2011 Fiscal Year Research-status Report
MorphingFlapによる低騒音高揚力装置の研究
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23560956
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
谷 泰寛 九州大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (80380575)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
麻生 茂 九州大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (40150495)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 航空宇宙流体力学 / 高揚力装置 |
Research Abstract |
本研究は、航空機の離着陸時の騒音低減に着目して、騒音低減と低抵抗特性を併せ持つ高揚力装置として、Flap-Edge-Noiseの低減を可能にする柔軟かつ連続的な形状変化を行うモーフィング技術を応用したMorphing Flapの騒音特性を明らかにするものである。初年度としてまず、基準翼として、内舷部後縁にスロッテッド・フラップを有する矩形翼を設定し、これを基にフラップ部の舵角及びスロット間隔を連続関数的に与えた基本Morphing Flapの形状を創成した。 創成した、高揚力装置の無い基準翼形態、シングル・スロッテッド・フラップ形態、Morphing flap形態をパーツ交換で実験可能な翼幅1150mmの半裁翼模型を製作し、九州大学航空宇宙工学部門の2m低騒音風洞において風洞実験を行った。計測は6分力天秤による空気力計測及び騒音音源探査である。音源探査には32本のマイクをスパイラル形状に配置したマイクロホンアレイを製作し、ビームフォーミング法によって解析することで、高い音源探査の解像度を実現した。計測結果より、Morphing Flapではフラップ端部で騒音発生が抑制され、翼全体として騒音低減に有効であることを確認した。また、風速、迎角、舵角と発生する周波数や音源位置との関係に関する基礎データを取得した。 また、Morphing Flap部の可動機構を組み込んだ翼の部分模型の製作を行って検証した結果、機構的な実現性はあるものの、フラップ駆動部と気流との干渉や翼表面の滑らかな変形について解決すべき課題を明らかにした。 さらに、数値的研究として、フラップ部に発生する渦現象を解明するために必要な計算格子と解析法の予備解析を行った。Morphing Flapのスパン方向に変化するスロット部の格子品質が解析精度に関するノウハウを取得し、解析に必要な計算環境の導入を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
基準となるMorphing Flap形状を創成し、風洞実験においてMorphing Flapの騒音低減効果について、音源探査手法により明らかにすることができた。Morphing変形の基本的な可動機構を構築し、実機での成立性に向けた検討を進めることができた。ここで、風洞試験模型や変形機構模型の製作にあたっては、既存の資材や装置、風洞標準計測機器等を活用することで経費の節減を得ることができた。 また、数値解析においては、スパン方向に連続的に変化するスロット部の計算格子生成が解析精度に影響を及ぼすことが明らかとなったが、非構造格子を適用した解析を行う方針とすることで、解決の目処を得られた。 個々の研究要素について進展の前後はあるものの、総合的に見て、当初の計画に対して現在まで研究はおおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度に得られたMorphing Flap形状と騒音・揚抗特性との相関関係から、より優れた低騒音性能と低抵抗性能を目指したMorphing Flapの形状を設定し、系統的な比較を行うために形状を関数形として表した第2次形状として創成する。 新たに創成した形状のMorphing Flapについて、単純かつ軽量化を目指した機構を開発し、その部分模型を製作する。実機を考慮した可動機構を模擬することで、連続的な変形に対応できる柔軟な材料を含め、実機への適用性を検討し、従来の高揚力装置との比較を行う。 また、前年度に作成した風洞実験模型を改修し、Morphing Flapの第2次形状の風洞実験模型を製作し、騒音及び空力特性の計測風洞実験を行う。騒音の音源探査計測にあたっては、低周波数域の計測精度の向上を目指してマイクロホン配置を見直したアレイを製作し、前年度製作のアレイを組み合わせて、より詳細な騒音発生メカニズムを明らかにする。また、翼後流部において、5孔ピトー管をトラバース装置で移動させることで気流の全圧・流速分布を計測し、フラップ端部の騒音と渦の関係を明らかにする。 数値的研究では、スロット部での格子品質を向上した計算格子を生成してCFD解析を行うことで、Morphing Flapまわりの流れ場を明らかにし、形状の違いや気流条件の違いによる騒音低減のメカニズムについて流れ場からの考察を行う。 また、国内外での学会発表を行うとともにWebページによる公表を行い、研究成果を社会に発信する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
Morphing Flapの第2次形状の風洞実験模型を製作する。製作にあたっては、H23年度の風洞実験模型をベースとし、主にフラップ部とその取付・変形部に改修を加えることにより、様々な形状の実験を可能なものとする。また、H23年度の音源探査計測を行ったマイクロホンアレイでは、低い周波数の音源探査に限界があった。そのため、幅広い周波数の音源探査を行うために、マイク配置を見直した、直径の大きなマイクロホンアレイを製作する。変形機構の成立性検証のために、機構の単純化、軽量化を目指した変形機構を考案し、それを実証するための部分模型を製作する。製作にあたっては、サーボモータやリンク機構を組み合わせて、PCから形状を制御可能な可動模型とする。 これらの風洞実験及び変形機構模型材料として、アルミ素材、木材、プラスチック素材、モータ等の電子部品、また、マイクロホンアレイ用としてアルミフレーム等の模型材料等を購入する。 風洞実験では、フラップ端部の流れ場を計測するための5孔ピトー管、圧力センサを導入する。これを風洞設置の試験装置である3次元トラバース装置と組み合わせることにより、翼後流の全圧、速度ベクトルを求め、フラップ端部の渦の発生と騒音の相関を明らかにするものである。 また、大学院生による風洞実験や解析作業の補助に対して謝金を計画している。さらに、研究成果を国内及び国際学会で発表する計画であり、そのための旅費と参加登録料を計画している。
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