2011 Fiscal Year Research-status Report
シアノバクテリア光化学系IIを最小化した水分解反応系の構築と解析
Project/Area Number |
23560952
|
Research Institution | Sojo University |
Principal Investigator |
松岡 正佳 崇城大学, 生物生命学部, 教授 (10121667)
|
Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
|
Keywords | 光化学系II / シアノバクテリア / 酸素発生 / 遺伝子置換 / 耐熱化 |
Research Abstract |
今年度はまず光化学系II(PSII)のD1およびD2タンパク質の遺伝子置換を中温性シアノバクテリアSynechococcus elongatus PCC 7942株において実施した。これら一連の操作はrps12媒介遺伝子置換法に従って行った。遺伝子置換に先立ち、宿主株である内部アンテナタンパク質CP47のC末端にHistagを付加した菌株GRPS810の再確認を行った。その結果、以前に作成した菌株からカナマイシン耐性コロニーが出現し、この菌株はホモジェノートでないことが判明した。そこでGRPS810の再構築を行い、カナマイシン感受性となったCP47-histag株の取得に成功した。 GRPS810株の可溶化チラコイド膜より、NiキレートアフィニティクロマトグラフィーでPSIIを精製した。得られたPSII標品は尿素-SDSポリアクリルアミドゲル電気泳動でD1、D2タンパク質、その他のPSIIサブユニットを含んでいることが確認された。 次に好熱性シアノバクテリアThermosynechococcus vulcanus由来のpsbA1およびpsbD1遺伝子のORFを組込むためのプラスミドの作成を行った。これらのプラスミドは1次選択マーカーとしてカナマイシン耐性遺伝子を含む。遺伝子操作の能率を上げるため、psbD1遺伝子の組込みではクロラムフェニコル耐性遺伝子をマーカーとしたプラスミドも作成した。2種類の抗生物質で同時形質転換を試みたが、2重耐性株の頻度は極めて低く、取得は困難であった。そこで現在、好熱性psbA1vΔC遺伝子の中温性シアノバクテリアへの組み込みによるD1耐熱化と好熱性psbD1v遺伝子の中温性シアノバクテリアへの組み込みによるD2耐熱化を並行して行っている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
この研究において前半のシアノバクテリアの遺伝子組換え株の作成と確認は最も重要で、後半のタンパク質を使った研究の基礎となる部分である。シアノバクテリアは1細胞当たり複数のゲノムDNAを持っているので、全染色体の組成が均一になったホモジェノートを得ることが重要である。この点において、CP47-histagのホモジェノートが取得できたことは、今後のPSII精製にとって大きな前進となる。当初の予定では遺伝子組換えを1年間で終えることを想定していたが、現在まだD1/D2遺伝子の置換株を取得中である。計画よりは少し遅れているが、遺伝子組換えを確実に達成していく予定である。また、複数の抗生物質耐性マーカーの利用は一見便利なようであるが、形質転換体の取得に時間がかかり、逆に遺伝子組換え株の取得が困難になるなどの問題点があることが分かった。そこで1遺伝子ごとの組換え-置換を段階ごとに確認しながら組換え株を順次作成していく予定である。
|
Strategy for Future Research Activity |
D1/D2タンパク質耐熱化のための遺伝子置換を続行する。中温性宿主S. elongatusではpsbAIとpsbDI遺伝子が通常の生育条件では最も発現量が高いので、これら2つを耐熱性D1/D2のORFで置換した株を構築・確認する。その際、D1タンパク質のC末端側の16アミノ酸はプロセシングで除去されるため、耐熱性D1のプロセシングが中温性宿主内で起こらない可能性も考えられる。そこでC末端側16アミノ酸を除去した耐熱性D1ΔCを発現する組換え体を作成する。最後に重複したpsbAII, psbAIII, psbDIIの全遺伝子を欠失させた株を構築する。 完成したD1/D2耐熱化株からCP47-Histagの付加されたPSII複合体を精製する。酸素発生比速度およびD1/D2タンパク質のウェスタン分析により耐熱性D1/D2タンパク質がPSIIに組み込まれていることを実証する。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究費の使用状況は少額の残金を繰り越し、予定通り使用していく。ただし、当初の計画で購入予定であった酸素分析計(蛍光色素型)については、代用となる膜型酸素分析計が既にあるので、購入計画を見直し、研究が滞りなく進行するような使用内訳とする。
|
Research Products
(1 results)