2011 Fiscal Year Research-status Report
幹細胞胚様体内外における物質移動現象・相互作用と細胞分化特性に関する研究
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23560949
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Research Institution | The University of Kitakyushu |
Principal Investigator |
中澤 浩二 北九州市立大学, 国際環境工学部, 准教授 (00304733)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | ES細胞 / 胚様体 / 相互作用 / 細胞分化 / パターニング |
Research Abstract |
ES胚様体を効率的に形成できるマイクロウェルチップを用いて、チップおよび培養条件がマウスES細胞の細胞特性に与える効果を評価した。まず、ウェル径600μm、ウェル数195個のマイクロウェルチップを用いて、細胞数が100、1000、10000個の初期サイズの異なる胚様体を形成させることによって、「初期胚様体サイズの違いが細胞特性に与える効果」を評価した。その結果、初期サイズの小さい胚様体ほど、細胞の増殖性は活発であり、かつ中胚葉系および内胚葉系への分化も促進された。また、初期細胞数100個の胚様体は中胚葉系への分化、細胞数1000および10000個の胚様体は内胚様系への分化が活発であった。また、「マイクロウェル径が細胞特性に与える効果」を評価するために、ウェル数が一定(195個)でウェル径を400、600、800、1000μmに変化させたマイクロウェルチップを設計・作製し、マウスES胚様体を形成・培養した。その結果、チップのウェル径が大きいほど、培養経過に伴う胚様体サイズの増大は大きく(すなわち、細胞増殖性は高く)、かつウェル径に依存して中胚葉系および内胚葉系への細胞分化速度も異なることを示した。これらの結果より、胚様体初期サイズの設定は、細胞の増殖性および細胞分化の方向性とその分化速度に影響を与える重要な因子であり、培養経過に伴う細胞の増殖性や分化速度は培養系内の胚様体間距離によってある程度制御できる可能性が示された。さらに、上述の「胚様体サイズとES細胞分化特性」に関する評価に加え、マイクロウェルチップで形成させた浮遊状態のES胚様体を平面チップ上に転写し、接着状態へと精密パターニング培養できる胚様体転写技術を確立した。この技術は今後の胚様体特性評価に利用する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
培養条件およびマイクロウェルチップ条件を変化させることにより、「初期胚様体サイズが異なる場合」および「培養経過に伴って胚様体サイズが異なる場合」のES胚様体と細胞分化特性の関係を見出すことができた。これらの実施項目は当初の計画通りであり、本研究目的の第1段階をクリアした。
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Strategy for Future Research Activity |
胚様体サイズによってES細胞の増殖性や分化特性が異なることが明らかとなったことから、胚様体内部の細胞密度、細胞生存率、細胞間相互作用などを測定・解析し、細胞分化特性との関連性を探るとともにそのメカニズムの解明を目指す。また、隣接する胚様体間の距離を厳密に設定することができるマイクロパターンチップを用い、チップ上の胚様体数(細胞接着スポット数)や隣接する胚様体間の距離(スポット間ピッチ)を変化させ、隣接する胚様体間相互作用と分化特性の関係に関する検討を実施する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成23年度は、チップ作製工程や表面処理操作の改良と効率化により、当初予定していた材料・試薬の消費が少なくてすみ、研究費の支出が抑えられた。平成24年度は、胚様体サイズと細胞分化特性に関するメカニズム解析に加え、隣接する胚様体間相互作用と細胞分化特性の研究に取り組む予定であり、大きく分けて二つの内容を実施する。特にメカニズム解析に伴う細胞内相互作用や培養環境因子の測定などは頻繁に実施する予定であり、これらの測定には高額な消耗費がかかることから、平成24年度配分研究費と合わせて繰越金も使用する。
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Research Products
(8 results)