酸素の除去、触媒基材でのエネルギーロスなどの従来課題を解決することを目指して、100 keV以下の電子線照射により形成される局所高密度還元場を利用した貴金属ナノ粒子の生成・固定化を実施し、その構造解析や触媒活性の評価から、低エネルギー電子線照射による貴金属ナノ粒子触媒の作製条件を明らかにすること目的とする。 平成23年度では、数十keVの電子加速器の改造、照射容器の作製等を行い、不活性ガス流通下で液体試料等に電子線照射できるシステムを構築した。また、基材に担持した貴金属粒子の触媒性能を、一酸化炭素の酸化反応を指標として定量する評価装置等を構築した。上記システムを用いて、貴金属イオン(塩化白金酸、塩化金酸、塩化パラジウムの各イオン)とOHラジカル捕捉材のエタノールを含む試料水溶液に55 keVの電子線を2-6 kGyの線量で照射した結果、水溶液中の溶存酸素を除去しなくても平均粒径が2-5 nmの貴金属粒子が一次粒子として生成し、線量の増加に伴い一部の粒子は凝集して数十-数百nmに粗大化することが分かった。また、白金の場合において、粉体基材への一次粒子の固定化に成功するとともに、この粒子が水素解離触媒作用を有することを見出した。 次に、貴金属イオンとアルコールがある特定の濃度条件において、平均粒径が5-20 nmの貴金属粒子が互いに房状に接合して形成した金属状の貴金属ナノ粒子膜が、水溶液表面に浮遊して生成することを発見した。内部に試料水溶液が浸透せずに貴金属粒子をその表面に固定しにくい板状基材でも、本膜の付着により貴金属ナノ粒子担持板状基材を作製できることを見出し、この貴金属粒子膜及び作製法を特許として出願した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画で貴金属として実施予定であった銅の代わりに、触媒としての幅広く利用されているパラジウムを対象とした照射実験を実施した。 また、比表面積の小さな板状基材では、当初計画した塗布した状態だけでは、その基材表面上に貴金属粒子を固定できないことが分かり、水溶液表面に浮遊した貴金属ナノ粒子膜の生成、及びその付着により貴金属ナノ粒子担持板状基材を作製できることを見出し、それに代わる固定方法を開発した。
|
Strategy for Future Research Activity |
板状基板上に固定した貴金属ナノ粒子について、平成23年度に構築した触媒性能評価装置等を用いて、一酸化炭素の酸化反応等を指標とした触媒活性の定量を実施する。触媒活性が得られない場合には、アニール等の処理を行い、触媒活性を定量する。 また、白金、金の金属塩を主とし、これにパラジウムや銀など金属塩、さらにアルコールを含む水溶液に低エネルギー電子線を照射し、その表面に複成分貴金属粒子の生成、及びそれをTiO2やアルミナ多孔質セラミックや炭素材料に固定化した複成分貴金属ナノ粒子担持板状基材を作製する。また、この金属ナノ粒子について、ラザフォード後方散乱法によりセラミックスや炭素材料上の金属存在量を、電子顕微鏡により粒子径を、またX線光電子分光法により結晶状態を分析する。 さらに、得られた研究成果は、放射線化学討論会等などで発表するとともに、成果の一部を学術雑誌などに投稿する。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成23年度に繰り越しした研究費については、一部未実施であった、X線光電子分光法による板状基材上の貴金属ナノ粒子の結晶状態の観察の依頼分析費に充てる。 また、これ以外の平成24年度研究費は、金属塩、多孔質セラミック板、触媒反応評価ガス・試薬、高純度アルゴン、窒素ガス、構造解析装置消耗品の購入のほか、研究打合せや研究の成果発表のための出張費等、さらに研究論文のための英文校閲費等に充てる。
|
Research Products
(2 results)