2012 Fiscal Year Research-status Report
超好熱菌の新規色素依存性デヒドロゲナーゼの探索と機能性電極素子への利用
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23560946
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Research Institution | Kagawa University |
Principal Investigator |
櫻庭 春彦 香川大学, 農学部, 教授 (90205823)
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Keywords | 脱水素酵素 |
Research Abstract |
(1)Dye-DHホモログの検索を行った結果、好熱菌Rhodothermus marinasゲノムより色素依存性D-アミノ酸脱水素酵素(DADH)を見出した。本酵素を大腸菌で生産させ、性質を解析したところ、D-フェニルアラニンを最も良好な基質とするDADHであることが明らかとなった。既知のDADHは、D-アラニンまたはD-プロリンを最も良好な基質とするため、本酵素は新規DADHであることが判明した。 (2)新規L-プロリンデヒドロゲナーゼ(LPDH)の構造解析に成功した。本酵素の基質結合部位にはL-プロリンが結合していた。またC-末端アミノ酸のLeuは、基質結合ポケットを溶媒から完全に遮断していた。L-プロリンは、その基質結合ポケットに強固にトラップされていた。C-末端Leuの役割を検証するため、その欠損ミュータントの構造解析を行った。ミュータントの活性中心にはL-プロリンは認められなかった。また、基質結合ポケットは溶媒に対して解放されていた。すなわち本酵素では、L-プロリンの活性中心への保持にC-末端のLeuが重要な役割を担っているという新たな知見を得た(Sakuraba, H., et al. (2012). J. Biol. Chem. 287, 20070-20080.)。 (3)構造解析に成功したマルチ銅オキシダーゼ(McoP)をカーボン電極表面に滴下し、McoPを物理吸着させた電極を作成した。この電極を用いて、酸素飽和下で酸素の還元波の検出に成功した。また、McoPとpolyethyleneimine と交互に積層した電極を作成したところ、作成7日間で約70%の電流密度を維持することができた。このことから、McoPは電極に固定化しても高い安定性を維持できる、バイオ電池のカソード用素子として有用性の高い酵素であることが判明した(2013年3月:農芸化学会大会発表)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度の研究として(1)好熱菌の新規Dye-DHホモログ遺伝子のクローニング、発現系の構築および産物の機能解析、(2)新規Dye-DHのX線結晶構造解析、(3)酵素固定化電極の作成の3つを計画した。 (1)については、D-フェニルアラニンを最も良好な基質とする新規色素依存性D-アミノ酸脱水素酵素の取得に成功した。興味深いことに、ゲノム上で本酵素遺伝子は、今までに報告されているD-アミノ酸脱水素酵素遺伝子を含むオペロン構造とは大きく異なる新規クラスターを形成しており、未知のD-アミノ酸代謝経路の存在が示唆される。現在、本酵素の機能解析を進めている。新規Dye-DHを取得できたことから、おおむね順調に進展していると言える。(2)については新規ホモダイマー型LPDHおよびそのミュータントの構造解析に成功した。C-末端Leu欠損ミュータントの構造を解くことにより、本酵素に特徴的な基質認識メカニズムを明らかにできた。これらの成果は国際的に評価の高いJ. Biol. Chem.誌に掲載された。本研究については当初の計画以上に進展しているといえる。(3)については、昨年度構造解析に成功したMcoPの固定化電極を作成し、電極応答を確認した。電極に固定化しても高い安定性を維持することが明らかとなり、バイオ電池の酸素還元カソードとして有用であることが判明した。本研究も順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)好熱菌の新規Dye-DHホモログ遺伝子のクローニング、発現系の構築および産物の機能解析:今回新たに見出したR. marinas由来色素依存性D-フェニルアラニン脱水素酵素について結晶化に供するための大量発現系を構築する。得られた産物の詳細な機能解析を行う。 (2)新規Dye-DHのX線結晶構造解析:昨年度結晶の得られた新規D-乳酸デヒドロゲナーゼ(DLDH)についてはSe誘導体の結晶作成に成功したが、結晶化に用いたカコジル酸に含まれるヒ素の影響で、Seの異常分散データを十分な精度で収集できず、位相決定に至っていない。水銀等の重原子誘導体を作成し位相決定を目指す。これまで本酵素の構造解析例は大腸菌由来の酵素しか無く、超好熱菌由来の酵素の特徴の解明が期待できる。また、上述の新規D-フェニルアラニン脱水素酵素についても構造解析を行う。 (3)酵素固定化電極の作成:引き続き、取得した酵素を固定化した機能性電極を作成し、基質の添加に伴う電流応答を検出する。オスミウム錯体、キノン類、フェロセン類など多様なメディエーターとの電子授受反応を検討し、各酵素における最適条件を見出していく。構造解析により得られた情報に基づき、酵素のタンパク質工学的改良を展開する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
消耗品の消費が少なく、想定金額を下回ったため次年度繰越金が生じた。交付予定が1200,000円であるため、遺伝子組換え用試薬、酵素活性測定用試薬、リフォールディング用試薬、タンパク質結晶化用試薬、酵素固定化用試薬として1000,000円 + 繰越金額、出張旅費100,000円、その他100,000円を予定している。
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Research Products
(15 results)