2012 Fiscal Year Research-status Report
局所高密度還元反応場を利用した金属ナノ触媒の創製に関する研究
Project/Area Number |
23560936
|
Research Institution | Japan Atomic Energy Agency |
Principal Investigator |
箱田 照幸 独立行政法人日本原子力研究開発機構, 量子ビーム応用研究部門, 研究主幹 (70354933)
|
Keywords | 触媒・化学プロセス / ナノ材料 / 放射線・X線・粒子線 / 放射線還元 |
Research Abstract |
本研究では、水溶液中の貴金属粒子の作製方法の一つである放射線還元法において、微細化、或いは複成分化した貴金属粒子の生成効率を促進するとともに、酸化種である溶存酸素の除去、触媒基材でのエネルギーロスなどの従来課題を解決することを目指して、100 keV以下の電子線照射により形成される局所高密度還元場を利用した貴金属ナノ粒子の生成・固定化を試み、その構造解析や触媒活性の評価から、低エネルギー電子線照射による貴金属ナノ粒子触媒の作製条件を明らかにする。 平成23年度に電子線照射により水溶液表面に生成することを発見した貴金属ナノ粒子膜について、平成24年度にさらに研究を進め、塩化白金酸イオンを含む試料水溶液への照射実験を行うとともに、水溶液成分の定量、生成した膜の電子顕微鏡及びX線光電子分光分析等を実施し、その形態や化学状態等を調べた。その結果、生成膜は、2~5 nmの金属状のPt粒子が互いに接合して連なり、網目を形成することにより平面構造を有したものであることを特定した。また、水溶液中の共存エタノールのOHラジカル捕捉作用と生成ナノ粒子の保護作用がこの膜の生成に寄与し、生成に最適な濃度が0.5v%であることを見出し、学会等で発表した。さらに、触媒基板上への貴金属粒子を生成して分散・固定する技術の開発を目指して、本年度は、平成23年度に見出した基板の問題点を検証し、その解決候補としてアルミナ多孔質基板を基板に用い、試料水溶液を吸収・保持させた後に電子線照射を行った。その結果、電子線照射部分の基板上の表層が黒色化し、昨年度構築した触媒能評価装置を用いた分析から、この基板上の黒色部分が触媒性能を有することを見出し、低エネルギー電子線照射による基板への触媒粒子の生成、分散固定技術の開発の可能性を拓いた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画にはなく、本研究遂行で発見した水溶液表面に浮遊した貴金属ナノ粒子膜について、連携研究者の協力を得つつ様々な側面から研究を進め、計画通りにその形態、化学状態、及び生成過程を明らかにした。また、電子線照射により貴金属粒子を直接生成させ触媒基板上に分散・固定する技術の開発については、触媒基材の問題点を考慮し、アルミナ多孔質基材に替えることにより解決するとともに、触媒能評価実験から触媒能を有することを見出し、当初の計画研究の遂行を実現した。これらの研究に優先的に取り組んだため、当初の計画研究である、白金、金の金属塩を主とし、これにパラジウムや銀など金属塩、さらにアルコールを含む水溶液に低エネルギー電子線を照射し、その表面に複成分貴金属粒子の生成、及びそれを触媒基材に固定化する試みについては一部遅延した状態である。
|
Strategy for Future Research Activity |
電子線照射により水溶液表面に生成した貴金属ナノ粒子膜について、最終年度に触媒性能評価装置等を用いて触媒活性の定量・評価する。また、電子線照射によるアルミナ多孔質基板を基板への触媒粒子の生成について、その形態、化学状態を明らかにする。さらに、白金、金の金属塩を主とし、これにパラジウムや銀など金属塩、さらにアルコールを含む水溶液に低エネルギー電子線を照射し、その表面に複成分貴金属粒子の生成技術の研究開発を実施する。得られた研究成果は、静電気学会、放射線化学討論会、国際学会等で発表するとともに、成果の一部を学術雑誌などに投稿する。また得られた知見を総合的に解析・総括することにより、低エネルギー電子線が形成する局所高密度還元反応場で生成する金属ナノ粒子触媒の開発に必要な指針を得る。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度に繰り越しした研究費については、一部未実施であった、X線光電子分光法による板状基材上の貴金属ナノ粒子の結晶状態の観察の依頼分析費に充てる。また、これ以外の平成25年度研究費は、昨年度同様に、金属塩、多孔質セラミック板、触媒反応評価ガス・試薬、高純度アルゴン、窒素ガス、構造解析装置消耗品の購入のほか、研究打合せや研究の成果発表のための出張費等、さらに研究論文のための英文校閲費等に充てる。
|
Research Products
(7 results)